滋賀県のびわ
湖の
生物多様性を
物語る
巻き
貝「カワニナ」について、
東京大学の
研究者が
生息地を
調査したところ、
ほかの
生息地から
隔絶された
湖の
底に
ある山の
上に、
これまでと
特徴の
異なるカワニナが
生息していることが
新たに
分かりました。
东京大学的研究人员对讲述滋贺县琵琶湖生物多样性的卷螺“川蜷”进行了栖息地调查,结果新发现,在与其他栖息地隔绝的湖底山丘上,生活着与以往特征不同的川蜷。
調査した研究者は「過酷な環境で暮らすためにゴツゴツした貝殻を持つなど独自の進化を遂げた可能性がある」としています。
调查的研究人员表示:“为了在恶劣的环境中生存,这些生物可能进化出了坚硬粗糙的贝壳等独特特征。”
びわ湖の多様性を物語る新発見
滋賀県立琵琶湖博物館などによりますと、びわ湖にはここにしか生息していない17種の小さな巻き貝の「カワニナ」が確認されていて、びわ湖の生物多様性を物語る生き物として知られています。
据滋贺县立琵琶湖博物馆等介绍,琵琶湖中确认存在17种只分布在这里的小型螺类“川蜷”,它们被认为是展示琵琶湖生物多样性的代表性生物。
東京大学の澤田人">直人特任研究員(29)は、びわ湖でカワニナの新たな生息地を見つけようと、地元の漁業者の協力を得て船での調査を行いました。
东京大学的特任研究员泽田直人(29岁)为了在琵琶湖寻找川蜷的新栖息地,在当地渔民的协助下进行了船上调查。
澤田さんが着目したのは、びわ湖の沖合5キロ付近の湖の底にある「湖底の山」です。
泽田先生关注的是,琵琶湖离岸约5公里处湖底的“湖底山”。
カワニナは通常、湖の浅瀬から水深30メートル付近にかけて生息しているため、水深が60メートルほどある沖合には生息できないと考えられてきました。
由于川蜷通常生活在湖泊的浅滩到约30米深的水域,因此一直认为它们无法生存在水深约60米的湖中央。
しかし、「湖底の山」は高さが40メートルほどあり、山の頂上は水深20メートル付近に位置しています。
然而,“湖底的山”高度大约有40米,山顶位于水深约20米的地方。
澤田さんはこの頂上付近の水深であれば、カワニナが生息可能であると考え、地元の漁業者の協力を得てエビを取るための伝統的な漁具をしかけたのです。
泽田先生认为在这座山顶附近的水深,川蜷是可以生存的,于是得到了当地渔民的协助,布置了用于捕捉虾的传统渔具。
その結果、漁具の中からエビに混じってカワニナが見つかりました。
貝殻の形や遺伝情報を解析した結果、びわ湖のほかのカワニナとは特徴が異なることが確認されたということです。
据分析贝壳的形状和遗传信息,确认其与琵琶湖其他川蜷的特征不同。
このカワニナは貝殻の表面に突起があり、昔話などに出てくる「鬼の金棒」のような特徴的な形をしています。
这只川蜷的贝壳表面有突起,形状很有特点,就像民间故事中出现的“鬼的金棒”一样。
東京大学 澤田直人 特任研究員
「新たに見つかったカワニナは『湖底の山』の頂上付近に限って生息しているとみられます。
东京大学特任研究员泽田直人表示:“新发现的川蜷似乎仅限于栖息在‘湖底之山’的山顶附近。”
過酷な
環境で
暮らすためにゴツゴツした
貝殻を
持つなど
独自の
進化を
遂げた
可能性があると
考えられます」
多様性の象徴「カワニナ」
びわ湖には、ビワコオオナマズなどのびわ湖にしか生息しない固有の生き物が60種以上確認されていて、なかでも生物の多様性を象徴する存在なのが、「カワニナ」と呼ばれる淡水性の小さな巻き貝です。
为了在恶劣的环境中生存,它们可能进化出了坚硬粗糙的贝壳等独特特征。多样性的象征“川蜷”——在琵琶湖中,已经确认存在包括琵琶湖巨鲶等60多种只分布于琵琶湖的特有生物。其中,被认为象征生物多样性的,就是被称为“川蜷”的淡水小螺。
