일본어 뉴스: 噴出した蒸気から高濃度のヒ素健康被害は？今後の対策は？

北海道ほっかいどう蘭越らんこし町まちの地熱ちねつ発電はつでんの調査ちょうさ現場げんばで蒸気じょうきが噴出ふんしゅつしている問題もんだい。

現場げんばで採取さいしゅした水みずから非常ひじょうに高たかい濃度のうどのヒ素ひそが検出けんしゅつされ、町内ちょうないではこれまでに3人にんが体調たいちょう不良ふりょうを訴うったえています。

なぜ、噴出ふんしゅつした蒸気じょうきからヒ素ひそが検出けんしゅつされたのか？

さらなる健康けんこう被害ひがいが心配しんぱいされる中なか、どのような対策たいさくが今後こんご必要ひつようになるのか？

専門せんもん家かの見立みたてときょうまでの動うごきを詳くわしくお伝おつたえします。

「環境かんきょう汚染おせんに直結ちょっけつする深刻しんこくな事態じたい」町まちが会社かいしゃに抗議こうぎ

蘭越らんこし町まち湯里ゆさとの山中さんちゅうにある地熱ちねつ発電はつでんに向むけた資源しげん量りょう調査ちょうさの掘削くっさく現場げんばでは、先月せんげつ29日にち以降いこう、蒸気じょうきが数すう十じゅうメートルの高たかさまで噴出ふんしゅつしていて、6日にちになって、現場げんばで採取さいしゅした水みずから国くにが定さだめる飲料いんりょう水すいの基準きじゅんの1590倍ばいにあたる非常ひじょうに高たかい濃度のうどのヒ素ひそが検出けんしゅつされたことがわかりました。

町内ちょうないではこれまでに、硫化りゅうか水素すいそ中毒ちゅうどくと診断しんだんされた女性じょせいを含ふくむあわせて3人にんが体調たいちょう不良ふりょうを訴うったえています。

掘削くっさく工事こうじを行おこなっていた「三井みつい石油せきゆ開発かいはつ」によりますと、発生はっせいから9日にち目めの7日にちも噴出ふんしゅつは止とまっておらず、会社かいしゃは高こう濃度のうどのヒ素ひそが検出けんしゅつされた水みずのほとんどを近ちかくにある沼ぬまの方向ほうこうへ放出ほうしゅつしているということです。

7日にち、蘭越らんこし町まち役場やくばに説明せつめいに訪おとずれた会社かいしゃの担当たんとう者しゃに対にたいし、金きむ秀行ひでゆき町長ちょうちょうは「現場げんばで発生はっせいした水みずの適切てきせつな処理しょりを再三さいさん、要請ようせいしてきたが、敷地しきち外がいへの放出ほうしゅつは地域ちいきで生活せいかつする住民じゅうみんの健康けんこうを害がいし、環境かんきょう汚染おせんに直結ちょっけつする深刻しんこくな事態じたいだ」と強つよく抗議こうぎしました。

そのうえで、町まち側がわは水みずの処理しょり対策たいさくについて道みちと協議きょうぎすることや、対策たいさくを講こうじるまで沼ぬまのほうへの放出ほうしゅつを速すみやかに停止ていしするよう要望ようぼうしました。

会社かいしゃ側がわは、具体ぐたい的てきな対応たいおうを検討けんとうするとともに、引き続ひきつづき周辺しゅうへんの住民じゅうみんに注意ちゅういを呼よびかけています。

町長ちょうちょう「会社かいしゃの対応たいおう改善かいぜんされないまま解決かいけつに向むけきちんと対応たいおうを」

蘭越らんこし町まちの金きむ秀行ひでゆき町長ちょうちょうは、NHKの取材しゅざいに対にたいし「ヒ素ひそが含ふくまれている水みずについて当初とうしょから安全あんぜんが十分じゅうぶん確認かくにんされるまで外そとに流ながすべきではないと強つよく訴うったえてきたが、会社かいしゃの対応たいおうは改善かいぜんされないままで安全あんぜん対策たいさくになっていない」と指摘してきしました。

そのうえで「町民ちょうみんの安全あんぜんな暮くらしに障害しょうがいが生しょうじており、不安ふあんを一ひとつ一ひとつ解消かいしょうして信用しんようを得えるとともに、問題もんだいの解決かいけつに向むけてきちんと対応たいおうしてほしい」と述のべました。

