福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ 千島ちしま海溝かいこう地震じしんで汚染おせん水すい流出りゅうしゅつおそれ 津波つなみ対策たいさく強化きょうかへ

政府せいふの地震じしん調査ちょうさ委員いいん会かいが去年きょねん12月つき、北海道ほっかいどうの沖合おきあいの「千島ちしま海溝かいこう」で起おきる巨大きょだい地震じしんについて「切迫せっぱくしている可能かのう性せいが高たかい」と評価ひょうかしたことを受うけて東京とうきょう電力でんりょくが分析ぶんせきした結果けっか、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつに最大さいだいで10メートル余あまりの津波つなみが押し寄おしよせ汚染おせん水すいが外部がいぶに流出りゅうしゅつするおそれがあることがわかりました。

このため東京とうきょう電力でんりょくは14日にちに開ひらかれた原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいの会合かいごうで、津波つなみによる浸水しんすいの被害ひがいを防ふせぐため建屋たきのやの出入り口でいりぐちなど開口かいこう部ぶを塞ふさぐ工事こうじを前倒まえだおしして進すすめるのに加くわえ、防潮ぼうちょう堤つつみを北側きたがわに延長えんちょうして１いち号機ごうきから４よん号機ごうきの海うみ側がわに作つくることなど津波つなみ対策たいさくを強化きょうかすることを明あきらかにしました。防潮ぼうちょう堤つつみはできるだけ早期そうきに完成かんせいさせたいとしています。

これに対にたいして原子力げんしりょく規制きせい庁ちょうの担当たんとう者しゃからは「防潮ぼうちょう堤つつみの延長えんちょうで廃はい炉ろ作業さぎょうに影響えいきょうがないか検討けんとうしてほしい」といった指摘してきが出だされていました。

福島ふくしま第だい一いち廃はい炉ろ推進すいしんカンパニーの小野おの明あきら代表だいひょうは「津波つなみに襲おそわれれば廃はい炉ろ作業さぎょうのための設備せつびが使つかえなくなってしまい、廃はい炉ろが遅おくれる可能かのう性せいもある。防潮ぼうちょう堤つつみをどこにどういう形かたちで作つくるか、急いそいで検討けんとうしたい」と話はなしていました。

高こう濃度のうど汚染おせん水すいと流出りゅうしゅつリスク

福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつでは、事故じこで溶とけ落おちた核かく燃料ねんりょうを冷ひやすため、原子げんし炉ろに入いれ続つづけている水みずが高こう濃度のうどの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつを含ふくむ汚染おせん水すいとなって原子げんし炉ろ建屋たきのやなどの地下ちかにたまっています。

汚染おせん水すいは建屋たきのやからくみ上くみあげられ、専用せんようの設備せつびで処理しょりされて一部いちぶは原子げんし炉ろに戻もどされますが、そのほかはほとんどの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつが取り除とりのぞかれてタンクに保管ほかんされています。

汚染おせん水すいは日々ひび発生はっせいしていて、処理しょりされる前まえの高こう濃度のうどのものが原子げんし炉ろ建屋たきのや、タービン建屋たきのや、それにプロセス主ぬし建屋たきのやと呼よばれる建物たてものなどの地下ちかにたまっています。

その量りょうはおよそ４よん万まん6000トンに上のぼり、セシウムやストロンチウムなどの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつが高たかい濃度のうどで含ふくまれています。

さらに、プロセス主ぬし建屋たきのやには強つよい放射線ほうしゃせんを出だす廃液はいえきや汚泥おでいなど、およそ600トン保管ほかんされていて、東京とうきょう電力でんりょくは2020年度ねんどまでに高台たかだいに移送いそうする計画けいかくを示しめしています。

高こう濃度のうどの汚染おせん水すいがたまっているこれらの建屋たきのやは、海抜かいばつ8.5メートルの敷地しきちにあります。

このため、10メートルを超こえるような津波つなみが到達とうたつした場合ばあいには建屋たきのやに津波つなみが流れ込ながれこむおそれがあり、引ひき波はによって高こう濃度のうどの汚染おせん水すいや強つよい放射線ほうしゃせんを出だす廃液はいえきなどが海うみに流れ出ながれだすことが懸念けねんされています。

