イスラエルとイラン 軍事ぐんじ衝突しょうとつから1週間しゅうかん 鎮静ちんせい化かの見通みとおし立たたず

イスラエル軍ぐんは19日にち、イランが核兵器かくへいきを手てに入いれることを防ふせぐためだとしてイラン西部せいぶのホンダブにある稼働かどうしていない原子げんし炉ろを含ふくむ、数すう十じゅうの軍事ぐんじ目標もくひょうやイラン中部ちゅうぶのナタンズにある核かく施設しせつを攻撃こうげきしたと発表はっぴょうしました。

イラン側がわも断続だんぞく的てきに報復ほうふく攻撃こうげきを繰り返くりかえしていて、イスラエルメディアは南部なんぶの病院びょういんなどが被害ひがいを受うけ19日にちだけで140人にん以上いじょうがけがをしたなどと伝つたえています。

被害ひがいを受うけた病院びょういんを訪おとずれたイスラエルのネタニヤフ首相しゅしょうは「われわれは核かく施設しせつやミサイルを正確せいかくに攻撃こうげきしているのに、イランは病院びょういんを攻撃こうげきしている」などと主張しゅちょうし、イランに対にたいする攻勢こうせいを強つよめる姿勢しせいを鮮明せんめいにしました。

これに対にたいし、イランの国連こくれん代表だいひょう部ぶはSNSで病院びょういんを標的ひょうてきにしていないと反論はんろんしています。

攻撃こうげきの犠牲ぎせい者しゃは増ふえ続つづけていて、イスラエル政府せいふは19日にち午前ごぜんまでに24人にんが死亡しぼうし、838人にんがけがをしたと発表はっぴょうしたのに対にたいし、イランの保健ほけん当局とうきょくは今月こんげつ16日にちまでに224人にんが死亡しぼうしたとし、国営こくえい通信つうしんは少すくなくとも1800人にんがけがをしたと伝つたえています。

ただ、双方そうほうは攻撃こうげきを続つづける姿勢しせいを鮮明せんめいにしていて、事態じたいが鎮静ちんせい化かする見通みとおしは立たっていません。

トランプ大統領だいとうりょう “2週間しゅうかん以内いないに決断けつだん”

イスラエルとイランによる攻撃こうげきの応酬おうしゅうが続つづく中なか、アメリカのトランプ大統領だいとうりょうはこれまでイランへの対応たいおうについて聞きかれ「やるかもしれないし、やらないかもしれない」と述のべるなど、軍事ぐんじ介入かいにゅうの選択肢せんたくしを排除はいじょしない姿勢しせいを示しめしています。

ホワイトハウスのレビット報道ほうどう官かんは、19日にちの会見かいけんで「アメリカがイランに軍事ぐんじ介入かいにゅうするかどうか臆測おくそくが飛び交とびかっていることは承知しょうちしている」と述のべた上うえで、トランプ大統領だいとうりょうの声明せいめいを読み上よみあげました。

声明せいめいでは「近ちかくイランとの交渉こうしょうが行おこなわれる可能かのう性せいがあることを踏ふまえて、2週間しゅうかん以内いないに行動こうどうするかどうか決断けつだんする」としています。

レビット報道ほうどう官かんは記者きしゃからの質問しつもんに対にたいし、トランプ政権せいけんとイラン政府せいふの間までやりとりが続つづいていることを認みとめた上うえで「トランプ大統領だいとうりょうは外交がいこうによる解決かいけつのチャンスを常つねにつかみに行いくが、同時どうじに力ちからを行使こうしすることもおそれない」と強調きょうちょうしました。

一方いっぽうで、イランとのやりとりの方法ほうほうなど詳細しょうさいについては回答かいとうを控ひかえるとしています。

ホワイトハウスは、トランプ大統領だいとうりょうが週末しゅうまつにかけて連日れんじつ、NSC＝国家こっか安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎの会合かいごうを開ひらくとしていて、イラン側がわとのやりとりと並行へいこうして軍事ぐんじ介入かいにゅうを含ふくめ今後こんごの対応たいおうを慎重しんちょうに検討けんとうするものとみられます。

専門せんもん家か “イランがホルムズ海峡かいきょう封鎖ふうさする可能かのう性せい”

アメリカ軍ぐんの戦闘せんとう機きの元もとパイロットで国務省こくむしょうの副ふく次官補じかんほも務つとめたスティーブ・ガニャード氏しが19日にち、NHKの取材しゅざいにオンラインで応おうじました。

ガニャード氏しは、アメリカ軍ぐんがイラン中部ちゅうぶフォルドゥの地下ちかにあるウラン濃縮のうしゅく施設しせつへの攻撃こうげきを決きめた場合ばあい、GBU－57と呼よばれる大型おおがたのバンカーバスターが使つかわれるだろうとしたうえで「地図ちずから推測すいそくされる地下ちかの広大こうだいな施設しせつを考かんがえるとすべてを破壊はかいするにはおそらく2発はつ、4発はつ、6発はつ、あるいはそれ以上いじょうの爆弾ばくだんが必要ひつようになるかもしれない」と述のべました。

