日本新聞: 去年の台風19号多摩川沿いの浸水 “旧河道”を含んだ地域も

去年きょねんの台風たいふう19号ごうでは、多摩川たまがわ沿ぞいの東京とうきょうや神奈川かながわの住宅じゅうたく地ちで雨水あまみずを排水はいすいしきれなかったり、支流しりゅうがあふれたりするなどして浸水しんすい被害ひがいが相次あいつぎましたが、専門せんもん家かが調しらべた結果けっか、広ひろい範囲はんいで浸水しんすいした地域ちいきのほとんどに、かつて川かわが流ながれていたことを示しめす「旧きゅう河かわ道どう」と呼よばれる地形ちけいが含ふくまれていたことがわかりました。

わずかな高低こうてい差さによって水みずが集あつまりやすいということで、専門せんもん家かは、いち早いちはやい避難ひなんに役立やくだてるため、土地とちの成り立なりたちにも注目ちゅうもくしてほしいと指摘してきしています。

浸水しんすい被害ひがいが確認かくにんされた15地域ちいき中ちゅう 13地域ちいきに「旧きゅう河かわ道どう」

去年きょねんの台風たいふう19号ごうで多摩たま川がわでは堤防ていぼうは決壊けっかいしませんでしたが、雨水あまみずを排水はいすいしきれなかったり、支流しりゅうがあふれたりするなどして、浸水しんすい被害ひがいが相次あいつぎました。

地理ちり学がくなどが専門せんもんで帝京ていきょう平成へいせい大学だいがくの小森こもり次郎じろう准じゅん教授きょうじゅは、多摩たま川がわの下流かりゅう沿ぞいで広ひろい範囲はんいに浸水しんすい被害ひがいが確認かくにんされた川崎かわさき市しや東京とうきょう世田谷せたがや区くなど15の地域ちいきで、被害ひがいの状況じょうきょうや土地とちの成り立なりたちとの関係かんけいについて調しらべました。

その結果けっか、13の地域ちいきにかつて川かわが流ながれていたことを示しめす「旧きゅう河かわ道どう」と呼よばれる地形ちけいが含ふくまれていたということです。

小森こもり准じゅん教授きょうじゅによりますと、「旧きゅう河かわ道どう」は周囲しゅういより低ひくくなっていることが多おおいため、水みずが集あつまりやすく、いち早いちはやく浸水しんすいするリスクが高たかいということです。

このうち川崎かわさき市し中原なかはら区くの住宅じゅうたく地ちでは、特定とくていの地域ちいきに浸水しんすい被害ひがいが集中しゅうちゅうしていましたが、その多おおくは「旧きゅう河かわ道どう」の範囲はんいと一致いっちし、周囲しゅういより1メートルから2メートル前後ぜんご低ひくかったということです。

JR武蔵むさし小杉こすぎ駅えきとその付近ふきんにも「旧きゅう河かわ道どう」

また雨水あまみずが排水はいすいしきれずに浸水しんすいしたJR武蔵むさし小杉こすぎ駅えきとその付近ふきんにも、「旧きゅう河かわ道どう」が含ふくまれていました。

浸水しんすいは多摩たま川がわからおよそ800メートル内陸ないりく側がわの場所ばしょでも確認かくにんされているということです。

小森こもり准じゅん教授きょうじゅは、「都市とし化かが進すすむ地域ちいきでは、旧きゅう河かわ道どうでの地形ちけいのわずかな高低こうてい差さがわかりにくくなっている。浸水しんすいの影響えいきょうがいち早いちはやく始はじまるおそれがあり、避難ひなんのルートなども考かんがえておく必要ひつようがある。ハザードマップに加くわえて、今いまいる場所ばしょがどういう地形ちけいかも調しらべてほしい」と話はなしています。

