アフガニスタンで銃撃じゅうげき 中村なかむら哲あきらさんの遺体いたいはカブールへ

アフガニスタン東部とうぶのナンガルハル州しゅうジャララバードで４よん日にち、福岡ふくおか市しのＮＧＯ「ペシャワール会かい」の現地げんち代表だいひょうの医師いし、中村なかむら哲あきらさん（73）が車くるまで移動いどう中ちゅうに、何者なにものかに銃撃じゅうげきされ死亡しぼうしました。

中村なかむらさんと一緒いっしょにいた運転うんてん手しゅや警備けいび員いん５ご人にんも撃うたれて死亡しぼうしました。

中村なかむらさんの遺体いたいは、現地げんち時間じかんの４よん日にち夜よる、事件じけんのあったジャララバードから首都しゅとカブールにある軍ぐんの病院びょういんに移うつされました。中村なかむらさんの遺体いたいを納おさめたひつぎはたくさんの花はなで飾かざられていて、軍ぐんの兵士へいしらによって厳重げんじゅうに警備けいびされています。

現場げんばでの目撃もくげき情報じょうほうによりますと、中村なかむらさんを銃撃じゅうげきしたのは複数ふくすうの男おとこらで、日本にっぽん製せいの乗用車じょうようしゃに乗のって中村なかむらさんの車くるまの進行しんこうを妨害ぼうがいしたうえで、車くるまから降おりて銃撃じゅうげきを始はじめたということです。

警察けいさつは、武装ぶそうグループが外国がいこく人じんをねらった計画けいかく的てきな犯行はんこうの疑うたがいがあると見みて捜査そうさしています。

また、これまでの調しらべで、中村なかむらさんの腹部ふくぶには銃弾じゅうだん２に発はつが撃ち込うちこまれていたということで、地元じもとの捜査そうさ当局とうきょくが死因しいんを詳くわしく調しらべています。

中村なかむらさんの遺体いたいは、遺族いぞくや関係かんけい者しゃがカブールを訪おとずれたあと、日本にっぽんに向むけて搬送はんそうされるとみられます。

大統領だいとうりょう「テロ」と断定だんてい

アフガニスタンのガニ大統領だいとうりょうは声明せいめいを出だし、今回こんかいの銃撃じゅうげきを「非情ひじょうな犯行はんこうでテロ行為こういだ」と断定だんていしました。そのうえで、「テロリストによる残忍ざんにん極きわまりない行為こういは、これまで続つづけてきたアフガニスタンの発展はってんをとめることはできないし、妨害ぼうがいすることはできない」と述のべ、犯人はんにんを拘束こうそくするよう捜査そうさ当局とうきょくに指示しじしたことを明あきらかにしました。

海外かいがいメディアは

中村なかむらさんが銃撃じゅうげきされた時ときの状況じょうきょうについて、海外かいがいのメディアも目撃もくげき者しゃの証言しょうげんを伝つたえています。

このうちＡＰ通信えいぴ-つうしんは、犯行はんこうを目撃もくげきしていた男性だんせいの話はなしとして、襲撃しゅうげき犯はんは、警備けいび員いんと運転うんてん手しゅ、そして中村なかむらさんに向むけて銃撃じゅうげきしたと伝つたえています。

男性だんせいは「日本人にっぽんじんの男性だんせいがけがをしていたので、私わたしの友人ゆうじんが『病院びょういんに連つれて行いこう』と言いったところ、襲撃しゅうげき犯はんは私わたしたちに銃じゅうを向むけ、『動うごくな』と言いった」と当時とうじの緊迫きんぱくした状況じょうきょうを証言しょうげんしました。

また、ロイター通信ろいた-つうしんは、同おなじ目撃もくげき者しゃの話はなしとして、中村なかむらさんが乗のった車くるまが現場げんばにさしかかったところ、襲撃しゅうげき犯はんが中村なかむらさんや運転うんてん手しゅらに向むけて銃じゅうを発砲はっぽうしたと伝つたえています。

そのうえで、犯人はんにんの１いち人にんが頭あたまを上あげる中村なかむらさんを見みて、「日本人にっぽんじんがまだ生いきている」と叫さけび、再ふたたび中村なかむらさんを撃うったと伝つたえています。

アフガニスタン新聞しんぶん各紙かくしも哀悼あいとうの意い

アフガニスタンの５ご日にちの新聞しんぶん各紙かくしは、一いち面めんで中村なかむらさんへの哀悼あいとうの意いを表あらわすとともに、現地げんちでの活動かつどうを紹介しょうかいした特集とくしゅう記事きじを組くむなど、これまでの功績こうせきをたたえています。

