《日本の反応》
石破首相「日米の協力関係を強化」
アメリカのトランプ新大統領の就任を受けて、石破総理大臣は21日午前2時、旧ツイッターの「X」にお祝いのメッセージを投稿しました。
この中では、「トランプ大統領のご就任に心からお祝い申し上げます。日米の協力関係を強化し『自由で開かれたインド太平洋』という共通の目標の実現を共に追求していくため、トランプ大統領と連携していきたいと思います」と日本語と英語でつづっています。
経団連 十倉会長「予見可能性高く企業安心できる環境を」
経団連の十倉会長は「アメリカの力強い経済とリーダーシップは、世界経済の安定と発展に欠かせない。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持するために、アメリカが引き続き日本と連携し、主導的な役割を果たすことを強く希望する」というコメントを発表しました。
そのうえで、「今後も両国間の貿易・投資の促進を通じて、強固な日米経済関係が一層発展していくことを期待する。アメリカ政府においては、予見可能性が高く、企業が安心して投資できる環境の整備を望む。経団連は、日本企業の継続的な投資や雇用創出を通じたアメリカの経済成長への貢献を推進し、日米経済関係の一層の強化を図っていきたい」としています。
《世界各国の反応》
ゼレンスキー大統領「問題解決に向けた希望の日」
ウクライナのゼレンスキー大統領は、アメリカのトランプ氏の就任式に合わせてSNSに投稿し、「きょうは変化の日であり、世界的な課題を含む多くの問題の解決に向けた希望の日でもある」と述べて祝意を示しました。
その上で、「トランプ大統領は常に決断力に優れ、彼が掲げる『力による平和』の政策は、アメリカのリーダーシップを強化し、最優先事項である長期的で公正な平和を実現するための機会を提供するものだ」と述べ、ロシアによるウクライナ侵攻を止め平和をもたらす上でトランプ大統領が指導力を発揮することに期待を示しました。
ウクライナでは、各テレビ局がトランプ氏の演説を生中継し、その内容に大きな関心が寄せられました。
ただ、一部のメディアはトランプ氏の演説の内容を詳しく伝える一方で、ウクライナ情勢にはひと言も触れられなかったと指摘しています。
プーチン大統領「決して対話を諦めていない」
ロシアのプーチン大統領は20日に開いた安全保障会議で、アメリカでトランプ政権が発足することについて、「第3次世界大戦を防ぐために、あらゆる手段を尽くす必要性があるとする彼の発言も聞いた。われわれはこのような姿勢を歓迎し、アメリカ大統領への就任を祝福する」と述べました。
その上で、「われわれは決して対話を諦めていないと強調したい。戦略的な安定と安全保障の強化を含む多くの世界的な課題においてロシアとアメリカが果たしている重要な役割を考慮し、対話が対等かつ相互を尊重する基盤の上に築かれることを前提としたい」と指摘しました。
トルドー首相「国境の両側で雇用を創出」
カナダのトルドー首相は20日、声明を発表し、「カナダとアメリカには世界で最も成功した経済的なパートナーシップがある。ともに大規模な投資を行って、国境を越えた貿易を促進してサプライチェーンを強化し、国境の両側で雇用を創出していく」としています。
その上で、「カナダ国民の利益を守りながら、トランプ大統領やその政権、連邦議会の議員、それに、州や地方レベルの当局者と協力して、両国民に繁栄をもたらすことを楽しみにしている」と述べています。
トランプ大統領がカナダやメキシコからのすべての輸入品に25%の関税を課す考えを明らかにするなか、トルドー首相としては両国の活発な経済交流がアメリカの雇用創出にもつながることを訴え、トランプ大統領に一方的な関税政策の見直しを求めるねらいがあるとみられます。
ネタニヤフ首相「人質解放への努力に感謝」
イスラエルのネタニヤフ首相はトランプ大統領の就任式にあわせて声明を発表し、「あなたの指導力のもと、これからわれわれの同盟関係の最良の日が訪れることを確信している」と祝意を示しました。
また、アメリカや仲介国の働きかけでガザ地区で6週間の停戦が実現し、19日にはイスラム組織ハマスに拘束されていた3人の人質が解放されたことについて、「人質の解放につなげてくれた努力に感謝する。残る人質を解放しハマスの軍事力を壊滅し、ガザ地区でのハマス支配を終わらせるためにともに働くことを心待ちにしている」としています。
ロンドン トランプ氏に反対する横断幕やプラカード
トランプ大統領の就任式を前にイギリスの首都ロンドンでは20日、中心部を流れるテムズ川の川岸に「トランプ・気候の集団虐殺」と書かれた巨大な横断幕が掲げられました。
トランプ政権が気候変動対策に消極的だと懸念する環境活動家たちが掲げたものと見られます。
また、首相官邸前には、トランプ大統領の方針に反対して、移民の保護や女性の人工妊娠中絶の権利、それに地球温暖化対策の強化を求める団体などのメンバーなどおよそ200人が集まりました。
集会の参加者たちは「トランプにノー」などと書かれたプラカードを掲げ、トランプ政権のもとで女性や移民などの人権が軽視されたり、環境保護より企業活動を優先させる風潮が加速したりするおそれがあると訴えました。
主催者の女性は「トランプ氏の大統領就任がどんな脅威をもたらすか、誰でも理解できるはずだ。私たちは人間として声をあげ、反対する義務がある」と話していました。
