「質問権」の行使は、この規定ができて以来、初めてです。文部科学省は、旧統一教会や信者の不法行為を認めた民事裁判の判決が22件あり、賠償額が少なくとも14億円になることなどを根拠に「質問権」の行使に向けた準備を進めてきました。今後、旧統一教会の報告などを受け、「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」など解散命令に該当しうる事実関係を把握した場合、裁判所への請求を検討することにしています。
実際に「質問権」を行使するかの判断は「客観的な根拠」に基づくとしています。公的機関の判断や公的機関に具体的な資料とともに寄せられた情報が根拠になるとしています。
なぜ基準が必要なのか、そして今回のポイントはどこにあるのか、宗教法人法に詳しい近畿大学の田近肇教授に取材しました。 Q. なぜ基準をつくることから始めたのでしょうか? A. 「質問権」が、これまで一度も使われたことがないからです。「質問権」という仕組みは、1995年にオウム真理教の地下鉄サリン事件が起きたあとに新しく定められたものですが、それから27年たった今まで使われてきませんでした。今回、旧統一教会に対して「質問権」を行使した場合、これが初めての例になるため、「そもそも質問権はどういう場合に行使することができるのか」ということについて、考え方を整理することになったのだと思います。 Q. 決まった基準で、注目するポイントは? A. 判断の根拠についてです。宗教法人法が定めている解散事由に該当する疑いがあるかどうかを判断する根拠として、専門家会議は以下の場合を挙げました。 (1)宗教法人に属する人の法令違反や法人の法的責任を認める公的機関の判断 (2)公的機関に寄せられた情報で、具体的な資料や根拠があるもの (1)にある「法的責任」はおそらく、民法の不法行為を念頭に置いていると思います。 (2)は、宗教法人の違法行為が刑事や民事の裁判になる前の段階でも、質問権を行使することができるということを意味しています。 今回の基準で、質問権を行使することのできる範囲が、従来と比べて格段に広くなったといえます。 Q. 解散命令の請求をしやすくなったということですか? A. 質問権を行使するハードルは下がったかもしれません。しかし質問権と解散命令の請求については分けて考える必要があります。解散命令の請求にあたっては、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」など、要件を満たしていると証明する必要があります。それらの証明をするまでの、入り口のハードルが下がったからといって、最後の部分のハードルは変わっていないと思います。 Q. 今後の焦点は? A. この基準をもとに、どのような運用がされるかということです。宗教法人が適正に運営されるように調査することが大事な一方で、行政機関がむやみに権限を行使して信教の自由を損なうことがあってはならなりません。そのバランスが重要です。新たな基準ができたので、所轄する行政機関は政治に左右されることなく、法律上の問題として判断をしていくべきだと思います。
Q. 質問したあとはどうなる? A. 文部科学省は、解散命令に該当しうる事実関係を把握した場合、調査の途中でも地方裁判所への解散命令の請求を検討するとしています。請求があった場合、地方裁判所は、文部科学省や旧統一教会から意見を聞いたうえで、解散命令を出すかどうか判断します。文部科学省や旧統一教会は、裁判所の判断に不服がある場合、高等裁判所や最高裁判所に申し立てることができます。 Q. 解散命令が出されたらどうなるのか? A. 宗教上の行為が禁止されるわけではありません。ただ、宗教法人は解散となり、固定資産税の非課税などの優遇措置が受けられなくなったり、財産を処分しなければならなくなったりします。 Q. 質問権が行使は初めて。どこに注目すべきか? A. 信教の自由を守りながら、宗教法人の活動にどこまで介入できるのか、そして解散命令請求につながるものが見つかるのかが重要な焦点になりそうです。
行使の対象は
なぜ基準が必要?ポイントを専門家が説明
「質問権」の行使今後想定される動き
「質問権」の行使は平成8年にこの規定ができて以来、初めてです。
21日の宗教法人審議会で旧統一教会への「質問権」の行使について「相当」だとする答申が出されたことを受け、永岡文部科学大臣は22日、「旧統一教会に本日、通知を発出する」と述べました。
その後、担当の職員が旧統一教会に書類を発送し、宗教法人法に基づく「質問権」を行使したと発表しました。
文部科学省によりますと、旧統一教会には組織運営に関する文書や収支、財産に関する書類・帳簿を12月9日までに提出するように求めたということです。
質問権とは