旧きゅう河かわ道どうの背後はいごに堤防ていぼう浸水しんすい深ふかくなったか

小森こもり准じゅん教授きょうじゅの調査ちょうさでは、旧きゅう河かわ道どう沿ぞいだったことで浸水しんすいの被害ひがいがより深刻しんこくになったおそれのある場所ばしょも見みつかりました。

川崎かわさき市し高津たかつ区くでは多摩たま川がわの支流しりゅう、平瀬ひらせ川がわが水みずが流ながれ込こめずに逆流ぎゃくりゅうする「バックウォーター現象げんしょう」などによってあふれ、多摩たま川がわと合流ごうりゅうする一帯いったいが水みずにつかりました。

マンションが最大さいだい2メートル近ちかく浸水しんすいし、1階かいに住すんでいた男性だんせいが死亡しぼうしました。

小森こもり准じゅん教授きょうじゅによりますと、このマンションの一帯いったいは旧きゅう河かわ道どうにあたるほか、建物たてものの背後はいごに土どの堤防ていぼうがあったことで浸水しんすいがより深刻しんこくになった可能かのう性せいがあるということです。

住宅じゅうたく地ちの中なかにあるこの堤防ていぼうは、かつての川かわの流ながれによって土どが堆積たいせきしたものがもとになっていて、今いまでも多摩たま川がわ下流かりゅうの浸水しんすいを食い止くいとめるため、「霞かすみ堤つつみ」として活用かつようされています。

小森こもり准じゅん教授きょうじゅは、この堤防ていぼうが建物たてものの背後はいごにあったため、旧きゅう河かわ道どうの一帯いったいに流れ込ながれこんだ水みずの逃げ場にげば所しょがなくなり、浸水しんすいがより深ふかくなった可能かのう性せいがあると指摘してきしています。

旧きゅう河かわ道どうは“治水ちすい地形ちけい分類ぶんるい図ず”で検索けんさく

小森こもり准じゅん教授きょうじゅによりますと、多摩たま川がわは江戸えど時代じだい以降いこう、川かわの流ながれをまっすぐに変かえたり、用水路ようすいろを作つくったりする工事こうじが行おこなわれたということで、今回こんかい浸水しんすい被害ひがいがあった「旧きゅう河かわ道どう」も、そのころまでは川かわだったとみられています。

自治体じちたいが浸水しんすいを想定そうていして作成さくせいしているハザードマップは土地とちの高低こうてい差さのデータをもとに作つくられており、旧きゅう河かわ道どうの多おおくは浸水しんすいが想定そうていされています。

ただ、浸水しんすいするおそれのある最大さいだいの深ふかさに合あわせて色分いろわけされているため、旧きゅう河かわ道どうの正確せいかくな位置いちやどのくらい低ひくいのかまではわかりません。

旧きゅう河かわ道どうがどこかは「治水ちすい地形ちけい分類ぶんるい図ず」をみればわかります。

国くにが管理かんりする一級いっきゅう河川かせんを対象たいしょうに、国土こくど地理ちり院いんが作つくっているもので、「地理ちり院いん地図ちず」というウェブサイトを開ひらいたあと、左上ひだりうえにある「地図ちず」のマークから「土地とちの成り立なりたち・土地とち利用りよう」の中なかにある「治水ちすい地形ちけい分類ぶんるい図ず」（更新こうしん版ばん）を選択せんたくすれば、地図ちず上じょうに表示ひょうじされます。

白地しろじに青色あおいろの線せんが入はいっているところが「旧きゅう河かわ道どう」です。

この地図ちずでは「旧きゅう河かわ道どう」のほかにも、▽泥どろが堆積たいせきしてできた土地とちのため水分すいぶんを含ふくみやすく、長期ちょうき間かん水みずにつかるおそれがある「後背こうはい湿地しっち」や、▽過去かこの洪水こうずいで上流じょうりゅうからの土砂どしゃが堆積たいせきしてできた平野へいや部ぶで、再ふたたび浸水しんすいするリスクがある「氾濫はんらん平野へいや」などさまざまな災害さいがいリスクのある地形ちけいが示しめされています。