はじめに乗ったのは、先頭から5両目の車両。
すぐに4両目に移り、座っていた20歳の女子大学生の背中などを無言で刺したあと、3人の乗客を立て続けに切りつけたということです。
さらに、刃物を振り回しながら車両内を移動したため、別の6人の乗客も刃物が当たったり転倒したりしてけがをしました。
その後、4両目から3両目に移る直前に刃物の柄が折れ、容疑者は刃物をその場に捨てて3両目に移ったということです。
そして3両目で容疑者が取り出したのは料理用の油でした。
車両の床にまき、大型のライターで火を付けようとしましたが、失敗したということです。
容疑者はさらに2両目に移りましたが、そこで電車が緊急停止。
集まっていた乗客がドアコックを開けて一斉に車外へ逃げ出すと、容疑者も外へ出たうえでスマートフォンを乗客に投げつけ、そのまま逃走したということです。
容疑者は当時、牛刀や油、大型のライターに加えハサミも所持していたということで、調べに対し「ハサミは予備のために持っていた」と供述しているということです。
警視庁によりますと、對馬容疑者は事件当日の昼ごろ、新宿区西新宿にある食料品店を訪れ、ベーコンなどを万引きしたということです。 それに気付いた女性店員が本人に注意するとともに通報し、警察官が駆けつけましたが、その際、カッターナイフを所持しているのが見つかりました。 このため、警察署で事情を聴いたうえで川崎市の自宅まで送り届けましたが、容疑者は午後7時すぎに牛刀などを持って自宅の最寄りの京王よみうりランド駅に向かい、そこから電車に乗ったということです。 この時の心境について、容疑者は調べに対し「女性店員への怒りが湧き、殺してやりたいという感情が芽生えた。しかし、店がすでに閉まっている時間だったので、代わりに電車の中で人を大量に殺そうと思った」と供述しているということです。 また、事件の後、身柄を確保されるまでの行動については「途中で自転車を盗んで逃走した。コンビニエンスストアを見つけた時、『疲れた。これ以上人は殺せない』と考え、店員に声をかけた」などと供述しているということです。
神奈川県に住む40代の男性は新宿行きの快速急行の先頭から3両目の車両に乗っていました。 当時は座席が8割ほど埋まる程度で立っている人はほとんどいなかったといいます。 男性も座席に座っていましたが、午後8時半ごろ数メートル離れたところで突然乗客の叫び声が聞こえました。 その直後、叫び声が聞こえた後方の車両から多くの乗客が駆け込んできたということです。 その乗客の奥に見えたのが刃物を持った男でした。 男性は「刃物を持った男が見えた瞬間『やばい』と思い、とっさに逃げた」と話しています。 しかし、逃げた際に乗客がドミノ倒しのような状態になり、男性もその場で転倒したということです。 腰を打って立ち上がれなくなり靴も脱げてしまったということですが、はいつくばるようにして必死に逃げたといいます。 当時の状況について男性は「ほかの乗客よりも逃げ遅れてしまい、このままでは死ぬかもしれないと思った」と話しています。 男性によりますと、この時すぐ近くで男が床に液体をまいている様子を目撃したということです。 逮捕された容疑者は床に料理用の油をまき、大型のライターで火を付けようとしたことが分かっていて、男性は「とても冷静な様子でまいていた。もし火が付いていたら死んでいたと思う」と話していました。 男性はそのままはって先頭の車両まで逃げたあと救助され、腰などを打つけがをして病院に搬送されたということです。 搬送される直前に男性がスマートフォンで撮影した動画には容疑者が持ち込んだとみられる刃物や大型のライターそれにハサミが床に落ちている様子が確認できます。 男性は「とにかく逃げるのに必死だったが、事件の直後は自分もどこかを刺されているのではないかと怖かった。今は事件のことはなるべく考えないようにしているが、再び電車に乗る時どんな気持ちになるのか不安だ。犯人のことは許せない」と話していました。
容疑者の足取り
電車に乗っていた男性「死ぬかもしれないと思った」