ワクチンデマに不安ふあん感かんじた妊婦にんぷ 考かんがえ変かわり接種せっしゅしたきっかけは

アメリカでは去年きょねん12月つきからワクチンの接種せっしゅが始はじまりましたが、妊娠にんしん中ちゅうにワクチンを打うつことにマリさんには迷まよいがありました。

去年きょねん12月つきごろから、SNSを中心ちゅうしんに、「ワクチンを製造せいぞうするファイザー社しゃの元もと職員しょくいんが『ワクチンによって体内たいないでつくられた抗体こうたいが胎盤たいばんのたんぱく質たんぱくしつに悪あく影響えいきょうを与あたえ、不妊ふにんになる可能かのう性せいがある』などと述のべた」とする情報じょうほうが広ひろがっていたからです。

根拠こんきょのない誤あやま情報じょうほうにもかかわらず、ネット上じょうでは広ひろく拡散かくさんし、最初さいしょは英語えいご圏けんで、その後そのご日本にっぽんでも広ひろまっていました。

“ワクチンが不妊ふにんや流産りゅうざんの原因げんいんになる”とするデマも、Twitterのタイムラインにたびたび流ながれてきました。

マリさんがフォローしている人ひとたちも「いいね」や「リツイート」をしていました。

デマだと思おもっていても、早産そうざんや流産りゅうざんになるリスクはやはり怖こわく、感染かんせんリスクが低ひくいのであれば「打うたない方ほうがいいのではないか」と思おもったのです。

一緒いっしょに暮くらす夫おっとはワクチンを接種せっしゅすることにしましたが、妊娠にんしん中ちゅうのマリさんの身みを案あんじて「やめておこう」と話はなしていたそうです。

「こびナビ」は、感染かんせん症しょう専門医せんもんいやウイルス研究けんきゅう者しゃ、公衆こうしゅう衛生えいせいの専門せんもん家かなど30人にんほどがボランティアで参加さんかしていて、ウェブサイトやSNSをフル活用かつようし、ワクチンの有効ゆうこう性せいや副ふく反応はんのうなど、科学かがく的てき根拠こんきょに基もとづいた情報じょうほうを毎日まいにち発信はっしんし続つづけています。

マリさんが見みたのは、「こびナビ」のメンバーのひとり、内田うちだ舞まい医師いしが、妊娠にんしん中ちゅうの女性じょせいに向むけて発信はっしんした動画どうがでした。

内田うちだ医師いし

「“なんとなく怖こわいから何なにもしない”、すなわち“ワクチンを接種せっしゅしない”という選択せんたくにも、大おおきなリスクがあることを忘わすれてはなりません」

その詳くわしい理由りゆうを内田うちだ医師いしに改あらためて解説かいせつしてもらいました。

「ワクチンを接種せっしゅすることによって、新型しんがたコロナウイルスの周まわりを囲かこむ『スパイクたんぱく質たんぱくしつ』に対にたいする抗体こうたいができます。デマの元もとになったのは、この『スパイクたんぱく質たんぱくしつ』と『胎盤たいばんを構成こうせいしているたんぱく質たんぱくしつ』が似にているため、抗体こうたいが胎盤たいばんに対にたいしても反応はんのうするのではという説せつでした。しかし、検証けんしょうの結果けっか、2つのたんぱく質たんぱくしつは全まったく似にておらず、胎盤たいばんに悪あく影響えいきょうを与あたえることはないことが分わかっています」

「流産りゅうざんについては、アメリカでは妊娠にんしん中ちゅうにワクチンを接種せっしゅした人ひと3万まん人にん以上いじょうを対象たいしょうとした調査ちょうさが行おこなわれ、コロナの流行りゅうこう以前いぜんの一般いっぱん的てきな流産りゅうざん率りつ15～20％に対にたいして、ワクチン接種せっしゅ後ごの流産りゅうざん率りつは12.6％という結果けっかが出でています（CDC・米べい疾病しっぺい対策たいさくセンターの最新さいしんの論文ろんぶんより）。実際じっさいにワクチンが原因げんいんで流産りゅうざんが増ふえていることはないと確認かくにんされています」

「また不妊ふにんについては、ワクチンの臨床りんしょう試験しけん中ちゅうにワクチンを接種せっしゅしたグループと、プラセボ（偽薬ぎやく）を接種せっしゅしたグループを比較ひかくしたところ、妊娠にんしんする確率かくりつは全まったく同おなじだったことが分わかっています。新型しんがたコロナワクチンが流産りゅうざんや不妊ふにんを起おこすという科学かがく的てき根拠こんきょはありません」

その多おおくは不安ふあんを訴うったえる女性じょせいたちの声こえで、それを読よんだ内田うちだ医師いしは、改あらためてデマの悪質あくしつさを感かんじたと言いいます。

内田うちだ医師いし

「ほとんどの不妊ふにんや流産りゅうざんは、何なにかをしたり、しなかったりで確率かくりつが増ふえることはほとんどありません。それでも不妊ふにんや流産りゅうざんを経験けいけんされた方々かたがたは、自分じぶんを責せめることが非常ひじょうに多おおいんですよね。私わたしもその気持きもちはすごくよくわかります。そうした心こころの弱よわいところを突ついてくる意地悪いじわるなデマだなと思おもいます」