日本新聞: 断水で赤ちゃんが風呂に入れない… 母親を救ったインスタ投稿

生後せいご2か月かげつの赤あかちゃんの3日にちぶりの入浴にゅうよくは、母親ははおやがふと目めにしたインスタグラムの投稿とうこうから実現じつげんしました。1か月かげつ前まえ、大雨おおあめによる大だい規模きぼな断水だんすいが続つづいた静岡しずおか市し。不安ふあんな日々ひびを送おくる家庭かていを救すくったのは、助産じょさん師しらボランティアの思おもいと、それを後押あとおししたSNSの投稿とうこうの拡散かくさんでした。

12日間にちかん続つづいた大だい規模きぼ断水だんすい

台風たいふう15号ごうが接近せっきんした静岡しずおか県けんでは、9月つき23日にちから24日にちにかけて記録きろく的てきな大雨おおあめとなりました。

静岡しずおか市し清水しみず区くでは、大だい規模きぼな断水だんすいが発生はっせい。

すべての地域ちいきで断水だんすいが解消かいしょうされるまでに12日にちかかりました。

赤あかちゃんが風呂ふろに入いれない…

断水だんすいで困こまっていたのが、赤あかちゃんのいる家庭かていです。

そのひとり、静岡しずおか市し清水しみず区くに住すむ吉田よしだ美優みゆさん（31）。

夫おっとと長男ちょうなんの春太郎はるたろうくん（2）、それに、次男じなんで当時とうじ生後せいご2か月かげつの虎臣こしんくんと4人にんで暮くらしています。

9月つき24日にち、自宅じたくが断水だんすいし、同おなじ区内くないに住すむ親族しんぞくの家いえもすべて断水だんすいしてしまいました。

吉田よしださんが困こまったのが、虎臣こしんくんのお風呂ふろでした。

暑あつさも残のこる時期じき、汗あせをかきやすい虎臣こしんくんの肌はだは大丈夫だいじょうぶなのか…。

なんとかお風呂ふろに入いれてあげたいと考かんがえましたが、銭湯せんとうなどの施設しせつでもオムツが取とれていない子こどもは入浴にゅうよくできません。

飲料いんりょう水すいなどを電子でんしレンジで温あたためてホットタオルにし、虎臣こしんくんの体からだを拭ふいてその場ばをしのいでいました。

（吉田よしだ美優みゆさん）

「ミルクとかお風呂ふろとか洗濯せんたくとかすべてができず、初はじめてのことなので不安ふあんしかありませんでした。汗あせもすごくかくし、首くび回まわりとかおむつしているところが蒸むれるので、子こどもがかわいそうだなという思おもいでいっぱいでした」

“あなたの街まちに助産じょさん師しがいます”　見みつけた投稿とうこう

そんな中なか、吉田よしださんは心配しんぱいになってSNSのインスタグラムで支援しえんの情報じょうほうを探さがし始はじめました。

そこで見みつけたのが、“もく浴もくよくボランティア”の投稿とうこうでした。

清水しみず区くに隣接りんせつする葵あおい区くと駿河するが区くの助じょ産院さんいんで、もく浴もくよくができるという内容ないようが、インスタグラムやツイッターで拡散かくさんされていました。

断水だんすいから2日にちたった9月つき26日にち、わらをもすがる思おもいで助じょ産院さんいんに電話でんわしたところ、すぐに対応たいおうしてもらい、たまった洗濯せんたく物ぶつも一緒いっしょに持もってきてくださいと伝つたえられました。

その日ひのうちに助じょ産院さんいんに向むかって虎臣こしんくんを風呂ふろに入いれてもらいました。3日にちぶりの入浴にゅうよくでした。

お風呂ふろ上あがりの虎臣こしんくんは気持きもちよさそうに助じょ産院さんいんのリビングで眠ねむっていました。

吉田よしださん本人ほんにんもシャワーに入はいらせてもらい、洗濯せんたくも済すませてもらいました。

「大変たいへんですね～」

シャワーを上あがると、助産じょさん師しの小しょう長井ながい祥子さちこさんがこう言いいながら紅茶こうちゃとクッキーを持もってきてくれました。

久ひさしぶりに静しずかな場所ばしょでゆっくりとした時間じかんを過すごせた吉田よしださん。

何なによりも小しょう長井ながいさんの気遣きづかいがうれしかったといいます。

（吉田よしだ美優みゆさん）

「小長井こながいさんが包み込つつみこむような優やさしさで接せっしてくれて、心こころがとても温あたたかくなり、感謝かんしゃの気持きもちでいっぱいです。このあと、インスタグラムを見みていたら『今回こんかい被災ひさい者しゃになった人ひとは次つぎの支援しえん者しゃになればいい』という言葉ことばがあって、とても心こころに刺ささりました。次つぎは自分じぶんが困こまっている人ひとに手てを差し伸さしのべたいと思おもいます」

