仁王寺のお坊さんとふき味噌
昔、福島県の仁王寺に、尊貞法印というお坊さんがいました。このお坊さんは、よく失敗をして、村の人たちを笑わせていました。たとえば、親切な人のお願いいを断ることができず、反対の方向に行く馬に乗せられたり、夜、歩いているときに頭に柿が落ちてきて、びっくりして寝込んでしまったりしました。また、雨の音を自分のおしっこの音と間違えて、朝までトイレに立っていたこともありました。だから、村の人たちはこのお坊さんが大好きでした。
ある春の日、お彼岸で檀家の家を回っていたとき、お婆さんが「ふき味噌」を出しました。ふき味噌は、ふきのとうが入った少し苦い味噌です。お坊さんはふき味噌が好きではありませんでしたが、すすめられて全部食べてしまいました。それを見たお婆さんは、お坊さんがふき味噌が大好きだと思い、村中に話しました。その後、お坊さんはどこに行ってもふき味噌ばかり出され、食べすぎて倒れてしまいました。この話は今でも村で伝えられています。