これに先立ち、ホワイトハウスの当局者は25日、「北朝鮮をめぐる最新の情勢や、『最終的かつ完全に検証された非核化』に向けた今後の対応について意見を交わす重要な機会となる」と述べました。
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長は、25日に行ったプーチン大統領との会談でロシアとの友好関係を強調するなどアメリカをけん制しており、安倍総理大臣との会談で、北朝鮮に非核化を促すための今後の対応を検討していくとみられます。
一方、アメリカのハガティ駐日大使は25日、ワシントンで記者団に対し「拉致問題はこれまでの日米首脳会談でもいつも議題になっており、トランプ大統領は一貫して日本への支援に前向きだ」と述べ、拉致問題をめぐる対応についても協議が行われるという見通しを示しました。
また、日米の新たな貿易交渉をめぐり、アメリカ側は早期妥結に強い期待を示しており、首脳会談では交渉の今後の進め方について意見を交わすことにしています。
トランプ大統領の貿易姿勢に注目
今回の日米首脳会談では、先週から交渉が始まった2国間の貿易協定についてトランプ大統領がどのような姿勢を示すか注目されます。
貿易赤字
トランプ大統領は、中国やドイツとともに日本についても「貿易赤字が大きすぎる」とたびたび問題にしてきました。とくに日本からアメリカに輸出される自動車が多額の赤字の原因になっていると不満を示してきました。
今回の首脳会談では、輸出を減らしアメリカ国内で車の生産を増やすよう求める可能性があります。さらに日本から輸出される車の台数を制限する措置や、関税の上乗せなどに言及することがないか、警戒されています。
為替条項
一方、トランプ政権は、これまでに合意したカナダやメキシコなどとの貿易協定の中で、通貨を意図的に安く誘導して輸出を有利にする、為替操作に歯止めをかける「為替条項」を盛り込みました。
日本との交渉でも為替条項を要求し、首脳会談に先立って、25日に行われた麻生副総理兼財務大臣とムニューシン財務長官の会談でも為替の問題が取り上げられました。
しかし日本側は、為替の問題を貿易協定に盛り込むと、日本の金融政策や通貨政策がしばられることになりかねないため、為替と貿易の協議は切り離すべきだと主張しています。
トランプ大統領が、為替の問題に言及するかどうかも焦点の一つです。
G20
また日本が議長国を務める6月のG20大阪サミットにトランプ大統領がどのように臨むかも注目されます。
アメリカ最優先の保護主義的な貿易政策を推し進めるトランプ政権は、G20やG7サミットでもアメリカの主張を貫いて多国間の協調に背を向けています。
去年のG7サミットでは議長国カナダと貿易問題をめぐって対立し、閉幕後、「首脳宣言は承認しない」と突然表明し、物議を醸しました。
アメリカは中国やEU=ヨーロッパ連合の各国とも貿易問題などで対立しているため、今回のG20にどこまで前向きな姿勢を示すか関心が集まっています。
トランプ政権の外交政策と対日関係
トランプ政権は、日米同盟を「ルールに基づく国際秩序を支えるために不可欠」だとして重視しています。
その背景にあるのが、北朝鮮の核・ミサイル問題や、中国の軍事、経済の両面での著しい台頭があります。
このうち北朝鮮について、トランプ政権は、完全な非核化に応じるまで制裁を維持する方針で日本と一致し、制裁逃れのいわゆる「瀬取り」の対策などで協力を進めています。
また、日本人の拉致問題を重視し、トランプ大統領自身がおととし11月、拉致被害者や家族と面会したほかトランプ大統領やポンペイオ国務長官がキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長に直接、問題を提起したとしています。
一方、中国については、ペンス副大統領が去年10月の演説で、中国の海洋進出に断固として対抗する姿勢を示すなど、長期にわたる競合相手と位置づけています。
先週、ワシントンで開いた日米の外務・防衛の閣僚協議、2+2では、宇宙やサイバー空間での連携を強化する方針を確認したほか、東シナ海や南シナ海での中国の海洋進出を踏まえ、「深刻な懸念と強い反対」を共有しました。
また、トランプ政権は「自由で開かれたインド太平洋」を主張し、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗する形で、日米にオーストラリアやインドも加えた安全保障協力や、アジアや太平洋の国に対する投資の促進を図り、日本政府もこうした動きと足並みをそろえています。
首脳どうしの関係も良好で、アメリカ政府内では「日米の協力が進めやすいのは、トランプ大統領と安倍総理大臣の間に強い信頼関係があるためだ」という声も聞かれます。
ただ、今月、中国が行った「一帯一路フォーラム」や国際観艦式をめぐっては、アメリカが高官レベルの代表団や艦艇の派遣を見送ったのに対し、中国との関係改善を進める日本からは自民党の二階幹事長が出席したり海上自衛隊の護衛艦が派遣されたりして、対応に温度差もみられました。
さらに基地問題をめぐってはアメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設のほか、トランプ政権が日本に対して在日アメリカ軍の駐留経費の負担の増額を求める懸念なども指摘されています。