掘削くっさく工事こうじ会社かいしゃ取締役とりしまりやく「会社かいしゃとして一ひとつ一ひとつ誠実せいじつに対応たいおう」

蘭越らんこし町まちから抗議こうぎ文ぶんを受け取うけとった「三井みつい石油せきゆ開発かいはつ」の春日かすが毅あつし取締役とりしまりやくは、NHKの取材しゅざいに対にたいし「現場げんばでは水みずの漏出ろうしゅつがおさまっていないので、その対応たいおうをしっかり行おこなうことが、われわれの喫緊きっきんの課題かだいだ。緊急きんきゅうの案件あんけんを順序じゅんじょ立たてて整理せいりし、会社かいしゃとして一ひとつ一ひとつ誠実せいじつに対応たいおうしていきたい」と述のべました。

蘭越らんこし町議会ちょうぎかい議員ぎいん噴出ふんしゅつ現場げんばや農家のうかなどを視察しさつ

7日にち午後ごご、北海道ほっかいどう蘭越らんこし町まちの町議会ちょうぎかい議員ぎいん10人にんが噴出ふんしゅつ現場げんばや取水しゅすい制限せいげんを受うけている農家のうかの状況じょうきょうなどを視察しさつしました。

はじめに、議員ぎいんたちは噴出ふんしゅつ現場げんば付近ふきんの立ち入たちいりが制限せいげんされているエリアを訪おとずれ、高こう濃度のうどのヒ素ひそが検出けんしゅつされた現場げんばを視察しさつしたほか、近ちかくの川かわでは水みずが濁にごっていないかなどを確認かくにんしていました。

また農業のうぎょう用水ようすいの取水しゅすいを控ひかえるよう呼よびかけられている地域ちいきでは、コメ農家のうかから、取水しゅすい制限せいげんの状況じょうきょうや栽培さいばいへの影響えいきょうなどを聞き取ききとりました。

聞き取ききとりに応おうじたコメ農家のうかの林はやし賢治けんじさんは「いつになったら事態じたいが収束しゅうそくするのか不安ふあんだ。早はやく落おちつくためにも、議員ぎいんのみなさんには対策たいさくを考かんがえてもらえるようお願おねがいしたい」と話はなしていました。

町議会ちょうぎかいの熊谷くまがい雅幸まさゆき議長ぎちょうは「まずはヒ素ひその数値すうちが下さがるように水質すいしつ調査ちょうさをしっかりやるよう求もとめていきたい。町民ちょうみんには議会ぎかいからも状況じょうきょうを丁寧ていねいに知しらせていく」と話はなしていました。

蒸気じょうき噴出ふんしゅつからの経緯けいいは

蒸気じょうきの噴出ふんしゅつは、先月せんげつ29日にち午前ごぜん11時半じはんごろ蘭越らんこし町まち湯里ゆさとの掘削くっさく現場げんばで発生はっせいしました。

掘削くっさくを行おこなっていた「三井みつい石油せきゆ開発かいはつ」によりますと、地熱ちねつ発電はつでんに向むけた資源しげん量りょう調査ちょうさのため、地下ちかおよそ200メートルまで掘ほり進すすめたところ、突然とつぜん、蒸気じょうきが噴出ふんしゅつし、地上ちじょう、数すう十じゅうメートルの高たかさまで立たちのぼったということです。

現場げんばでは、すぐに水みずを注入ちゅうにゅうして蒸気じょうきを止とめる作業さぎょうを行おこないましたが、発生はっせいから8日にちが経過けいかしたいまも噴出ふんしゅつは続つづいています。

現場げんばの敷地しきち内ないでは、当初とうしょから硫化りゅうか水素すいその成分せいぶんが検出けんしゅつされており、近ちかくの川かわで行おこなった水質すいしつ調査ちょうさでは農業のうぎょう用水ようすいの基準きじゅん値ちを上回うわまわるヒ素ひそが検出けんしゅつされました。

周辺しゅうへんでは川かわの水みずが白しろく濁にごる現象げんしょうが確認かくにんされ、町まちは一部いちぶの農家のうかに対にたいし、取水しゅすいを控ひかえるよう呼よびかけています。

こうした事態じたいを受うけて、会社かいしゃは4日にち夜よる、住民じゅうみんを対象たいしょうとした説明せつめい会かいを開ひらきましたが、住民じゅうみんからは農業のうぎょうなどへの影響えいきょうを懸念けねんする声こえが相次あいつぎました。