赤あかちゃんと家族かぞく守まもりたい

虎臣こしんくんのもく浴もくよくを行おこなった助産じょさん師しの小しょう長井ながい祥子さちこさんです。

静岡しずおか市し助産じょさん師し会かいの会長かいちょうを務つとめています。

助産じょさん師し会かいがもく浴もくよくのボランティアを行おこなうことを決きめたのは、断水だんすいの直後ちょくご、清水しみず区くの助じょ産院さんいんに「せめて赤あかちゃんだけでも風呂ふろに入いれてほしい」という依頼いらいが寄よせられたことがきっかけでした。

緊急きんきゅうの話し合はなしあいを行おこなった結果けっか、12か所かしょの助じょ産院さんいんで断水だんすい2日にち後ごの26日にちからもく浴もくよくのボランティアを行おこなうことを決きめたのです。

なにげなく投稿とうこうしたら…

小しょう長井ながいさんは、多おおくの家庭かていにボランティアについて知しってもらおうと、SNSのインスタグラムで利用りようを呼よびかける投稿とうこうを行おこなうことにしました。

およそ4か月かげつ前まえ、この助産じょさん院いんで生うまれた赤あかちゃんがもく浴もくよくしているときの写真しゃしんを使つかって、「断水だんすいでお困こまりの方ほう、沐浴もくよくできます～」と呼よびかけたのです。

自分じぶんのフォロワーは200人にん程度ていど。効果こうかは限定げんてい的てきだと考かんがえていました。

ところが、この投稿とうこうに対にたいして多おおくのコメントが寄よせられました。

「シェアさせてください」

「ストーリーにて拡散かくさんさせていただきます」

自分じぶんが投稿とうこうしたインスタグラムにとどまらず、ツイッターなどにも情報じょうほうが広ひろがり、問い合といあわせの電話でんわが頻繁ひんぱんにかかってくるようになりました。

12か所かしょの助じょ産院さんいんには10月つき2日にちまでの1週間しゅうかんで、想定そうていを大おおきく上回うわまわる104家族かぞく、290人にんが訪おとずれました。

（静岡しずおか市し助産じょさん師し会かい会長かいちょう小しょう長井ながい祥子さちこさん）

「どこまでニーズがあるかわからないけど、できることをしようということで発信はっしんしてみたら、想像そうぞう以上いじょうに困こまっている方ほうが多おおくてびっくりしました。多おおくの人ひとが被災ひさい地ちのことを思おもって情報じょうほうを拡散かくさんしてくれたことで、必要ひつような親おやたちに情報じょうほうが届とどくことになったので、本当ほんとうに助たすかりました」

専門せんもん家か「ニーズをくみ取くみとって即座そくざに動うごいた」

日本にっぽん助産じょさん学会がっかいの理事りじ長ちょうで、聖きよし路ろ加か国際こくさい大学だいがく大学院だいがくいんの片岡かたおか弥恵子やえこ教授きょうじゅによりますと、特とくに生後せいご間かんもない赤あかちゃんは皮膚ひふが薄うすく汗あせもかきやすいことから、もく浴もくよくで肌はだを清潔せいけつに保たもつことが重要じゅうようだということです。

今回こんかい、もく浴もくよくボランティアの動うごきが拡散かくさんしたのは、断水だんすいが続つづく中なかで、助産じょさん師したちが赤あかちゃんのいる家庭かていのニーズを的確てきかくに把握はあくしたからだと指摘してきします。

（聖きよし路ろ加か国際こくさい大学だいがく大学院だいがくいん片岡かたおか弥恵子やえこ教授きょうじゅ）

「断水だんすい時じに赤あかちゃんや家族かぞくが抱かかえるニーズや思おもいをくみ取くみとって即座そくざに動うごいたという点てんで評価ひょうかできる。おそらく今回こんかいの経験けいけんは助産じょさん師しのあいだで全国ぜんこくに広ひろがっていき、参考さんこうにされていくと思おもう。今回こんかいの教訓きょうくんを今後こんごの災害さいがいに生いかしていき、日本にっぽんどこでも助産じょさん師しが活動かつどうできるように広ひろげていく必要ひつようがある」