専門せんもん家か「汚染おせん水すいは最大さいだいの懸念けねん」

福島ふくしま第だい一いち原子力げんしりょく発電はつでん所しょに再ふたたび大おおきな津波つなみが押し寄おしよせた場合ばあいに懸念けねんされる高こう濃度のうどの汚染おせん水すいの流出りゅうしゅつについて、日本にっぽん原子力げんしりょく学会がっかいの「廃はい炉ろ検討けんとう委員いいん会かい」の委員いいん長ちょうで、法政大ほうせいだい学がくの宮野みやの廣ひろし客員きゃくいん教授きょうじゅは、「建屋たきのやの地下ちかの汚染おせん水すいは濃度のうどが非常ひじょうに高たかく、それが外そとに出でてしまうということになれば、影響えいきょうは大おおきい」と話はなし、「今いまの福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつのリスクを考かんがえるうえで、環境かんきょうへの影響えいきょうということでは、最大さいだいの懸念けねんの一ひとつだ」と指摘してきしています。

そのうえで津波つなみ対策たいさくについては、「大おおきな津波つなみの場合ばあい、波なみ力りょくで設備せつびが壊こわれることがあるので、どういう影響えいきょうがあるのか、きちんと評価ひょうかして対策たいさくをしないといけない。すべてに対にたいして完璧かんぺきな対策たいさくを取とることはできないが、最悪さいあくな条件じょうけんになったとしても最低さいてい限げん守まもるべきものを決きめて、そこまでは守まもるという対策たいさくを進すすめてほしい」と話はなしていました。

水密すいみつ扉とびらなど開口かいこう部ぶの津波つなみ対策たいさくを急いそぐ

東京とうきょう電力でんりょくはもともと、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつが東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいのときと同どう程度ていどの高たかさおよそ13.5メートルの津波つなみに襲おそわれた場合ばあいなどを想定そうていして、防潮ぼうちょう堤つつみを建設けんせつしたり、建屋たきのやの中なかに津波つなみが流れ込ながれこまないよう開口かいこう部ぶを塞ふさぐなどの対策たいさくを進すすめてきました。

こうした中なか、千島ちしま海溝かいこうの巨大きょだい地震じしんが「切迫せっぱくしている可能かのう性せいが高たかい」との評価ひょうかを受うけ、対策たいさくを前倒まえだおしして進すすめることになりました。

東京とうきょう電力でんりょくはまず、地震じしんに伴ともなう津波つなみの高たかさは最大さいだいで10.1メートルと評価ひょうかしたほか、１いち号機ごうきから４よん号機ごうきの原子げんし炉ろ建屋たきのやなどがある敷地しきちで、最大さいだいおよそ1.8メートルの高たかさまで浸水しんすいするおそれがあると評価ひょうかしました。

１いち号機ごうきから4号機ごうきの建屋たきのやには、設備せつびや機器ききを運び込はこびこむ入り口いりくちや空気くうきを取り入とりいれ口ぐちなどの開口かいこう部ぶが合あわせて122あります。

現場げんばでは大おおきな水密すいみつ扉とびらの設置せっちなど開口かいこう部ぶを塞ふさぐ作業さぎょうが進すすめられていますが、これまでに作業さぎょうを終おえたのは61か所かしょにとどまっています。

このため、現在げんざい予定よていしている26か所かしょの開口かいこう部ぶを塞ふさぐ工事こうじのうち、６ろくか所かしょは年度ねんど内ないに作業さぎょうを終おえ、残のこりの20か所かしょは半年はんとし程度ていど前倒まえだおしするなどして、2020年度ねんど上期かみきまでに完了かんりょうさせることにしています。

このほか、22か所かしょについては工事こうじを検討けんとうしています。

しかし、現場げんばの放射線ほうしゃせん量りょうが高たかく作業さぎょうが行おこなえない場所ばしょが13か所かしょあり、今後こんご対応たいおうを検討けんとうしたいとしています。