日本新聞: 天皇陛下御言葉「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ」

終戦しゅうせんから80はちじゅう年ねんを迎むかえた15じゅうご日にち、天皇てんのう陛下へいかは皇后こうごうさまとともに全国ぜんこく戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しきに臨のぞみ、おことばに「戦中せんちゅう・戦後せんごの苦難くなんを今後こんごとも語かたり継つぎ」という言葉ことばを新あらたに加くわえられました。

天皇てんのう陛下へいかは15じゅうご日にち、皇后こうごうさまとともに全国ぜんこく戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しきに出席しゅっせきし、参列さんれつ者しゃとともに黙もくとうをささげたあと、おことばを述のべられました。

冒頭ぼうとうでは去年きょねんまでと同様どうよう「さきの大戦たいせんにおいてかけがえのない命いのちを失うしなった数すう多おおくの人々ひとびととその遺族いぞくを思おもい、深ふかい悲かなしみを新あらたにいたします」と述のべられました。

続つづいて戦後せんごの歩あゆみを振ふり返かえると、去年きょねんとおととしは「これからも」としていたところを「戦中せんちゅう・戦後せんごの苦難くなんを今後こんごとも語かたり継つぎ」という言葉ことばに変かえた上うえで、「私わたしたち皆みなで心こころを合あわせ、将来しょうらいにわたって平和へいわと人々ひとびとの幸しあわせを希求ききゅうし続つづけていくことを心こころから願ねがいます」と話はなされました。

戦後せんご生うまれの天皇てんのう陛下へいかは、戦争せんそうの記憶きおくと平和へいわへの思おもいを、戦争せんそうを知しらない世代せだいに継承けいしょうしていくことの大切たいせつさについて、記者きしゃ会見かいけんなどで繰くり返かえし語かたられていて、今回こんかいの追悼ついとう式しきのおことばにも「語かたり継つぐ」という表現ひょうげんが、初はじめて盛もり込こまれました。

結むすびの一文いちぶんはこれまでと変かわらず「戦後せんごの長ながきにわたる平和へいわな歳月さいげつを思おもいを致いたしつつ、過去かこを顧かえりみ、深ふかい反省はんせいの上うえに立たって、再ふたたび戦争せんそうの惨禍さんかが繰くり返かえされぬことを切せつに願ねがい、戦陣せんじんに散ちり戦禍せんかに倒たおれた人々ひとびとに対にたいし、全ぜん国民こくみんと共ともに、心こころから追悼ついとうの意いを表あらわし、世界せかいの平和へいわと我わが国くにの一層いっそうの発展はってんを祈いのります」と述のべられました。
【動画どうが】天皇てんのう陛下へいかおことばの全文ぜんぶん
本日ほんじつ、「戦没せんぼつ者しゃを追悼ついとうし平和へいわを祈念きねんする日ひ」に当あたり、全国ぜんこく戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しきに臨のぞみ、さきの大戦たいせんにおいてかけがえのない命いのちを失うしなった数すう多おおくの人々ひとびととその遺族いぞくを思おもい、深ふかい悲かなしみを新あらたにいたします。

終戦しゅうせん以来いらい80はちじゅう年ねん、人々ひとびとのたゆみない努力どりょくにより、今日きょうの我わが国くにの平和へいわと繁栄はんえいが築きずき上あげられましたが、多おおくの苦難くなんに満みちた国民こくみんの歩あゆみを思おもうとき、誠まことに感慨深かんがいぶかいものがあります。

戦中せんちゅう・戦後せんごの苦難くなんを今後こんごとも語かたり継つぎ、私わたしたち皆みなで心こころを合あわせ、将来しょうらいにわたって平和へいわと人々ひとびとの幸しあわせを希求ききゅうし続つづけていくことを心こころから願ねがいます。

ここに、戦後せんごの長ながきにわたる平和へいわな歳月さいげつに思おもいを致いたしつつ、過去かこを顧かえりみ、深ふかい反省はんせいの上うえに立たって、再ふたたび戦争せんそうの惨禍さんかが繰くり返かえされぬことを切せつに願ねがい、戦陣せんじんに散ちり戦禍せんかに倒たおれた人々ひとびとに対にたいし、全ぜん国民こくみんと共ともに、心こころから追悼ついとうの意いを表あらわし、世界せかいの平和へいわと我わが国くにの一層いっそうの発展はってんを祈いのります。
天皇てんのう陛下へいかこれまでのおことば
全国ぜんこく戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しきでの天皇てんのう陛下へいかのおことばは、戦争せんそうの犠牲ぎせい者しゃを悼いたみ、遺族いぞくに思おもいを寄よせるとともに、世界せかいの平和へいわと日本にっぽんの発展はってんを願ねがう気持きもちを表あらわされたもので、基本きほん的てきな内容ないようは毎年まいとし踏襲とうしゅうされています。