これまでに17の固有種が確認されていて、びわ湖固有の生き物の3分の1近くを占めています。
到目前为止,已经确认有17种特有种,占据了琵琶湖特有生物的近三分之一。
びわ湖の沿岸の岩場や泥、砂地など、変化に富んだ環境に適応し、長い時間をかけて多様な固有種に分かれていったと考えられています。
据认为,它们适应了琵琶湖沿岸的岩石、泥地和沙地等多变的环境,经过长时间演化,分化为多种多样的特有种。
こうしたびわ湖のカワニナの多様化は、およそ40万年前以降に起きたと見られることが、高知大学などが行った遺伝情報の解析からわかっています。
高知大学等通过对遗传信息的分析发现,琵琶湖的川蜷多样化大约是在40万年前以后发生的。
東京大学 澤田直人 特任研究員
「びわ湖のカワニナを10年近く研究してきましたが、びわ湖は“カワニナの湖”と言っても過言ではなく、カワニナを調べることはびわ湖について知ることそのものだと考えています」
びわ湖の「湖底の山」
びわ湖の底にはいくつかの山が存在していることが知られています。
东京大学特任研究员泽田直人表示:“我研究琵琶湖的川蜷已经将近十年,可以说琵琶湖就是‘川蜷之湖’也不为过。我认为,研究川蜷本身就是了解琵琶湖本身。”琵琶湖的“湖底之山”,众所周知,琵琶湖的湖底存在着几座山。
このうち、今回のカワニナの調査が行われた「湖底の山」は高さが40メートルほどあり、13階建てのビルに相当します。
在这些之中,这次对川蜷进行调查的“湖底之山”大约有40米高,相当于13层楼高的大楼。
一方で、びわ湖の水深は最も深いところで100メートルを超えていて、調査が行われた「湖底の山」の周辺も水深60メートルと比較的深くなっています。
另一方面,琵琶湖最深处的水深超过100米,调查所进行的“湖底的山”周边水深也有60米,相对较深。
このため「湖底の山」の姿は水面からは全く見えず、水中にひっそりと隠れるように存在しています。
因此,“湖底的山”的身影从水面上完全看不见,静静地隐藏在水中。
大学院で学んだ漁業者が協力
今回のカワニナの調査が行われたびわ湖の沖合は流れが急で、ダイバーなどが潜って調査を行うのは危険を伴うということです。
在研究生院学习过的渔民协助了这次对川蜷的调查。据说琵琶湖湖心水流湍急,潜水员等下潜进行调查存在危险。
そこで、調査の実現に協力したのが、滋賀びわ湖漁業協同組合海津支所に所属する若手漁業者、宮崎捷世さん(29)です。
因此,协助实现调查的是隶属于滋贺琵琶湖渔业协同组合海津分所的年轻渔民,宫崎捷世先生(29岁)。
東京海洋大学の大学院でびわ湖の魚をテーマに研究をしていた経験のある宮崎さんは、おととし、カワニナの調査を行う同世代の研究者、澤田直人さん(29)の講演を聞いたのをきっかけに、調査に協力するようになりました。
曾在东京海洋大学研究生院以琵琶湖的鱼类为主题进行研究的宫崎先生,两年前听了同龄研究者泽田直人(29岁)关于田螺调查的讲座,由此开始协助该项调查。
宮崎さんはエビを取るための伝統的な漁具「エビタツベ」を船に積み込んで調査水域に向かい、水面には出ていない「湖底の山」の頂上付近を狙って漁具を落とし、後日回収する調査を行いました。
宫崎先生将用来捕虾的传统渔具“虾笼”装上船,前往调查水域,瞄准尚未浮出水面的“湖底山脉”顶端附近投下渔具,之后再回来回收进行调查。
漁具は生き物が一度入ると抜け出しにくい構造になっていて、宮崎さんはエビや魚とともにカワニナを引き上げることに成功したということです。
渔具的结构使得生物一旦进入就很难出来,据说宫崎先生成功地和虾、鱼一起捕捞上来了川蜷。
初めて
成功したのは
2年前です。
