日本新聞: コメ本格的な値下がりにつながるかスーパーなど現場で変化も

政府せいふが備蓄びちく米まいの売り渡うりわたしの方法ほうほうを随意ずいい契約けいやくに切り替きりかえる方針ほうしんを示しめしてから1か月かげつが過すぎました。すべての都道とどう府県ふけんで店頭てんとうでの販売はんばいが始はじまっていますが、コメの高値たかねは続つづいていて、今後こんご本格ほんかく的てきな値下ねさがりにつながるかが焦点しょうてんとなっています。

こうした中なか、農林水産省のうりんすいさんしょうは毎週まいしゅう月曜日げつようびに平均へいきん価格かかくを公表こうひょうしていて、今月こんげつ15日にちまでの1週間しゅうかん分ぶんはこのあと公表こうひょうされる見込みこみです。

【広島ひろしま】卸売おろしうり業者ぎょうしゃ 24時間じかん体制たいせいで精米せいまい作業さぎょう

広島ひろしま市しに本社ほんしゃを置おくコメの卸売おろしうり業者ぎょうしゃ「食しょく協きょう」は、全国ぜんこくの小売こうり業者ぎょうしゃから依頼いらいを受うけ、8月下げっか旬しゅんまでにあわせて6000トン以上いじょうの備蓄びちく米まいを精米せいまいする計画けいかくです。

備蓄びちく米まい以外いがいのコメも合あわせると1日にちに精米せいまいする量りょうは200トンを超こえ、通常つうじょうの1。

5倍ばいから2倍ばい程度ていどだということで、1950年ねんの創業そうぎょう以来いらい初はじめてとなる24時間じかん体制たいせいで精米せいまい作業さぎょうにあたっています。

23日にちも、県内けんないのスーパーなどで販売はんばいされる予定よていの令りょう和わ3年産ねんさんの玄米げんまいを精米せいまいし、袋ふくろに「備蓄びちく米まい」とかかれたシールを貼はりつけていました。

コメ卸売おろしうり業者ぎょうしゃ「食しょく協きょう」武信たけのぶ和也かずや社長しゃちょう

「1日にちも早はやく消費しょうひ者しゃに届とどけるように全力ぜんりょくで頑張がんばりたい」

一方いっぽう、この会社かいしゃではコメを調達ちょうたつする際さい、卸売おろしうり業者ぎょうしゃどうしがコメを融通ゆうずうし合あう「スポット取引とりひき」を活用かつようしてきましたが、その価格かかくの低下ていかを実感じっかんしているといいます。

5月つき下旬げじゅんには玄米げんまい60キロあたり4万まん8000円えん台だいだった、栃木とちぎ県けん産さんや島根しまね県けん産さんのコシヒカリの価格かかくが、今月こんげつ16日にちの時点じてんでは3万まん4000円えん台だいと、1万まん4000円えんほど安やすくなったということです。

コメ卸売おろしうり業者ぎょうしゃ「食しょく協きょう」武信たけのぶ和也かずや社長しゃちょう

「全国ぜんこくの産地さんちの銘柄めいがらで価格かかくが下さがっている。

7月つきになると、3万まん円えん前後ぜんごまで下さがるのではないか」と話はなしていました。

【埼玉さいたま】銘柄めいがら米まいの仕入しいれ減へらすスーパーも

埼玉さいたま県けん久喜くき市しにあるスーパーでは随意ずいい契約けいやくによる備蓄びちく米まいの販売はんばいを今月こんげつ28日にちから始はじめる計画けいかくで、店内てんないにポスターを提示ていじするなど販売はんばいに向むけた準備じゅんびを進すすめています。

一方いっぽうで、現在げんざい取り扱とりあつかっている銘柄めいがら米まいは、ほとんどが5キロ税込ぜいこみで5000円えんを超こえて価格かかくの高こう止どまりが続つづき、今月こんげつに入はいってから売れ行うれゆきが落おちているということです。

消費しょうひ者しゃの間まで価格かかくが安やすい備蓄びちく米まいの販売はんばいを待まち、銘柄めいがら米まいの購入こうにゅうを控ひかえる動うごきが出でているのではと見みています。

このため、今月こんげつから銘柄めいがら米まいの1回かいあたりの仕入しいれの量りょうを減へらし、在庫ざいこを抑おさえる対応たいおうを始はじめたということです。

「スーパーマルサン久喜くき店てん」伊い良原よしはら正裕まさひろ店長てんちょう

「今いまの時点じてんでは銘柄めいがら米まいの仕入しいれ価格かかくが下さがったという実感じっかんはありません。

消費しょうひ者しゃは安やすい備蓄びちく米まいが出でるまで少すこし我慢がまんしようとしてそれが買い控かいびかえにつながっているのでは」

コメ作づくりの現場げんばでは暑あつさへの懸念けねん

【愛媛えひめ】高温こうおんがコメの生育せいいくに影響えいきょうを懸念けねん

厳きびしい暑あつさが続つづいていることを受うけて、愛媛えひめ県けん宇和島うわじま市しの農家のうかからはコメの生育せいいくに影響えいきょうが出でることを懸念けねんする声こえが上あがっています。

