“病院びょういん再編さいへん” 全国ぜんこく424病院びょういん 実名じつめい公表こうひょうで広ひろがる波紋はもん 各地かくちの声こえは

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは、９月くがつ、全国ぜんこくの公立こうりつ病院びょういんなどのうち、再編さいへんや統合とうごうを議論ぎろんすべきだとする全国ぜんこく424の病院びょういんについて実名じつめいを公表こうひょうしました。

国くにが病院びょういんの再編さいへんの議論ぎろんを進すすめようとする背景はいけいには、深刻しんこく化かする医師いしや看護かんご師しの不足ふそくや、赤字あかじの公立こうりつ病院びょういんに支出ししゅつしている公費こうひがおよそ8000億おく円えんにまで膨ふくらんでいることなどがあります。

ただ、今回こんかい、病院びょういんの実名じつめいが突然とつぜん、公表こうひょうされたことに、各地かくちから、強つよい反発はんぱつの声こえがあがっています。

再編さいへんの議論ぎろんが必要ひつようだと公表こうひょうされた病院びょういんの中なかには、なかなか受うけられない特別とくべつな医療いりょうを行おこなっているところや、経営けいえい改善かいぜんで黒字くろじになろうとしているところも含ふくまれています。

波紋はもんが広ひろがる各地かくちの現場げんばでは、いまどのような声こえが上あがっているのでしょうか。

国くにが各地かくちで意見いけん交換こうかん会かい

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは29日にち、都内とないで、関東かんとう甲信越こうしんえつの１いち都と９きゅう県けんの担当たんとう者しゃとの意見いけん交換こうかん会かいを開ひらきました。

この中なかで長野ながの県けんの公的こうてき病院びょういんの統括とうかつ院長いんちょうは、「地方ちほうの病院びょういんは民間みんかん病院びょういんでは採算さいさんがとれない医療いりょうを提供ていきょうして住民じゅうみんたちの暮くらしを必死ひっしに守まもっている。今回こんかいの公表こうひょうはそうした病院びょういんに統廃合とうはいごうを迫せまるもので、『地方ちほうに人ひとが住すむ必要ひつようはない』と言いっているように聞きこえる」などと話はなし、再編さいへんや統合とうごうの議論ぎろんが必要ひつような病院びょういんの対象たいしょうをもう一度もういちど見直みなおすべきだと訴うったえました。

一方いっぽう、厚生こうせい労働ろうどう省しょうの担当たんとう者しゃは「唐突とうとつな公表こうひょうとなり心配しんぱいをかけたことは反省はんせいしている」とした上うえで、病院びょういん名めいを公表こうひょうしたのは地域ちいきでの議論ぎろんを活性かっせい化かすることが目的もくてきで、結論けつろんを決きめつけるものではないと説明せつめいしました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうによる意見いけん交換こうかん会かいは、全国ぜんこく７ななか所かしょで順次じゅんじ開ひらかれ、今月こんげつ17日にちに福岡ふくおか市しで開ひらかれた意見いけん交換こうかん会かいでは、出席しゅっせき者しゃから「地域ちいきの医療いりょう実態じったいを無視むしした機械きかい的てきな公表こうひょうで、撤回てっかいを求もとめる」といった批判ひはんも出だされました。

そもそも国くには何なにを判断はんだん材料ざいりょうに公表こうひょう？

そもそも、“再編さいへんが必要ひつよう”だとして公表こうひょうされた424の病院びょういんは、何なにを判断はんだん材料ざいりょうに選えらばれたのでしょうか。

▼１ひとつは、「がんや周しゅう産さん期き、それに救急きゅうきゅうなどの領域りょういきで診療しんりょう実績じっせきが特とくに少すくないこと」。

▼そして、もう１ひとつは、「近隣きんりんに似にたような機能きのうを持もつ医療いりょう機関きかんがあること」です。

このどちらか１ひとつでもあてはまった病院びょういんが、公表こうひょうの対象たいしょうとなりました。

公表こうひょうされた病院びょういん（１いち）“ここだけ”の特別とくべつな医療いりょうも

ただ、公表こうひょうされた病院びょういんの中なかには、この２ふたつの要素ようそだけでははかることができない病院びょういんも含ふくまれています。

その１ひとつが、福岡ふくおか県けん新宮しんぐう町まちの「福岡ふくおか県けんこども療育りょういくセンター新光しんこう園えん」です。

この療育りょういくセンターでは、手足てあしの筋肉きんにくが動うごかしづらいなど体からだに機能きのう障害しょうがいのある子こどもたちの治療ちりょうや運動うんどう訓練くんれんを行おこなっているほか、脳性のうせいまひの子こどもたちの整形せいけい外科げか手術しゅじゅつなどを行おこなっています。

