亡なき子この“お給料きゅうりょう”を贈呈ぞうてい 東名とうめい事故じこから20年ねん 飲酒いんしゅ運転うんてん根絶こんぜつを

両親りょうしんの井上いのうえ保孝やすたかさんと郁美いくみさん夫妻ふさいは、２に人にんをしのぶ会かいを毎年まいとし行おこなっていて、１いち日にち、千葉ちば市しで開ひらかれたことしの会かいには、交通こうつう事故じこの遺族いぞくや交通こうつう安全あんぜんに取り組とりくむ人ひとなどおよそ70人にんが出席しゅっせきしました。

夫妻ふさいは事故じこの賠償ばいしょう金きんについて、２に人にんが生いきていれば、それぞれ19歳さいになる年としから受け取うけとっていますが、大人おとなになった２に人にんの「お給料きゅうりょう」と呼よんで、事故じこ防止ぼうしに取り組とりくむ団体だんたいなどに寄付きふしています。

ことしも７ななつの団体だんたいに２に人にんの「お給料きゅうりょう」が贈おくられ、目録もくろくが手渡てわたされました。

そして近ちかくの公園こうえんで、亡なくなった２に人にんをしのんで天国てんごくまで届とどけようと風船ふうせん飛とばしも行おこなわれました。

郁美いくみさんは「子こどもの賠償ばいしょう金きんを受け取うけとって喜よろこぶ親おやはいません。このお金おかねを１いち件けんでも事故じこを減へらすことや、飲酒いんしゅ運転うんてんを減へらすことに役立やくだててほしいです」と話はなしていました。

幅広はばひろく贈呈ぞうてい

２に人にんの「お給料きゅうりょう」は、事故じこ防止ぼうしの活動かつどうを進すすめる団体だんたいだけでなく、アルコールの問題もんだいに取り組とりくむ団体だんたいなどにも幅広はばひろく贈おくられています。

１いち日にちの贈呈ぞうてい式しきで目録もくろくを受け取うけとった「アルコール薬物やくぶつ問題もんだい全国ぜんこく市民しみん協会きょうかい」では、二日酔ふつかよいによる飲酒いんしゅ運転うんてんが今いまもあとをたたないことから、アルコール摂取せっしゅの正ただしい知識ちしきを啓発けいはつしたいとしています。

協会きょうかいの代表だいひょうを務つとめる今成いまなり知美ともみさんは「亡なくなった２に人にんの思おもいを受け取うけとり、大切たいせつに使つかいたいです」と話はなしていました。

「危険きけん運転うんてん致死傷ちししょう罪ざい」新設しんせつのきっかけに

事故じこは、20年ねん前まえの平成へいせい11年ねん11月つき28日にちに起おきました。

東京とうきょう 世田谷せたがや区くの東名とうめい高速こうそく道路どうろで、大型おおがたトラックが井上いのうえさんたち家族かぞく４よん人にんを乗のせた乗用車じょうようしゃに追突ついとつし、乗用車じょうようしゃは炎上えんじょうしました。

この事故じこで、乗用車じょうようしゃに乗のっていた長女ちょうじょの奏そう子こちゃん（当時とうじ３さん）と次女じじょの周子かねこちゃん（当時とうじ１いち）の幼おさない２に人にんの姉妹しまいが、両親りょうしんの目めの前まえで亡なくなりました。

トラックのドライバーは、事故じこの直前ちょくぜんに酒さけを飲のみ泥酔でいすい状態じょうたいで、途中とちゅうの料金りょうきん所しょで注意ちゅういされたにもかかわらず、運転うんてんを続つづけ事故じこを起おこしました。

この事故じこをきっかけに刑法けいほうが改正かいせいされ、酒さけ酔よい運転うんてんなど悪質あくしつな運転うんてんで事故じこを起おこしたドライバーの罰則ばっそくを強化きょうかする「危険きけん運転うんてん致死傷ちししょう罪ざい」が新あらたに設もうけられました。

飲酒いんしゅ運転うんてん撲滅ぼくめつを

事故じこで幼おさない２に人にんの娘むすめを亡なくした井上いのうえ保孝やすたかさんと郁美いくみさん夫妻ふさいは事故じこのあと、飲酒いんしゅ運転うんてんの撲滅ぼくめつや交通こうつう安全あんぜんを訴うったえる取り組とりくみを行おこなってきました。

事故じこを起おこしたトラックのドライバーは、当時とうじの法律ほうりつで業務ぎょうむ上じょう過失かしつ致死ちしなどの罪つみに問とわれ懲役ちょうえき４よん年ねんの判決はんけつを受うけました。

