関係者によりますと、このフォーラムの主催者の一員でもあるソフトバンクグループの孫正義社長は、予定されていたフォーラムでの講演は取りやめるということです。
トルコにあるサウジアラビア総領事館で政府の批判を続けていたジャーナリストが死亡した事件が影響したものと見られます。
フォーラムをめぐっては、事件を受けて欧米各国の要人や外国企業のトップが出席を取りやめていて、日本でも三菱UFJ銀行も頭取の出席を取りやめました。
孫社長は去年、サウジアラビアの政府系ファンドと共同で10兆円規模のファンドを設立したほか、去年の経済フォーラムでは、ムハンマド皇太子が進める先端技術の都市建設計画への参画を表明するなどサウジアラビアとの関係を強めていただけに、その動向が注目されていました。
ソフトバンクとサウジアラビアとの関係
ソフトバンクグループの孫正義社長とサウジアラビアのムハンマド皇太子が関係を深める機会となったのが、去年5月にソフトバンクグループが設立した投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」です。
投資資金は930億ドル、日本円で10兆円規模にのぼり、このうちムハンマド皇太子が率いるサウジアラビアの政府系ファンドが450億ドル、日本円でおよそ5兆円を出資して最大の出資者となりました。
これをきっかけに孫社長はサウジアラビアとの関係を深めていき、去年10月には首都のリヤドで開かれた前回の経済フォーラムにも孫社長が出席し、ムハンマド皇太子が立ち上げたサウジアラビア北西部の砂漠地帯に先進技術を集めた新都市を建設する計画に参画することを表明しました。
また、ことし3月にはアメリカ・ニューヨークで孫社長とムハンマド皇太子が共同で記者会見を開き、総額2000億ドル、日本円にしておよそ22兆円をかけてサウジアラビアで世界最大の太陽光発電事業を行う計画も発表しました。
さらに孫社長はムハンマド皇太子が率いる政府系ファンドと10兆円規模の第2のファンドを立ち上げることで調整を進めています。
こうした関係の背景には、サウジアラビアが、改革派とされるムハンマド皇太子のもとで、石油の輸出に依存した経済からの脱却を目指していることがあります。
ムハンマド皇太子は、“脱石油”の経済政策の中心としてアメリカの有力ベンチャー企業など、最先端のテクロノジー分野への投資を進めていて、この分野への投資を積極的に行っている孫社長と方向性が一致しました。
一方、孫社長としては、サウジアラビアの潤沢なオイルマネーを取り込み資金面の後ろ盾とすることで投資事業を加速する狙いがあります。
ソフトバンクにとっては、アメリカや中国、それにインドなど最先端の有力ベンチャーに次々と投資をする戦略を推し進める上で、サウジアラビアは欠かせないパートナーになっており、今回の事件が今後の戦略にどのような影響を与えるか注目されています。
「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」ベンチャー中心に投資
サウジアラビアの政府系ファンドから出資を受けて設立した投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は成長が見込まれるIT分野のベンチャー企業を中心に投資をしています。
これまでにアメリカの配車サービス大手の「ウーバー」、インドの電子決済サービス大手の「ペイティーエム」、企業向けにシェアオフィスを提供するアメリカの「ウィワーク」、それにアメリカの半導体メーカー「エヌビディア」、イギリスの半導体開発大手「ARMホールディングス」など30社以上に投資しています。