乗用車を運転していたのは旧通産省の幹部だった飯塚幸三元職員(88)で、警視庁が事故の原因について捜査を進めてきました。
警視庁によりますと、車の状態を詳しく確認したところ暴走につながる不具合はなかったということです。
さらに、ドライブレコーダーの記録などを分析した結果、ブレーキとアクセルの踏み間違いが事故の原因だったと判断したということです。
警視庁は12日、飯塚元職員を過失運転致死傷の疑いで書類送検しました。
捜査関係者によりますとこれまでの調べに対して「パニック状態になってブレーキとアクセルを踏み間違えた可能性もある」と供述しているということですが、警視庁は書類送検にあたって飯塚元職員が容疑を認めているか明らかにしていません。
今後は検察庁が、起訴するかどうかを判断することになります。
スピードは時速100キロ近くに
警視庁はドライブレコーダーの記録などを通じて、事故の詳しい状況を分析してきました。
それによりますと、車は現場の60メートルほど手前で車線変更しようとした際に加速し始めました。
車は最初に道路左側の縁石に接触する事故を起こし、そのあとさらに暴走して周囲にいた人たちを次々とはねていきました。
ドライブレコーダーの記録では、この間、アクセルを踏んだとみられるエンジン音が鳴り続けていたということです。
スピードは時速100キロ近くに達していました。
当初の調べに飯塚元職員は「ブレーキを踏んだが効かなかった」と供述していましたが、警視庁が確認したところ、車に不具合はありませんでした。
一連の暴走でブレーキがかけられた形跡はなくアクセルが踏まれ続けていた疑いが強いことがわかり、警視庁は事故の原因を運転ミスと結論づけました。
逮捕されないことに批判相次ぐ
今回の事故をめぐっては、飯塚元職員が逮捕されないことへの批判が相次ぎました。
捜査機関は逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に容疑者を逮捕しますが、警視庁は飯塚元職員について事故直後にけがをして入院し退院後も逃亡のおそれがなく、車やドライブレコーダーなどがすぐに押収されたため証拠隠滅のおそれもなかったとしています。
また、警視庁によりますと、飯塚元職員は事故を起こす前から足が悪くつえを使って歩いていて、医師から不要な運転は控えるよう指摘されていたということです。
ただ、飲酒運転のように正常な運転ができない状態だったとまでは言えず、直接の事故原因ではなかったと判断されました。
さらに、わざと車を暴走させたわけでもないとして、より罰則の重い危険運転致死傷罪は適用されませんでした。
厳罰求める署名 39万人分を地検に提出
事故で亡くなった松永真菜さん(31)と長女の莉子ちゃん(3)の遺族は、高齢ドライバーによる同じような事故を繰り返さないでほしいと訴えてきました。
松永さんの夫ら遺族は、飯塚元職員に厳罰を求める署名活動を行い、集まったおよそ39万人分の署名をことし9月、東京地方検察庁に提出しています。
松永さんの夫は署名提出の際の記者会見で、「多くの方が関心を持って下さっているので、公共交通機関の少ない地方での足の問題など議論のきっかけにもなってほしい」と述べていました。
今回の書類送検を受けて、遺族は改めて12日の夕方、記者会見を開くことにしています。
政府 「限定免許」の導入を検討も
今回の事故をきっかけに、高齢ドライバーによる交通事故を防ぐ取り組みが進んでいます。
政府は高齢者を対象に、自動ブレーキなどを搭載した安全性の高い車に限って運転を認める「限定免許」の導入を検討しています。
また、東京都は70歳以上のドライバーを対象に、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防ぐ装置の購入費用などを補助する制度を導入しました。
運転免許を返納する人も増えています。東京都内では、ことしに入ってから、先月までに5万3690人が免許を返納し、年間で過去最も多かったおととしの4万6289人をすでに上回っています。