国はこの10年間、1日平均3000人以上が利用する鉄道や、バス、船などの施設でエレベーターやスロープの整備を重点的に進め、鉄道の駅では、去年3月時点で全国3580か所のうち92%で移動の妨げとなる段差が解消されたということです。
一方、5885か所ある1日平均の利用客が3000人未満の駅で段差が解消されたのは23%にとどまっています。
バリアフリー法の改正に伴い、遠州鉄道は、このうち1日の平均利用客が2100人あまりの「八幡駅」で今年度、エレベーターを設置することを決めました。 利用客の要望を受けて市と協議を重ねた結果整備することになったということで、費用の4億円のうち3分の2は国と市からの補助をあてることにしています。 一方、ほかの8つの駅では多額の資金が必要なことなどが理由でバリアフリー化のめどはたっていません。 このうち、繁華街にあり、1日平均3100人あまりが利用する「第一通り駅」では、地下に川が流れているほか、電力会社のケーブルも埋まっているため、関係機関との協議が難航しているということです。 遠州鉄道運輸事業部の諸井宏司部長は「地方の公共交通機関は新型コロナウイルスの影響で都市部以上に利用客が減り、経営が厳しくなっている。一事業者としてバリアフリー化を進めるのは難しいのが現状で、行政の協力が必要だ。高齢化が進む現代ではますますバリアフリーのニーズが高まっているので優先順位をつけて取り組んでいきたい」と話しています。
また福井県から家族で旅行に来て、エレベーターのない第一通り駅を利用していた30代の女性は「以前はエレベーターがなくても困りませんでしたが、子どもを持つ身になり、今はあると必ず使っています。地方でもバリアフリーを進めてほしいです」と話していました。
また、今回の法改正では1日平均の利用客が2000人以上の駅などでバリアフリー化が進められることになりましたが、自治体が「基本構想」を作った上で、高齢者や障害者の生活に欠かせない施設だと位置づけることが要件となっています。 佐藤さんは「対象となる駅があまり増えないことを心配している。自治体が構想を作るだけでなく、それに沿って改修を進めていくことが必要だ」としています。 さらに都市部を含む課題として、「ホームと車両の間に段差と隙間があると、車いす利用者は1人では乗り降りができず、駅員などにスロープを持ってきてもらうことになる。これがなくなれば1人で自由に利用できるので、ぜひ進めてほしいと」と話しています。
そのうえでハードの整備にとどまらず意識の変革が重要だとして、「ハードがよくなって出かけやすくなっても車いすの人にけげんな顔をする人が多かったら街は変わっていかない。人間がお互い助け合うという一人一人の意識があった上で、ハードもそれにあわせていくということが大切だ。意識を変えるというのは一晩を境に変えることができるので、変わっていくことが大事だと思う」と話していました。
バリアフリー化望む利用者
都市部と地方に圧倒的な差が
為末大さん「助け合うという意識、そしてハードを」