「『ひきこもりは犯罪はんざい予備よび軍ぐん』は偏見へんけんだ」当事者とうじしゃの声こえ広ひろがる

ひきこもりの当事者とうじしゃたちで作つくる雑誌ざっし「ひきポス」の編集へんしゅう長ちょうで、自身じしんもひきこもり経験けいけん者しゃの石いし崎森さきもり人じんさんは「（ひきこもりという）属性ぞくせいの一部いちぶが一致いっちするからと言いって、その他そのたの人ひとたちも同おなじように『危あぶない人ひと』としてみるのは、偏見へんけんだ。このような言説げんせつが広ひろまれば、ひきこもりの当事者とうじしゃや、かつてひきこもりだった者ものも深ふかく傷きずつく。当事者とうじしゃを追い詰おいつめるのではなく、しっかりと事件じけんを検証けんしょうし、社会しゃかいの不安ふあんが和やわらぐ報道ほうどうや言論げんろんであってほしい」とインターネット上じょうの記事きじで訴うったえました。

石崎いしざきさんは「ひきこもりが危険きけん人物じんぶつだとする風潮ふうちょうは以前いぜんからあり、私わたし自身じしんも経験けいけん者しゃとして、それを肌はだで感かんじてきました。『ひきこもりは外そとに出でてこないし、何なにを考かんがえているかわからない』として安易あんいに結び付むすびつけてしまうのだと思おもいます。かつて、東京とうきょう・埼玉さいたま幼女ようじょ連続れんぞく誘拐ゆうかい殺人さつじん事件じけんが起おきた時ときに『オタクは凶悪きょうあく犯罪はんざい事件じけんを起おこす』と言いわれたことがありました。その後そのご、『オタクと犯罪はんざいは関係かんけいない』と訴うったえる活動かつどうなどもあって、そうしたイメージがなくなっていったように、ひきこもり当事者とうじしゃの側がわから声こえを上あげることで、世間せけんの持もっているイメージを変かえられると信しんじています」と話はなしています。

「事実じじつにのっとり冷静れいせいな対応たいおうを」

一方いっぽう、ひきこもりの当事者とうじしゃや経験けいけん者しゃでつくる一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん「ひきこもりＵＸゆ-えっくす会議かいぎ」は、誤解ごかいや偏見へんけんが助長じょちょうされることを懸念けねんする声明せいめい文ぶんを出だしました。

声明せいめいは冒頭ぼうとうで「尊とうとい命いのちを奪うばった犯行はんこうはいかなる理由りゆうがあろうと、けして許ゆるされるものではなく、私わたしたちも強つよい憤いきどおりとともに深ふかく胸むねを痛いためています」としています。

そのうえで「ひきこもる人ひとたちをひとくくりに否定ひていすること」に向むかいかねないとして、今回こんかいの事件じけんで誤解ごかいや偏見へんけんが助長じょちょうされることへの危惧きぐを伝つたえています。

また「ひきこもりと犯罪はんざいが結び付むすびつけられ『犯罪はんざい予備よび軍ぐん』のような負まけのイメージが生うまれれば、当事者とうじしゃや家族かぞくは追い詰おいつめられ、不安ふあんや絶望ぜつぼうを深ふかめてしまいかねません」としています。

そして「特定とくていの状況じょうきょうに置おかれている人々ひとびとを排除はいじょしたり異質いしつのものとして見みるのではなく、事実じじつにのっとり冷静れいせいな対応たいおうをしてほしい」と求もとめています。

「行政ぎょうせいは縦たて割わりなくして対応たいおうを」

ひきこもりの問題もんだいに詳くわしいジャーナリストの池上いけがみ正樹まさきさんは、まず「ひきこもりが事件じけんにつながるわけではないことが大だい前提ぜんていだ」としたうえで、容疑ようぎ者しゃの状況じょうきょうについては、「実際じっさいの親子おやこではないが、構造こうぞう的てきには80代だいの親おやが収入しゅうにゅうのない50代だいの生活せいかつを支ささえる“8050問題もんだい”そのものの家庭かていだったのではないか」と指摘してきしています。

そのうえで「ひきこもりと事件じけんの因果いんが関係かんけいは分わかっておらず、容疑ようぎ者しゃがどのような状況じょうきょうにあったのか解明かいめいが必要ひつようだ。一般いっぱん的てきには社会しゃかい的てきに孤立こりつして居場所いばしょを失うしない追い詰おいつめられると、事件じけんにつながる可能かのう性せいがある。こうした家庭かていは地域ちいきの中なかで埋うずもれて、適切てきせつな支援しえんを受うけられないケースも多おおく、近ちかくに理解りかい者しゃや寄り添よりそってくれる人ひとがいれば、こういうことにはならなかったのではないか」と話はなしています。

そして、「今回こんかいは親族しんぞくが市しに何なん度ども相談そうだんをしていたのにこうした事件じけんが起おきてしまった。孤立こりつした家庭かていに対にたいする行政ぎょうせいの理解りかいやスキル、人材じんざいの育成いくせいが課題かだいだ。行政ぎょうせいは縦たて割わりをなくして、部署ぶしょを超こえて対応たいおうし支援しえん団体だんたいとも連携れんけいして対応たいおうすることが必要ひつようだったのではないか」と指摘してきしています。

「長期ちょうき化かする前まえに支援しえんの必要ひつよう」

80代だいの親おやがひきこもる50代だいの子こどもの生活せいかつを支ささえる。

ひきこもりが長期ちょうき化かして、こうした親子おやこが高齢こうれい化かし、社会しゃかいから孤立こりつしていく問題もんだいは、それぞれの年齢ねんれいから「8050問題もんだい」と呼よばれています。

内閣ないかく府ふがことし３月さんがつに公表こうひょうした調査ちょうさでは、40歳さいから64歳さいまでのいわゆる「ひきこもり」の人ひとが、推計すいけい61万まん人にんに上のぼることが初はじめて明あきらかになり、４よん年ねん前まえの調査ちょうさで推計すいけいされた39歳さい以下いかの「ひきこもり」の人数にんずうより多おおくなりました。

また、ひきこもりの期間きかんが「30年ねん以上いじょう」という人ひともいて「長期ちょうき化か」の傾向けいこうも浮き彫うきぼりになっています。

ひきこもりが長期ちょうき化かすると、子こどもが高齢こうれいになって就労しゅうろう支援しえんなどがさらに難むずかしくなり、高齢こうれいの親おやも働はたらくことができなくなって、生活せいかつに困窮こんきゅうしてしまうとされています。

こうした親子おやこはみずから声ごえを上あげづらく、高齢こうれいの親おやへの支援しえんがきっかけになって、初はじめてひきこもりが明あきらかになるケースも多おおいとされていて、複数ふくすうの行政ぎょうせい機関きかんや団体だんたいが連携れんけいして支援しえんにあたる必要ひつよう性せいが指摘してきされています。

8050問題もんだいの名付け親なづけおやで、大阪おおさか・豊中とよなか市し社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎ会かいの勝部かつべ麗子れいこさんは「親おやが高齢こうれいになると、ひきこもりを解決かいけつしようという気力きりょくが失うしなわれ、誰だれにも相談そうだんできないまま孤立こりつを深ふかめていく。学校がっこうでの不ふ登校とうこうやいじめなど、ひきこもりにつながる芽めを早期そうきにつかんで、長期ちょうき化かする前まえに行政ぎょうせいや学校がっこうなどが連携れんけいして支援しえんする必要ひつようがある」と話はなしていました。