当初とうしょ、会社かいしゃ側がわは体調たいちょう不良ふりょうなどを訴うったえている人ひとはいないとしてきましたが、あとになって発生はっせい時じに現場げんばにいた女性じょせいが硫化りゅうか水素すいそ中毒ちゅうどくと診断しんだんされていたことを明あきらかにしたうえで「住民じゅうみんの不安ふあんをあおることを避さけるため公表こうひょうを控ひかえていた」と説明せつめいしました。

町まちによりますと7日にちまでに、この女性じょせいを含ふくむ3人にんが体調たいちょう不良ふりょうを訴うったえているということです。

また、6日にちは現場げんばの敷地しきち内ないで採取さいしゅした水みずから国くにが定さだめる飲料いんりょう水すいの基準きじゅんの1590倍ばいにあたる非常ひじょうに高たかい濃度のうどのヒ素ひそが検出けんしゅつされたこともわかりました。

会社かいしゃによりますとヒ素ひそが検出けんしゅつされた水みずのほとんどは現場げんば近ちかくの土どの中なかに流れ出ながれでている状況じょうきょうだということです。

蒸気じょうき噴出ふんしゅつのきっかけ地熱ちねつ発電はつでんの調査ちょうさとは

地熱ちねつ発電はつでんの事業じぎょう化かを目的もくてきとする調査ちょうさは、数すう年ねんかけて行おこなわれるのが一般いっぱん的てきです。

文献ぶんけんや現場げんばで採取さいしゅされた水みずから、対象たいしょう地域ちいきの地質ちしつなどを確認かくにんする事前じぜんの調査ちょうさを経へて、熱源ねつげんとなる高温こうおん・高圧こうあつの地下ちか水すいがたまる「地熱ちねつ貯留ちょりゅう層そう」に向むけ、ドリルなどを使つかった掘削くっさくが行おこなわれます。

掘削くっさくの深ふかさは地下ちか2キロから3キロに及およぶことが多おおく、地下ちか水すいを地表ちひょうに噴出ふんしゅつさせ、蒸気じょうきの量りょうなどを確認かくにんする試験しけんが行おこなわれることもあります。

土壌どじょうの中なかに存在そんざいする熱源ねつげん以外いがいの地下ちか水すいの量りょうや「ヒ素ひそ」などの濃度のうどは、事前じぜんの調査ちょうさで確認かくにんできるほか、掘ほっている途中とちゅうでも地質ちしつや水質すいしつを分析ぶんせきすることができるということです。

掘削くっさくを行おこなっていた「三井みつい石油せきゆ開発かいはつ」によりますと、今回こんかいは地下ちか3キロまで掘ほり進すすめる予定よていでしたが、地下ちか200メートルまで掘ほったところで意図いとせず蒸気じょうきが噴出ふんしゅつしたということで、詳くわしい状況じょうきょうを調しらべています。

ヒ素ひそはどんな物質ぶっしつ？人間にんげんの体内たいないに入はいるとどうなる？

ヒ素ひそは、地殻ちかく内ないの岩石がんせきなどに含ふくまれ、火山かざん活動かつどうなどの自然しぜん現象げんしょうで環境かんきょう中ちゅうに放出ほうしゅつされて土壌どじょうや水中すいちゅうに広ひろく存在そんざいしています。また、火力かりょく発電はつでんや金属きんぞくの精錬せいれんなど産業さんぎょう活動かつどうに伴ともなって放出ほうしゅつされるものもあります。

国立こくりつ環境かんきょう研究所けんきゅうじょや農林水産省のうりんすいさんしょうなどのホームページによりますと、ヒ素ひそは有機ゆうきヒ素ひそと無機むきヒ素ひそがあります。

このうち無機むきヒ素ひそは、

▽短みじかい期間きかんに大量たいりょうに体からだの中なかに入はいった場合ばあい、発熱はつねつや下痢げりなどの症状しょうじょうがあらわれるほか、

▽長期ちょうき間かんにわたって継続けいぞく的てきかつ大量たいりょうに体からだの中なかに入はいった場合ばあいは、皮膚ひふの病気びょうきやがんの発生はっせいなどに影響えいきょうがあると報告ほうこくされています。