漁業者 宮崎捷世さん
「よく見ると全然見たことがないカワニナだったので、澤田さんと2人で叫び声を上げたことを覚えています。
渔民宫崎捷世先生说:“仔细一看,完全是我从未见过的川蜷,所以我还记得和泽田先生两个人一起惊叫了出来。”
漁業者の
経験を
生かして
基礎研究に
貢献できるのはこの
上ない
喜びです」
びわ湖の歴史ひもとく手がかりに
今回、びわ湖の沖合にある「湖底の山」からカワニナが見つかったことは、びわ湖の歴史をひもとく手がかりになる可能性もあると期待されています。
能够利用渔民的经验为基础研究做出贡献,是无上的喜悦。作为解开琵琶湖历史的线索,这次在琵琶湖近海的“湖底山”发现了川蜗牛,人们也期待这有可能成为解开琵琶湖历史的线索。
滋賀県立琵琶湖博物館などによりますと、現在のびわ湖がある場所は湖ができる前、深い谷と山が連なる地形で、およそ40万年前以降、びわ湖の西側を通る断層の運動によって徐々に沈み、西側から東側へと湖が広がることで、現在の湖ができたと考えられています。
据滋贺县立琵琶湖博物馆等介绍,目前琵琶湖所在的位置在湖泊形成之前,是由深谷和连绵山脉构成的地形。大约在40万年前以后,由于通过琵琶湖西侧的断层活动,地形逐渐下沉,湖泊从西侧向东侧扩展,最终形成了现在的湖泊。
また、この沈み込みの過程でかつての山の一部が湖に水没し、「湖底の山」を形成したと考えられるということです。
此外,据认为,在这一俯冲过程中,曾经的山体部分沉入湖中,形成了“湖底的山”。
ただ、カワニナが見つかった「湖底の山」がいつ水没したのかなど、詳細については現時点では分からないことが多いということです。
不过,目前还不清楚像发现川蜷的“湖底之山”究竟是什么时候被淹没的,关于这些细节还有很多未知之处。
そこで、「湖底の山」の歴史をひもとく手がかりとして期待されているのが、山頂付近から見つかったカワニナの遺伝情報です。
因此,被寄予厚望作为解开“湖底之山”历史线索的是在山顶附近发现的川蜷的遗传信息。
東京大学の澤田直人特任研究員によりますと、遺伝情報を解析することで、カワニナの種がびわ湖の歴史のどの時代から存在しているのかなどの手がかりが得られ、そこから当時の生息環境を類推できる可能性があるということです。
据东京大学的特任研究员泽田直人介绍,通过解析遗传信息,可以获得有关川蜷这一物种自琵琶湖历史上哪个时期开始存在等线索,从而有可能推测出当时的生存环境。
澤田さんはカワニナが「湖底の山」にたどりついたシナリオとして、
▼山が湖に水没する過程でカワニナが頂上に取り残されたケースや、
▼何らかの理由で流れ着いたケースを想定しています。
泽田先生作为河蜷能够到达“湖底之山”的情景,设想了以下两种情况:▼在山被湖水淹没的过程中,河蜷被困在山顶的情况,或是▼由于某种原因漂流到那里的情况。
こうしたことから、びわ湖に多様な種が存在するカワニナを比較、研究することは「湖底の山」の成り立ちなど、びわ湖の歴史をひもとく手がかりになる可能性もあると期待しています。
因此,我们期望通过比较和研究琵琶湖中存在多种类的川蜷,不仅可以了解“湖底之山”的形成等,还可能成为揭示琵琶湖历史的线索。
澤田直人特任研究員
「すべてのカワニナに名前を付けてそれらの関係を明らかにしたうえで、何万年くらい前に種が分化したのかを明らかにできれば、びわ湖の歴史も分かってくると思うので、そうした研究をしていきたい」
(富山放送局 記者 山内洋平)
。
泽田直人特任研究员表示:“如果能够给所有的川蜷命名,并在弄清它们之间关系的基础上,明确它们大约在几万年前发生了物种分化,那么我认为也能进一步了解琵琶湖的历史,所以我希望能进行这样的研究。”(富山放送局 记者 山内洋平)