イギリスでは、スターマー首相率いる与党・労働党がアメリカの民主党と近い関係にあり、政府内でもトランプ大統領の政策に対する警戒感が高まっています。
ハンガリー 首都中心部で就任祝う催し
アメリカのトランプ大統領と首相が良好な関係を築いている東ヨーロッパのハンガリーでは、大勢の人が集まって就任を祝う催しが開かれ、トランプ氏の就任でロシアによるウクライナ侵攻が早期終結に向かうよう期待する声が聞かれました。
ハンガリーの首都ブダペストの中心部の広場では20日、トランプ大統領の就任を祝う催しが開かれ、およそ200人が大型スクリーンで中継映像を見守りました。
参加者のなかには「アメリカを再び偉大に」というスローガンが書かれた帽子をかぶった人の姿もみられました。
ハンガリーのオルバン首相は、ロシアのウクライナ侵攻を巡り早期の終結を求めていて、立場が同じトランプ氏と良好な関係を構築しています。
参加者には首相の支持者が多く、このうち60代の男性は「トランプ氏はできる限りすみやかに侵攻を終わらせるだろう」と話していました。
また、70代の男性は「トランプ氏は世界中で強い影響力を持ち、すばらしいアイデアも持っている。ヨーロッパも含めてさまざまな変化をもたらすだろう」と話していました。
ムリーノ大統領「運河はパナマのもの」
トランプ氏が就任演説で「パナマ運河を取り戻す」と発言したことについて、パナマのムリーノ大統領は20日、SNSで声明を発表し、「パナマと国民を代表して、トランプ氏の発言を完全に拒否しなければならない。運河はパナマのものであり、その管理は引き続きパナマのもとで行われる」と反発しました。
また、トランプ氏は「パナマ運河は中国が運営している」とも述べましたが、ムリーノ大統領は、「パナマによる管理を妨げる国は存在しない」と改めて否定しました。
ウクライナ人道支援団体「トランプ氏無視できない」
スイスで開かれている「ダボス会議」の会場周辺では、ウクライナの人道支援団体などが展示場を設けてトランプ氏の就任式の様子を大型モニターで流し、およそ100人が就任演説に耳を傾けました。
トランプ氏は選挙戦でロシアによるウクライナ侵攻を早期に終結させると意欲を示してきましたが、今回の就任演説ではウクライナ情勢への言及は無く、「平和の使者であり、団結を促す人物でありたい」と述べるにとどまりました。
就任演説が終わったあと、展示場を設置したウクライナの人道支援団体のジョンソン代表は「トランプ氏がロシアによるウクライナ侵攻の問題をどのように解決したいのかは誰にもわからない。ウクライナ人にとって事態を楽観的に見ていいのか、悲観的に見ていいのか、わからない。ただ、この戦争がどこに向かおうともウクライナはトランプ氏を無視できず、向き合わなければならない」と複雑な胸の内をのぞかせていました。
また、東部マリウポリ出身で、ロシアによる侵攻で親戚を亡くしたという女性は「トランプ氏はウクライナ侵攻に関して行動すると公言していたので何かが起きると期待している」と話していました。
シェインバウム大統領 メキシコ人強制送還に警戒感
トランプ大統領の就任を受けてメキシコのシェインバウム大統領は20日、SNSに投稿し、「お祝いを申し上げる。隣国として、また貿易パートナーとして、対話、尊敬、協力はわれわれの関係の証だ」と祝意を示しました。
一方で、シェインバウム大統領は就任式に先だって警戒感も示しています。
20日の会見でトランプ氏が不法移民対策として掲げる強制送還作戦に関し、アメリカ国内に住むメキシコ人に向けて領事館などの電話番号などをあらかじめ把握しておくよう呼びかけた上で、「私たちはみな冷静であるべきだ」と述べました。
そのうえで、トランプ政権によるメキシコ人の強制送還を警戒してシェルターなどの準備を進めているとして、「我々にはプランA、プランB、プランC、プランD、プランEがある」と述べて備えは万全だと強調しました。
また、トランプ大統領の就任式が行われていたころ、首都メキシコシティーでは移民の権利問題に取り組む団体がトランプ氏に抗議するパフォーマンスを行いました。
団体のメンバーはメガホンを使って「トランプ氏は移民の強制送還について考え直すべきだ」と声明を読み上げたあと、トランプ大統領に似せてつくった「ピニャータ」と呼ばれるメキシコの伝統的な紙の人形を棒でたたいて壊し、火をつけて燃やしました。
団体の代表は「アメリカは私たちのことを嫌っているが、我々だって同じだ。しかし彼らには私たちの労働力が必要なはずだ」と話していました。
メローニ首相「イタリアは常に米欧の対話強化に力尽くす」
アメリカのトランプ新大統領の就任式には各国の右派政党の代表なども多く招待され、G7=主要7か国の首脳としてはただ一人、イタリアで右派政党を率いるメローニ首相が出席しました。
メローニ首相は就任式のあとSNSに投稿し、「イタリアは常にアメリカとヨーロッパとの対話の強化に力を尽くす」と述べるとともに、トランプ大統領とのツーショット写真も掲載し、親密さをアピールしました。
メローニ首相は、移民政策などをめぐってトランプ大統領と考え方が近いと指摘されているほか、実業家のイーロン・マスク氏とも親しく、トランプ政権とヨーロッパとの橋渡し役となる可能性もあるという見方が出ています。