上皇じょうこうさまのおことばに込こめられた戦争せんそうと平和へいわへの思おもいが受うけ継つがれていますが、天皇てんのう陛下へいかは、戦後せんご生うまれの天皇てんのうとして初はじめて臨のぞんだ令りょう和わ元年がんねんの追悼ついとう式しきで、上皇じょうこうさまのおことばにあった「深ふかい反省はんせいとともに」という表現ひょうげんを「深ふかい反省はんせいの上うえに立たって」と言いいかえられました。

これについて、ノンフィクション作家さっかの保阪ほさか正ただし康やすしさんは当時とうじの取材しゅざいに「戦争せんそうを歴史れきし的てきな見方みかたで捉とらえた上うえで、『深ふかい反省はんせい』を自分じぶんが次つぎの時代じだいにつないでいくという思おもいを表あらわしたものだといえる」と話はなしていました。

翌年よくねんのおことばには新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいに触ふれた一文いちぶんが加くわえられ、戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しきのおことばに現在げんざいの課題かだいが初はじめて盛もり込こまれました。

おととしのおことばからは新型しんがたコロナウイルスへの言及げんきゅうがなくなり「これからも、私わたしたち皆みなで心こころを合あわせ、将来しょうらいにわたって平和へいわと人々ひとびとの幸しあわせを希求ききゅうし続つづけていくことを心こころから願ねがいます」という言葉ことばに変かわると、去年きょねんは同おなじおことばが続つづいていました。

平成へいせいの時代じだい、上皇じょうこうさまの戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しきでのおことばも、基本きほん的てきな内容ないようは毎年まいとし踏襲とうしゅうされてきましたが、上皇じょうこうさまは戦後せんご50ごじゅう年ねんや戦後せんご70ななじゅう年ねんの際さいには、おことばに新あらたな言葉ことばを足たしたり、表現ひょうげんを言いいかえられたりしました。
終戦しゅうせんから80はちじゅう年ねん令りょう和わの “慰霊いれいの旅たび”
両りょう陛下へいかは戦後せんご80はちじゅう年ねんのことし、戦没せんぼつ者しゃの慰霊いれいなどのため、先さきの大戦たいせんの象徴しょうちょう的てきな地域ちいきを訪たずねられています。

4よん月がつには「玉砕ぎょくさいの島しま」の1いちつ小笠原おがさわら諸島しょとうの硫黄いおう島とうを、6ろく月がつには激はげしい地上ちじょう戦せんが行おこなわれ、20にじゅう万まん人にん以上いじょうが犠牲ぎせいになった沖縄おきなわと、被爆ひばく地ち・広島ひろしまを訪問ほうもんされました。
9きゅう月がつには長崎ながさきを訪たずねられる予定よていで、これらの訪問ほうもん先さきは、平成へいせい6ろく年ねんから翌年よくねんの「戦後せんご50ごじゅう年ねん」にかけて上皇じょうこうご夫妻ふさいが先さきの大戦たいせんの象徴しょうちょう的てきな地域ちいきを巡めぐられた旅たびと重かさなります。

また7しち月がつのモンゴル公式こうしき訪問ほうもんでは、敗戦はいせん後ご、旧きゅうソビエトによって抑留よくりゅうされてモンゴルに送おくられ、過酷かこくな労働ろうどうなどのため命いのちを落おとした人ひとたちを慰霊いれいし、これまであまり知しられていなかった抑留よくりゅうの歴史れきしに光ひかりを当あてられました。
天皇てんのう陛下へいかは、戦争せんそうの記憶きおくと平和へいわへの思おもいを戦争せんそうを知しらない世代せだいに継承けいしょうしていくことの大切たいせつさについて、これまで繰くり返かえし語かたられています。

ことし2に月がつの記者きしゃ会見かいけんでも「戦中せんちゅう・戦後せんごの苦難くなんを体験たいけんした方々かたがたが高齢こうれいとなり、当時とうじのことを語かたり継ついでいくことが難むずかしくなっている中なか、国内こくない各地かくちで若わかい人ひとたちが戦争せんそうを知しろうとし、次つぎの世代せだいの語かたり部ぶとして育そだち、戦中せんちゅう・戦後せんごの苦労くろうを語かたり継つぐ活動かつどうが進すすめられていることは、戦後せんご80はちじゅう年ねんを迎むかえる今日きょう、一層いっそう意義いぎ深ふかいものとなっていると思おもいます」と述のべられました。

各地かくちへの訪問ほうもんでは、戦争せんそう体験たいけん者しゃや遺族いぞくに加くわえて、経験けいけんを次つぎの世代せだいに伝つたえようと活動かつどうする若者わかものなどとも懇談こんだんされています。

天皇てんのう陛下へいか御言葉おことば「戦中せんちゅう・戦後せんごの苦難くなんを今後こんごとも語かたり継つぎ」

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