日本にっぽん版ばんＧＰＳ衛星えいせい「みちびき」 きょうから本格ほんかく運用うんよう

「みちびき」は、アメリカのＧＰＳ衛星えいせいを補完ほかんする信号しんごうを出だし、少すくなくとも常つねに１いち機きは、日本にっぽんのほぼ真上まうえに来くる軌道きどうを飛とんでいます。

これまでは、都市とし部ぶなど高たかい建物たてものがある場所ばしょでは、信号しんごうが遮さえぎられるなどしてスマートフォンやカーナビなどの地図ちず上じょうの自分じぶんの位置いちがずれることがありましたが、ほぼ真上まうえから届とどく「みちびき」の信号しんごうは、ビルで遮さえぎられることがほとんどなく、「みちびき」の信号しんごうに対応たいおうした製品せいひんでは位置いち情報じょうほうがより安定あんていし精度せいどが高たかくなります。

さらに、「みちびき」が出だす「補強ほきょう信号しんごう」と呼よばれる特殊とくしゅな信号しんごうを受信じゅしんできる専用せんようの装置そうちを取り付とりつければ、これまでは最大さいだいで10メートル程度ていどあった誤差ごさを数すうセンチにまで縮ちぢめることができます。

このため、自動車じどうしゃの自動じどう運転うんてんの実用じつよう化かやトラクターやコンバインなど農業のうぎょう機械きかいの無人むじん化か、ドローンによる宅配たくはいサービスの実現じつげんなど、さまざまな分野ぶんやで活用かつようが期待きたいされています。

メーカー各社かくしゃでは、「みちびき」の受信じゅしん装置そうちの販売はんばいを本格ほんかく化かさせているほか、携帯けいたい各社かくしゃも「みちびき」に対応たいおうした機種きしゅをさらに増ふやしていくとしています。

ＧＰＳ衛星えいせい整備せいびを進すすめる理由りゆう

国くにが日本にっぽん版ばんＧＰＳ衛星えいせいの整備せいびを進すすめる理由りゆうの１ひとつは、位置いち情報じょうほうの誤差ごさをできるだけ小ちいさくして、新あたらしい産業さんぎょうの創出そうしゅつや便利べんりな生活せいかつの実現じつげんにつなげるためです。

現在げんざい、日本にっぽんではほぼ地球ちきゅう全体ぜんたいをカバーしているアメリカのＧＰＳ衛星えいせいを主おもに利用りようして位置いち情報じょうほうのサービスが行おこなわれていますが、最大さいだいで10メートル程度ていどの誤差ごさがあります。

誤差ごさの原因げんいんとしては、高たかい建物たてものや山やまなどの障害しょうがい物ぶつがあると信号しんごうが遮さえぎられたり反射はんしゃしたりして、必要ひつような電波でんぱの受信じゅしんができなくなることや、大気たいきの層そうの影響えいきょうで信号しんごうの電波でんぱが乱みだれることなどがあげられます。

４よん機き体制たいせいで運用うんようする「みちびき」は、少すくなくとも常つねに１いち機きは、日本にっぽんのほぼ真上まうえに来くる軌道きどうを飛とんでいるため、建物たてものが密集みっしゅうする都市とし部ぶでもほぼ真上まうえから信号しんごうが届とどき、信号しんごうを受信じゅしんできなかったり乱みだれたりするケースが減へります。

また、「みちびき」は、大気たいきの層そうによる電波でんぱの乱みだれを補正ほせいした「補強ほきょう信号しんごう」と呼よばれる特殊とくしゅな信号しんごうを出だす機能きのうがついているため、高たかい精度せいどの位置いち情報じょうほうを提供ていきょうできるようになり、専用せんようの受信じゅしん装置そうちを使つかえば誤差ごさを数すうセンチまで縮ちぢめることに成功せいこうしました。

また位置いち情報じょうほうを使つかったさまざまなサービスが登場とうじょうする中なか、国くにはインフラの１ひとつとして、海外かいがいに頼たよらない独自どくじのシステムを持もつことが必要ひつようだともしています。

今後こんごも衛星えいせいの打ち上うちあげが計画けいかくされていて、2023年度ねんどには、７なな機き体制たいせいにまで拡充かくじゅうし、アメリカのＧＰＳ衛星えいせいなど海外かいがいのシステムを使つかわなくても位置いち情報じょうほうを提供ていきょうできるようにするということです。

当初とうしょ、アメリカが世界せかいに先駆さきがけて開発かいはつ、導入どうにゅうしたＧＰＳ衛星えいせいの位置いち情報じょうほうシステム。日本にっぽんのほか、ロシア、ヨーロッパ、中国ちゅうごく、それにインドなども衛星えいせいを打ち上うちあげていて、各国かっこく独自どくじにシステムを整備せいびする動うごきは国際こくさい的てきに広ひろがっています。

こんな分野ぶんやで活用かつよう

「みちびき」の特徴とくちょうの１ひとつが「補強ほきょう信号しんごう」と呼よばれる特殊とくしゅな信号しんごうを出だせることです。この補強ほきょう信号しんごうを受信じゅしんすることで高たかい精度せいどの位置いち情報じょうほうを得えることができます。

補強ほきょう信号しんごうの種類しゅるいは２ふたつで、受信じゅしん装置そうちによって１いちメートルから２にメートルの誤差ごさのものと数すうセンチの誤差ごさのものを選えらぶことができます。

