“揺ゆさぶり死し” 父親ちちおやに無罪むざい判決はんけつ 「暴行ぼうこう加くわえたと認みとめられず」

中馬ちゅうまさんは、平成へいせい29年ねん１月いちがつ、東京とうきょう 町田まちだ市しの自宅じたくで、当時とうじ、生後せいご１いちか月かげつだった長女ちょうじょの頭あたまを揺ゆさぶるなどして脳のうに損傷そんしょうを与あたえ、およそ２にか月かげつ後ごに死亡しぼうさせたとして傷害しょうがい致死ちしの罪つみに問とわれました。

裁判さいばんでは、検察けんさつ側がわが「長女ちょうじょは脳のう内ないや網膜もうまくが出血しゅっけつしており、強つよい力ちからで揺ゆさぶられたことが原因げんいんだ。母親ははおやの入浴にゅうよく中ちゅうに様子ようすが変かわっており、暴行ぼうこうしたのは中馬ちゅうまさん以外いがいにありえない」として、懲役ちょうえき８はち年ねんを求刑きゅうけいしたのに対にたいして、弁護べんご側がわは「中馬ちゅうまさんは、過去かこに一いち度ども虐待ぎゃくたいしたことはなく、暴力ぼうりょくは加くわえていない」と無罪むざいを主張しゅちょうしていました。

７なな日にちの裁判さいばん員いん裁判さいばんの判決はんけつで、東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょ立川たつかわ支部しぶの竹下たけした雄つよし裁判さいばん長ちょうは「中馬ちゅうまさんが、揺ゆさぶる暴行ぼうこうを加くわえたと認みとめられる直接ちょくせつ的てきな証拠しょうこはなく、本件ほんけんの前まえにも何なんらかの暴力ぼうりょく的てきな行為こういに及およんだ形跡けいせきはない」と指摘してきしました。

そのうえで「複数ふくすうの医師いしの証言しょうげんなどを総合そうごう的てきに検討けんとうした結果けっか、長女ちょうじょの頭部とうぶの損傷そんしょうは、心臓しんぞうマッサージの際さいなどに起おきた可能かのう性せいも否定ひていできず、中馬ちゅうまさんが揺ゆさぶったのは間違まちがいないといえるほどの立証りっしょうはされていない」として、無罪むざいを言い渡いいわたしました。

無罪むざい判決はんけつの中馬ちゅうまさん「日常にちじょう生活せいかつ 早はやく取り戻とりもどしたい」

無罪むざい判決はんけつを受うけて中馬ちゅうま隼人はやとさんは「裁判所さいばんしょに公正こうせいな判断はんだんをしてもらった。捜査そうさ機関きかんが、当初とうしょからいろいろな可能かのう性せいを検討けんとうし、慎重しんちょうに捜査そうさを進すすめていれば、自分じぶんが罪つみに問とわれるようなことはなかった。きょうの判決はんけつを長女ちょうじょに報告ほうこくするとともに、日常にちじょう生活せいかつを早はやく取り戻とりもどしたい」と話はなしていました。

東京とうきょう地検ちけん立川たつかわ支部しぶ「内容ないよう精査せいさし適切てきせつに対処たいしょしたい」

今回こんかいの無罪むざい判決はんけつについて、東京とうきょう地検ちけん立川たつかわ支部しぶの長谷川はせがわ保たもつ支部しぶ長ちょうは「判決はんけつ内容ないようを精査せいさし、適切てきせつに対処たいしょしたい」とコメントしています。

「乳幼児にゅうようじ揺ゆさぶられ症候しょうこう群ぐん」相次あいつぐ無罪むざい判決はんけつ

弁護士べんごしなどで作つくるグループによりますと「乳幼児にゅうようじ揺ゆさぶられ症候しょうこう群ぐん」をめぐっては平成へいせい28年ねん以降いこう、全国ぜんこくで少すくなくとも11件けんの無罪むざい判決はんけつが出でているということです。

このうち大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょは６ろく日にち、生後せいご１いちか月かげつの女の子おんなのこを激はげしく揺ゆさぶり、脳のうに大だいけがを負おわせたとして傷害しょうがいの罪つみに問とわれた母親ははおやの裁判さいばんで、１いち審しんの有罪ゆうざい判決はんけつを取り消とりけし、無罪むざいを言い渡いいわたしたほか、去年きょねん10月つきにも、生後せいご２にか月かげつの孫まごを強つよく揺ゆさぶって死亡しぼうさせた罪つみに問とわれた女性じょせいの裁判さいばんでも無罪むざいを言い渡いいわたしています。

専門せんもん家か「多角たかく的てき 科学かがく的てきな検討けんとうを」

無罪むざい判決はんけつが相次あいついでいることについて「乳幼児にゅうようじ揺ゆさぶられ症候しょうこう群ぐん」をめぐる裁判さいばんに詳くわしい甲南こうなん大学だいがく法学部ほうがくぶの笹倉ささくら香奈かな教授きょうじゅは「脳のうの出血しゅっけつなど特徴とくちょう的てきな症状しょうじょうを安易あんいに虐待ぎゃくたいと結むすびつける今いままでのやり方やりかたが問題もんだいだと示しめしている。虐待ぎゃくたいを見逃みのがしてはいけないが、えん罪えんざいが生うまれるのも許ゆるされない。さまざまな証拠しょうこを多角たかく的てき・科学かがく的てきに検討けんとうする姿勢しせいが求もとめられる」と話はなしています。

揺ゆさぶられ症候しょうこう群ぐんとは

今回こんかいの事件じけんで問題もんだいになった「乳幼児にゅうようじ揺ゆさぶられ症候しょうこう群ぐん」は、体からだに比くらべて頭あたまの比率ひりつが大おおきい赤あかちゃんの体からだが激はげしく揺ゆさぶられることで、脳のうが損傷そんしょうするもので、重おもい後遺症こういしょうが残のこったり、死亡しぼうしたりするケースもあります。

頭あたまの中なかの出血しゅっけつや網膜もうまくの出血しゅっけつ、脳のうが腫はれるといった３みっつの特徴とくちょう的てきな症状しょうじょうがあるとされ、日本にっぽん小児しょうに科か学会がっかいは、こうした場合ばあい、虐待ぎゃくたいの可能かのう性せいを考かんがえて診断しんだんするよう医師いしに促うながしています。

しかし、虐待ぎゃくたい以外いがいでも、つかまり立たちからの転倒てんとうや低ひくい場所ばしょからの転落てんらく、分ぶんべんなど、他たの原因げんいんでも起おこりうると指摘してきする専門せんもん家かもいて、「乳幼児にゅうようじ揺ゆさぶられ症候しょうこう群ぐん」と「虐待ぎゃくたい」の認定にんていをめぐって議論ぎろんが続つづいています。