井上いのうえさん夫妻ふさいは「刑けいが軽かるすぎる」として、危険きけんな運転うんてんで事故じこを起おこしたドライバーへの厳罰げんばつ化かを求もとめて署名しょめい活動かつどうなどを行おこない、賛同さんどうする声こえが全国ぜんこくに広ひろがりました。

これを受うけて刑法けいほうが改正かいせいされ、飲酒いんしゅ運転うんてんなど危険きけんな運転うんてんで事故じこを起おこしたドライバーへの罰則ばっそくを重おもくする、「危険きけん運転うんてん致死傷ちししょう罪ざい」が新あらたに設もうけられました。

改正かいせい刑法けいほうが成立せいりつしたのは、事故じこからちょうど２に年ねん後ご、亡なくなった娘むすめの２に回かい目めの命日めいにちでした。

一方いっぽう、ドライバーやその勤務きんむ先さきの会社かいしゃなどを相手取あいてどった民事みんじ裁判さいばんでは、賠償ばいしょうを命めいじる判決はんけつが言い渡いいわたされました。

判決はんけつでは、２に人にんが生いきていればそれぞれ19歳さいになる年としから、毎年まいとし、命日めいにちのたびに500万まん円えん余あまりを賠償ばいしょうするよう命めいじました。

夫妻ふさいは２に人にんの「お給料きゅうりょう」を飲酒いんしゅ運転うんてんの撲滅ぼくめつや交通こうつう安全あんぜん、それに被害ひがい者しゃ支援しえんなどに役立やくだててほしいと、さまざまな団体だんたいに寄付きふしていて、贈おくり先さきの中なかにはアルコール依存いぞんの問題もんだいに取り組とりくむ団体だんたいも含ふくまれています。

事故じこで亡なくなった井上いのうえ奏そう子こちゃん（当時とうじ３さん）と周子かねこちゃん（当時とうじ１いち）は生いきていれば23歳さいと21歳さいになっていたはずでした。

父親ちちおやの保孝やすたかさんは「たまたまことしの命日めいにちに行いった『三鷹みたかの森もりジブリ美術館びじゅつかん』で、小ちいさな子こどもが遊あそぶスペースがありましたが、そこに奏そう子こと周子かねこがいないかなと目めをこらして見みてしまいました」と幼おさないままの娘むすめへの思おもいを語かたりました。

母親ははおやの郁美いくみさんは「事故じこのことは、きのう起おきたかのように20年ねんたっても、いまだに鮮明せんめいによみがえってきます。もし大おおきくなっていたら社会しゃかい人じんなっていたでしょうし、大学生だいがくせいになっていたでしょう。同級生どうきゅうせいの中なかには結婚けっこんしている友達ともだちもいて、世の中よのなかでは20年ねんの時ときが流ながれているのに２に人にんの時計とけいは止とまってしまったままなのが、いまだに受け入うけいれられません」と話はなしています。

保孝やすたかさんは「生いきていればお給料きゅうりょうをもらえる年齢ねんれいになっていたはずです。奏そう子こと周子かねこが生いきていれば、世の中よのなかの役に立やくにたっていたはずなので、寄付きふ金きんを役立やくだててもらえればと思おもいます」と話はなしていました。

郁美いくみさんは「１いち年ねん間奏かんそう子こと周子かねこが働はたらいて、お給料きゅうりょうをもらって、本来ほんらいであれば彼女かのじょたちが使つかっていたお金おかねを私わたしたちが代理だいりでいただいています。子こどもの賠償ばいしょう金きんを受け取うけとることを喜よろこぶ親おやなんていません。このお金おかねを１いち件けんでも事故じこを減へらすことや飲酒いんしゅ運転うんてんを減へらすこと、もう少もうすこし対象たいしょうがひろがって子こどもが巻き込まきこまれる事件じけん事故じこを減へらすことに役立やくだててほしいです」と話はなしていました。

また、今月こんげつ１いち日にちから反則はんそく金きんが引き上ひきあげられた、携帯けいたい電話でんわなどを使用しようしながら車くるまを運転うんてんする「ながら運転うんてん」についても、絶対ぜったいにやめてほしいと訴うったえています。

郁美いくみさんは「安全あんぜんに対にたいする意識いしきが欠かけているドライバーがゼロになっていないのが悔くやしいです。そういう事故じこはわざわざ危険きけんな運転うんてんをした結果けっか起おきる事故じこなので、絶対ぜったいになくせるはずです。事故じこが起おきてしまって人ひとが犠牲ぎせいになってから『危険きけんな運転うんてんなんだ』とわかるのでは遅おそいんです。お互おたがいに声こえをかけあってそんな運転うんてんをやりそうな人ひとがいたら友達ともだちだったら止とめてほしい。みんなちょっとずつ勇気ゆうきをもってほしい」と訴うったえていました。