また、その大型おおがたのバンカーバスターを運はこぶことができるアメリカ軍ぐんのB2ステルス戦略せんりゃく爆撃ばくげき機きの運用うんようについて、インド洋いんどようのディエゴガルシア島とうのアメリカ軍ぐん基地きちから向むかう場合ばあいは、島しまがイギリス領りょうのため、攻撃こうげきの際さいはイギリスの了解りょうかいが必要ひつようになる可能かのう性せいがあるとして、アメリカ中ちゅう西部せいぶのミズーリ州しゅうの空軍くうぐん基地きちから直接ちょくせつイランに向むかうのが「最善さいぜんだ」と指摘してきしました。

そして「複数ふくすうのB2爆撃ばくげき機きが必要ひつようとされ、1日にちではなく一連いちれんの攻撃こうげきになるだろう」という見方みかたを示しめしました。

一方いっぽう、外交がいこう交渉こうしょうについては、「トランプ大統領だいとうりょうが『無む条件じょうけん降伏ごうぶく』を求もとめたことで交渉こうしょうのハードルが大幅おおはばに引き上ひきあげられた」として、交渉こうしょうによる解決かいけつの余地よちは少すくないと分析ぶんせきしています。

また、アメリカが軍事ぐんじ介入かいにゅうした場合ばあいに考かんがえられるイラン側がわからの反撃はんげきについては「サウジアラビアやカタールなどにあるアメリカ軍ぐんの基地きちはほとんどが飛行場ひこうじょうで、大おおきく、ねらうのが簡単かんたんな標的ひょうてきだ。

さらにイランは、自国じこくの経済けいざいに打撃だげきとなることも覚悟かくごのうえで、原油げんゆの海上かいじょう輸送ゆそうの要衝ようしょうであるホルムズ海峡かいきょうの封鎖ふうさに踏み切ふみきる可能かのう性せいがあるという見方みかたを示しめしました。

具体ぐたい的てきには、イランには海峡かいきょうに機雷きらいを設置せっちする能力のうりょくがあり、イランの革命かくめい防衛ぼうえい隊たいが運用うんようする小型こがたの高速艇こうそくていは、アメリカ軍ぐんの艦船かんせんにとっても対処たいしょが難むずかしいとしたうえで「海峡かいきょうの封鎖ふうさは保険ほけん会社かいしゃが海峡かいきょうを通過つうかする船舶せんぱくの保険ほけんを引き受ひきうけないよう不安ふあんにさせればそれで十分じゅうぶんだ」としています。

そして、アメリカがすでに中東ちゅうとうからの石油せきゆに依存いぞんしていないことに留意りゅういすべきだとして、ホルムズ海峡かいきょうが封鎖ふうさされてもトランプ大統領だいとうりょうが「これは私わたしの問題もんだいではないヨーロッパやアジアが対処たいしょすべき問題もんだいだ」という対応たいおうをとる事態じたいも日本にっぽんは想定そうていすべきだと警鐘けいしょうを鳴ならしました。

攻撃こうげき受うけたイラン国営こくえい放送ほうそう局きょく 内部ないぶをメディアに公開こうかい

イランの首都しゅとテヘランでは16日にち夜よる、生なま放送ほうそう中ちゅうに国営こくえい放送ほうそう局きょくがイスラエル軍ぐんの攻撃こうげきを受うけ、職員しょくいん1人にんが死亡しぼうしました。

被害ひがいを受うけた国営こくえい放送ほうそう局きょくの建物たてものの内部ないぶが19日にち、メディアに公開こうかいされ、このうちAFP通信つうしんが撮影さつえいした映像えいぞうからは、焼やけ焦こげたテレビや撮影さつえい機材きざいとみられるものが散乱さんらんしている様子ようすが確認かくにんできます。

また、建物たてものの窓まどの大だい部分ぶぶんが割われているほか、柱はしらやはりなどがむき出むきだしになった様子ようすが写うつっていて、攻撃こうげきの激はげしさがうかがえます。

イスラエル 観光かんこうや留学りゅうがくなどにも影響えいきょう

双方そうほうの攻撃こうげきの応酬おうしゅうが続つづく中なか、イスラエルでは全土ぜんどに非常ひじょう事態じたい宣言せんげんが出だされたままとなっています。

ふだんは多おおくの観光かんこう客きゃくなどでにぎわうエルサレム市内しないの繁華はんか街がいに観光かんこう客きゃくの姿すがたはほとんど見みられません。

エルサレムにある旧きゅう市街しがいへの入り口いりくちの1つ「ダマスカス門もん」ではイスラエルの治安ちあん部隊ぶたいがバリケードを設置せっちして往来おうらいを制限せいげんしていて、観光かんこう客きゃくなどはイスラム教いすらむきょうの聖地せいちにある名所めいしょの「アルアクサ・モスク」や、「岩いわのドーム」へ行いくことができなくなっています。

空港くうこうの閉鎖へいさが続つづく中なか、外国がいこく人じんの間までは、陸路りくろでの出国しゅっこくを急いそいだり、帰国きこくを早はやめたりする動うごきが出でています。

イスラエル北部ほくぶで遺跡いせきなどの研究けんきゅうを行おこなっていたというアメリカ人じん男性だんせいは「イランとの戦闘せんとうが激化げきかしたことで、航空こうくう機きでの出国しゅっこくができなくなってしまった。

また、エルサレムに留学りゅうがく中ちゅうだという別べつのアメリカ人じん男性だんせいは、「来月らいげつ末まつまで留学りゅうがくの予定よていだったが、情勢じょうせいを受うけて留学りゅうがく期間きかんが短みじかくなってしまった。