愛媛えひめ県けん宇和島うわじま市し三間みま町まちは県内けんない有数ゆうすうのコメの産地さんちで、毎年まいとし、8月つき上旬じょうじゅんごろから収穫しゅうかくが始はじまります。

およそ10ヘクタールの田たんぼでコメづくりをしている松本まつもと高だか秋あきさんによりますと、4月つきに植うえたコシヒカリの稲いねは高たかさ80センチほどになっていていまのところ順調じゅんちょうに生育せいいくしているということです。

来月らいげつ中旬ちゅうじゅんごろには稲いねから穂ほが出でてくる見込みこみですが、この時期じきに気温きおんが高たかい状況じょうきょうが続つづくと、米べい粒つぶが白しろく濁にごって味あじや見た目みためが悪わるくなり「1等とう米まい」として出荷しゅっかできなくなるおそれがあるということです。

松本まつもと高だか秋あきさん

「気温きおんが高たかすぎると不作ふさくになることがあるので、穂ほがついたあとの気温きおんが心配しんぱいです。

定期ていき的てきに雨あめが降ふって気温きおんが上あがらず猛暑もうしょになりすぎないのがいいですね」

【愛媛えひめ】“暑あつさに強つよい” 品種ひんしゅに切り替きりかえも

JA松山まつやま市しの管内かんないでは、主おもな品種ひんしゅの1つ「あきたこまち」がここ数すう年ねん、夏なつの暑あつさの影響えいきょうで、コメの等級とうきゅうの中なかで最もっとも評価ひょうかが高たかい「1等とう米まい」として出荷しゅっかできる割合わりあいが1％程度ていどに落ち込おちこむなど、品質ひんしつや収穫しゅうかく量りょうが下さがっていることが課題かだいとなっています。

このため、管内かんないの44の農家のうかではことしから国くにの研究けんきゅう機関きかんが開発かいはつした暑あつさに強つよいとされる品種ひんしゅ、「にじのきらめき」に切り替きりかえることを決きめています。

23日にちは、このうち28アールの田たんぼで田植たうえが行おこなわれました。

JA松山まつやま市しではことし、管内かんないにあるあわせて20ヘクタールで試験しけん的てきに「にじのきらめき」を栽培さいばいし、来年らいねんからは「あきたこまち」をすべて切り替きりかえることで、品質ひんしつや収穫しゅうかく量りょうを向上こうじょうさせたいとしています。

JA松山まつやま市し岡田おかだ明夫あきお専務せんむ

「毎年まいとし、厳きびしい暑あつさが続つづいていることで農家のうかの所得しょとくにも影響えいきょうが出でている。

切り替きりかえる品種ひんしゅは品質ひんしつも安定あんていして収穫しゅうかく量りょうも多おおいのが特徴とくちょうなので、JAとしても技術ぎじゅつ指導しどうなども含ふくめてサポートしたい」

専門せんもん家か「この時期じき気温きおんが３さん０ぜろ度ど超ちょう今後こんごの生育せいいくに悪影響あくえいきょうも」

水田すいでん農業のうぎょうに詳くわしい九州きゅうしゅう大学だいがく大学院だいがくいん・農学のうがく研究けんきゅう院いんの渡部わたなべ岳たけし陽ひ准じゅん教授きょうじゅは「今いまのところ生育せいいく状況じょうきょうは順調じゅんちょうと見みているが、この時期じきで気温きおんが30度どを超こえているので今後こんごの生育せいいくに悪あく影響えいきょうを及およぼす可能かのう性せいがある」としています。

渡部わたなべ准じゅん教授きょうじゅは、おととしは記録きろく的てきな猛暑もうしょの影響えいきょうで、最もっとも評価ひょうかが高たかい「1等とう米まい」の比率ひりつが大幅おおはばに低下ていかしたことを挙あげ、「猛暑もうしょが続つづくことで1等とう米まいの比率ひりつの低下ていかや、玄米げんまいで量りょうが確保かくほできても精米せいまいした際さいに量りょうが減へってしまう事態じたいが起おきかねない。

ことしのコメは豊作ほうさくになる予測よそくがあったとしても、精米せいまいのあとにどれだけの量りょうのコメになるのかが大事だいじだ。温暖おんだん化かによって質しつが悪わるく、量りょうも確保かくほできないとなれば、コメ不足ふそくを繰り返くりかえす事態じたいになる可能かのう性せいもある」と話はなしています。

そのうえで「高齢こうれい化かによってリタイアしていく農家のうかがどんどん増ふえているので、放棄ほうきされる農地のうちを受うけきれない地域ちいきもかなり多おおいと思おもう。