有機ゆうきヒ素ひそが体からだの中なかに入はいったときの影響えいきょうは、よく分わかっていません。

木材もくざい防腐ぼうふ剤ざいや殺虫さっちゅう剤ざい、半導体はんどうたい製造せいぞうなどに使用しようされているほか、さまざまな食品しょくひんや飲料いんりょう水すいには微量びりょうのヒ素ひそが含ふくまれています。

飲料いんりょう水すいについては、厚生こうせい労働ろうどう省しょうが1リットル当あたり0.01ミリグラム以下いかとする基準きじゅんを定さだめています。

ヒ素ひそによる健康けんこう被害ひがいとしては、インドやバングラデシュなど海外かいがいでは、自然しぜん由来ゆらいのヒ素ひそや産業さんぎょう活動かつどうで排出はいしゅつされたヒ素ひそが地下ちか水すいや川かわの水みずを汚染おせんし、飲料いんりょう水すいとして利用りようした住民じゅうみんに健康けんこう被害ひがいが発生はっせいしたケースが報告ほうこくされています。

また、日本にっぽんでは1955年ねんに、ヒ素ひそが入はいった粉ミルクこなみるくを飲のんだおよそ130人にんの乳児にゅうじが死亡しぼうし、重おもい後遺症こういしょうが残のこるなど西日本にしにほんを中心ちゅうしんに1万まん3000人にん余あまりの被害ひがい者しゃが出でた事件じけんや、2003年ねんに茨城いばらき県けんで旧きゅう日本にっぽん軍ぐんの毒ガスどくがす兵器へいきの原料げんりょうとみられるヒ素ひそに汚染おせんされた井戸水いどみずを住民じゅうみんが飲のみ、健康けんこう被害ひがいが生しょうじたケースなどがあります。

高こう濃度のうどヒ素ひそ含ふくむ蒸気じょうき噴出ふんしゅつ専門せんもん家かはどう見みる？

地質ちしつ由来ゆらいの汚染おせん物質ぶっしつに詳くわしい京都きょうと市しの総合そうごう地球ちきゅう環境かんきょう学がく研究所けんきゅうじょの榊原さかきばら正幸まさゆき教授きょうじゅは「日本にっぽん列島れっとうでは自然しぜん由来ゆらいのヒ素ひそが比較的ひかくてき多おおく、それは火山かざんが多おおいことに関連かんれんしている。北海道ほっかいどうも火山かざん活動かつどうが活発かっぱつな地域ちいきで知しられているが、蒸気じょうきが噴出ふんしゅつしたのも火山かざん活動かつどうに伴ともなって地熱ちねつの高たかい地域ちいきで、温あたためられた地下ちか水すいに地中ちちゅうのヒ素ひそが溶け込とけこんで水蒸気すいじょうきが発生はっせいしたと考かんがえられる」と話はなしています。

そして、ヒ素ひその毒性どくせいに詳くわしい大阪おおさか公立大こうりつだい学がく医学部いがくぶの鰐渕わにぶち英機ひでき教授きょうじゅは「水みずに直接ちょくせつ触ふれる状況じょうきょうであれば非常ひじょうにリスクは高たかい。また噴出ふんしゅつ物ぶつを直接ちょくせつ浴あびたり、高こう濃度のうどのヒ素ひそが地下ちか水すいに流れ込ながれこんだものを飲のむと、健康けんこう被害ひがいのリスクがあるが、現場げんばから離はなれた場所ばしょでは、大気たいき中ちゅうのヒ素ひそは大幅おおはばに薄うすまるため、リスクは低ひくいと思おもわれる。農業のうぎょう用水ようすいについても、濃度のうどが基準きじゅん値ちをわずかに上回うわまわる程度ていどであれば、農作物のうさくもつの汚染おせんの懸念けねんは、ほぼないと考かんがえてよい」と話はなしています。

また、ヒ素ひそが含ふくまれた水みずが外そとに流れ出ながれでないよう隔離かくりすることや、蒸気じょうきが噴き出ふきだしている現場げんばに近ちかづけないようにする対策たいさくをとるべきだとしたうえで「住民じゅうみんは不安ふあんを感かんじており長期ちょうき的てきな暴露ばくろや流出りゅうしゅつを防ふせぐため、まずは噴出ふんしゅつを止とめることを最さい優先ゆうせんに行おこない、1か月かげつをめどに周辺しゅうへんの水質すいしつを基準きじゅん値ち以下いかに下さげることが重要じゅうようだ」と指摘してきしています。