子こどもの療育りょういくセンターであるため、今回こんかい、厚生こうせい労働ろうどう省しょうが判断はんだん材料ざいりょうとした、がんや脳卒中のうそっちゅうなどの診療しんりょう実績じっせきは全まったくありません。

１いち日にちにおよそ30人にんの子こどもたちが利用りようしていますが、保護ほご者しゃや医師いしからは戸惑とまどいや不安ふあんの声こえがあがっています。

療育りょういくセンターの園長えんちょうは、「急きゅうな発表はっぴょうで、いらない混乱こんらんを招まねき、保護ほご者しゃもスタッフも心配しんぱいしている。県内けんない全域ぜんいきから利用りようがあり、病院びょういんが続つづくように頑張がんばれるだけ頑張がんばりたい」と話はなしています。

公表こうひょうされた病院びょういん（２に）経営けいえい改善かいぜんで黒字くろじ化か目前もくぜんも

病院びょういん改革かいかくを進すすめて、黒字くろじ化かが見込みこまれている病院びょういんも、公表こうひょうの対象たいしょうとなりました。

石川いしかわ県けん志賀しか町まちの富来とぎ（とぎ）病院びょういんです。

人口じんこう減少げんしょうと高齢こうれい化かの影響えいきょうで赤字あかじが続つづいていたこの病院びょういんは、２に年ねん前まえから、経営けいえい改善かいぜんを進すすめてきました。

その１ひとつが、ことし１月いちがつに全国ぜんこくの公立こうりつ病院びょういんで初はじめて開設かいせつしたという「介護かいご医療いりょう院いん」です。これは、医療いりょうも提供ていきょうできる院内いんないにある介護かいご施設しせつのことで、地域ちいきからのニーズも多おおいといいます。

こうした取り組とりくみで去年きょねんまでおよそ60％だった病床びょうしょうの利用りよう率りつは、今年度こんねんどは90％前後ぜんごまで回復かいふくし、今年度こんねんどは開業かいぎょう以来いらい初はじめての黒字くろじ化かを見込みこんでいるということです。

病院びょういん長ちょうは「病院びょういん改革かいかくで、病院びょういんが良よくなってきている中なかの今回こんかいの公表こうひょうにおどろきました。今後こんごも絶対ぜったいになくしてはならない不可欠ふかけつな病院びょういんだと思おもっています」と話はなしています。

国くにが病院びょういん再編さいへん急いそぐ背景はいけいは

国くにが再編さいへんや統合とうごうの議論ぎろんが必要ひつような公立こうりつ病院びょういんなどを公表こうひょうしたのは今回こんかいが初はじめてです。

国くにが再編さいへんや統合とうごうの議論ぎろんを進すすめようとする背景はいけいには次つぎのような事情じじょうがあります。

▼１ひとつは、多おおくの公立こうりつ病院びょういんが深刻しんこくな「赤字あかじ経営けいえい」に陥おちいり、公費こうひの負担ふたんが増ましていることです。全国ぜんこくの自治体じちたいが負担ふたんしている繰入金くりいれきんの総額そうがくは年間ねんかんおよそ8000億おく円えんにものぼっています。

▼また、特とくに地方ちほうの病院びょういんで深刻しんこく化かしている医師いしや看護かんご師しなどの人手ひとで不足ふそくがあります。国くには、病院びょういんの再編さいへんや統合とうごうによって集約しゅうやく化かを図はかることができ、医療いりょうの質しつを担保たんぽできるとしています。

地域ちいきに手てを上あげてもらい国くにが支援しえんを

各地かくちの反発はんぱつを招まねいている今回こんかいの病院びょういん名めいの公表こうひょうについて、専門せんもん家かはどうみているのか。

病院びょういんの再編さいへん・統合とうごうに詳くわしい城西じょうさい大学だいがくの伊関いせき友とも伸しん教授きょうじゅは、「予告よこくなく名前なまえを公表こうひょうしたのは乱暴らんぼうなやり方やりかたで、『この病院びょういんはなくなるのか』と患者かんじゃなどに不安ふあんを与あたえてしまった。風評ふうひょうが広ひろがれば、医師いしが病院びょういんから離はなれることにつながりかねず、反発はんぱつを招まねいたのではないか」と指摘してきしています。

また、データを示しめして再編さいへん・統合とうごうを議論ぎろんすることは決けっして悪わるいことではないが、都市とし部ぶと地方ちほうでは、全まったく事情じじょうが異ことなることにも留意りゅういすべきだとしています。

では、どのように議論ぎろんを進すすめるのがよいのか。

伊関いせき教授きょうじゅは、「地域ちいきや自治体じちたいが主体しゅたいとなって再編さいへんの対象たいしょうとなる病院びょういんを決きめ、手てをあげてもらって国くにが支援しえんする進め方すすめかたが望のぞましい」と話はなしています。