誤差ごさが数すうセンチまで縮ちぢまると、例たとえば、田たんぼや畑はたけの中なかを正確せいかくに移動いどうし無人むじんで種たねまきや収穫しゅうかくなどを行おこなうトラクターやコンバインといった農業のうぎょう機械きかいの実用じつよう化かに弾はずみがつき、高齢こうれい化かや人手ひとで不足ふそくの課題かだいを抱かかえる農業のうぎょうの現場げんばを変かえることが期待きたいされています。

さらに危険きけんが伴ともなう工事こうじ現場げんばで求もとめられている自動じどうで動うごく重機じゅうきなどの開発かいはつや、雪ゆきで埋うずもれたガードレールにぶつからないように除雪じょせつができる車両しゃりょうの開発かいはつなども進すすめられています。

また、ドローンで宅配たくはい便びんなどの荷物にもつを運はこぶサービスの実現じつげんには、飛行ひこうコースを外はずれずに目的もくてきの場所ばしょに正確せいかくに着陸ちゃくりくすることが必要ひつようで「みちびき」の高たかい精度せいどの位置いち情報じょうほうが欠かかせないとされています。

このほか、防災ぼうさい分野ぶんやでは「みちびき」の受信じゅしん装置そうちを備そなえたブイを沖合おきあいに設置せっちし、発生はっせいした津波つなみの場所ばしょをより正確せいかくに把握はあくする研究けんきゅうなども始はじまっています。

自動じどう運転うんてんに高たかまる期待きたい

日本にっぽん版ばんＧＰＳ衛星えいせいの「みちびき」の本格ほんかく的てきな運用うんようによって、さまざまな分野ぶんやで私わたしたちの暮くらしや産業さんぎょうを変かえる可能かのう性せいがあります。

このうち、実用じつよう化かが急いそがれている自動じどう運転うんてんの分野ぶんやでも活用かつようが期待きたいされています。位置いち情報じょうほうの精度せいどが高たかまるため、車線しゃせんからはみ出はみださずに走行そうこうができるようになるからです。

大手おおて電機でんきメーカーの三菱みつびし電機でんきは、自動じどう運転うんてんの実証じっしょう実験じっけんを兵庫ひょうご県けん赤穂あこう市しのテストコースで行おこなっています。

自動車じどうしゃには、このメーカーが開発かいはつした「みちびき」の補強ほきょう信号しんごうと呼よばれる特殊とくしゅな信号しんごうを受信じゅしんする専用せんよう装置そうちが取り付とりつけられています。

「みちびき」の運用うんようで、これまでのアメリカのＧＰＳ衛星えいせいだけの場合ばあいに比くらべてどれだけ精度せいどが変かわるのか。パソコンの画面がめんに位置いち情報じょうほうを表示ひょうじしてもらいました。

はじめに、受信じゅしん装置そうちを動うごかさずに位置いち情報じょうほうを示しめしてもらいます。

「みちびき」の受信じゅしん装置そうちは、画面がめんの中央ちゅうおうでほぼ静止せいししたまま、動うごきませんでした。

ところが、ＧＰＳの受信じゅしん装置そうちでは、静止せいししているにもかかわらず、位置いちがずれてしまい、最終さいしゅう的てきには数すうメートルも動うごいてしまいました。

さらに、受信じゅしん装置そうちを２にメートルほど移動いどうさせながら比くらべてみました。

「みちびき」対応たいおうの受信じゅしん装置そうちの表示ひょうじは、まっすぐ進すすんで２にメートル先さきで停止ていししました。しかし、ＧＰＳの受信じゅしん装置そうちでは前後ぜんご左右さゆうにコースがずれてしまいました。

メーカーの担当たんとう者しゃは「受信じゅしん器きは静止せいししているにもかかわらず、誤差ごさで数すうメートルも動うごくと自動車じどうしゃは車線しゃせんを越こえてしまい、自動じどう運転うんてんには到底とうてい使つかえない。『みちびき』の電波でんぱで初はじめて安全あんぜんな自動じどう運転うんてんが実現じつげんできるようになる」と説明せつめいしていました。

続つづいて、実際じっさいに受信じゅしん装置そうちを自動車じどうしゃに取り付とりつけて、人ひとはハンドルを握にぎらず、自動じどう運転うんてんする実験じっけんを見みせてもらいました。道路どうろにポールを並ならべた2.6メートルの幅はばしかない狭せまい道路どうろを走はしります。これまでＧＰＳだけではポールにぶつかり、実験じっけんの安全あんぜんが確保かくほできないとしてこうした走行そうこう実験じっけんは行おこなってこなかったと言いいます。

この日ひ、「みちびき」からの補強ほきょう信号しんごうを受信じゅしんした自動車じどうしゃは、自動じどう運転うんてんでもポールにぶつかることはありませんでした。しかも速度そくどを落おとすことなく直線ちょくせんやカーブを正確せいかくに走行そうこうしました。

内閣ないかく府ふは、２に年ねん後ごの2020年ねんには高速こうそく道路どうろと自動車じどうしゃ専用せんよう道路どうろで自動じどう運転うんてんを実現じつげんするとの目標もくひょうを示しめしています。「みちびき」の本格ほんかく的てきな運用うんようの開始かいしで自動じどう運転うんてんの実用じつよう化かが大おおきく進すすむと関係かんけい者しゃは期待きたいしています。

メーカーの福吉ふくよし清岳きよおか次長じちょうは「誤差ごさが数すうセンチというみちびきの精度せいどは自動じどう運転うんてんには欠かかせない。また、さまざまな自動じどう化かで省力しょうりょく化かが可能かのうになり、まさにこれからの社会しゃかいを“導みちびく”衛星えいせいだ」と話はなしていました。