捜索を受けているのは大手医薬品卸会社の「メディセオ」「アルフレッサ」「東邦薬品」「スズケン」の4社の本社などです。
関係者によりますと、4社は独立行政法人「地域医療機能推進機構」がおととし6月に発注した医薬品の入札などで、あらかじめ受注業者の割りふりを決める談合を行った疑いがあるということです。
おととしの入札では機構が全国で運営している57の病院の2年分の医薬品が発注され、4社の受注総額はおよそ740億円に上っています。
医薬品の「薬価」は国が病院などへの卸売価格を調べて改定していますが、卸売価格が下がれば薬価も下がるため、4社が談合によって薬価を高止まりさせ、利益を確保しようとした疑いもあるということです。
医薬品の市場規模はおよそ9兆円で、その大半は医薬品卸会社を通じて、医療機関などに納入されますが、大手4社は業界の売り上げのおよそ8割を占めています。
東京地検特捜部と公正取引委員会は13日の捜索で押収した資料を分析するなどして入札の実態解明を進めるものとみられます。
アルフレッサの親会社のアルフレッサホールディングスは「本日、東京地検特捜部と公正取引委員会の捜索を受けました。このような事態となったことを厳粛かつ真摯(しんし)に受け止め、当局の調査に全面的に協力してまいります」というコメントを出しました。
またスズケンはNHKの取材に対し、「地域医療機能推進機構が発注した入札をめぐって本日、独占禁止法違反の疑いで東京地検の捜査と公正取引委員会の検査を受けています。これ以上の詳細は控えます」と話しています。
厚労相「談合あれば遺憾」
田村厚生労働大臣は、閣議のあとの記者会見で、「捜査についてコメントは差し控えるが、談合のようなことがあれば、遺憾な話だ」と述べました。
医薬品卸売り業界の現状
業界団体の「日本医薬品卸売業連合会」によりますと、医薬品卸の会社が取り扱う医薬品の市場規模はおよそ9兆円にのぼり、このうち9割以上は、全国の医療機関や保険薬局に販売されています。
医薬品卸の会社が、医療機関に納入する際の価格は国が定める薬の価格=「薬価」に反映されるため、医薬品卸の会社が談合を行えば、「薬価」を高止まりさせ、患者の負担増につながるおそれがあります。
医薬品卸の業界は流通コストの削減などを目的に合併による再編が進み、1992年には351社が業界団体に加盟していましたが、ことしはおよそ5分の1の70社になっています。
今回、捜索を受けた大手4社の売り上げは業界の中でもおよそ8割のシェアを占めますが、関係者によりますと医薬品を高値で販売したい製薬会社と、安く購入したい医療機関との間で板挟みになり、営業利益率は1%前後にとどまっているということです。
専門家や複数の業界関係者は、こうした業界の構図の中で利益を確保しようと大手4社の間で談合が行われた可能性があると指摘しています。