このうち、アフガニスタンの英字えいじ紙し、「アフガニスタン・タイムズ」は一いち面めんに、中村なかむらさんの写真しゃしんを掲載けいさいし、哀悼あいとうの意いを表あらわすとともに銃撃じゅうげき事件じけんのいきさつや目撃もくげき者しゃの情報じょうほうなどを伝つたえています。

そのうえで、「ナンガルハル州しゅうのすべての住民じゅうみんは、中村なかむらさんの突然とつぜんの死しを悼いたんでいる。長年ながねん、現地げんちの人ひとたちを支ささえてくれたことに感謝かんしゃしている」と伝つたえています。

また、別べつの英字えいじ紙しの「カブール・タイムズ」は、中村なかむらさんのこれまでの活動かつどうを紹介しょうかいした特集とくしゅう記事きじを組くんでいます。

この中なかでは、アフガニスタンで深刻しんこく化かする干かんばつや洪水こうずいを食い止くいとめるため、農業のうぎょう用水路ようすいろなどかんがい施設しせつの建設けんせつを行おこない、現地げんちの人ひとたちの生活せいかつの改善かいぜんに生涯しょうがいをささげたとして、中村なかむらさんの功績こうせきをたたえています。

「三みつどもえ」の戦たたかい続つづくアフガニスタン

アフガニスタンでは、現在げんざい、政府せいふや反はん政府せいふ武装ぶそう勢力せいりょくなどとの間まで三みつどもえの戦たたかいが続つづいています。

アメリカ軍ぐんの支援しえんを受うける政府せいふの治安ちあん部隊ぶたいは、長年ながねん、反はん政府せいふ武装ぶそう勢力せいりょくタリバンと戦闘せんとうを続つづけてきました。

これに、４よん年ねんほど前まえからは、過激かげき派は組織そしきＩＳ＝イスラミックステートの地域ちいき組織そしきも加くわわった戦たたかいとなっています。

このうちＩＳは、中村なかむらさんが銃撃じゅうげきされた東部とうぶナンガルハル州しゅうの山岳さんがく地帯ちたいを主おもな拠点きょてんとして活動かつどうし、国連こくれんなどによりますと、戦闘せんとう員いんは2500人にんから4000人にんいるとみられています。

ナンガルハル州しゅうでは一時いちじ、ＩＳが支配しはい地域ちいきを広ひろげましたが、アフガニスタン政府せいふの治安ちあん部隊ぶたいとタリバンが、それぞれ去年きょねんからことしにかけてＩＳに対にたいする攻勢こうせいを強つよめ、激はげしい戦闘せんとうを繰り広くりひろげてきました。

その結果けっか、民間みんかん人じんの犠牲ぎせいも相次あいついでいて、アメリカ国防こくぼう総省そうしょうによりますと、ことし１月いちがつから９月くがつの間まにナンガルハル州しゅうで死傷ししょうした民間みんかん人じんは、762人にんに上のぼり、「アフガニスタンで最もっとも危険きけんな州しゅうの１ひとつ」とされています。

ただ、最近さいきんＩＳは、幹部かんぶが相次あいついで殺害さつがいされたことで、支配しはい地域ちいきをアフガニスタン政府せいふやタリバンに奪うばわれ、勢力せいりょくを失うしないつつあると見みられています。

トランプ大統領だいとうりょうは先月せんげつ、就任しゅうにん後ご初はじめてアフガニスタンを訪おとずれた際さい、「ＩＳをほぼ壊滅かいめつさせた」と強調きょうちょうしたほか、アメリカ政府せいふでアフガニスタンを担当たんとうするハリルザド特別とくべつ代表だいひょうも、３さん日にち、ツイッターに、「ナンガルハル州しゅうでの軍事ぐんじ作戦さくせんは効果こうか的てきで、ＩＳは多おおくの地域ちいきと戦闘せんとう員いんを失うしなった。すばらしい成果せいかだ」と書き込かきこみました。

一方いっぽう、アフガニスタン政府せいふとタリバンの戦たたかいは各地かくちで続つづき、いまだ出口でぐちが見みえません。

こうした中なか、トランプ政権せいけんは、「アメリカ史上しじょう、最もっとも長ながい戦争せんそう」とも言いわれるアフガニスタンでの軍事ぐんじ作戦さくせんを終おわらせるため、去年きょねんからタリバンとの和平わへい交渉こうしょうに乗り出のりだしています。

アメリカ側がわは、和平わへい交渉こうしょうを通をつうじて、現地げんちに駐留ちゅうりゅうするアメリカ軍ぐんの兵士へいしを撤退てったいさせる代かわりに、タリバンに対にたいして停戦ていせんや、アフガニスタン政府せいふとの直接ちょくせつ交渉こうしょうを求もとめています。そして、直接ちょくせつ交渉こうしょうを通をつうじてアフガニスタン政府せいふとタリバンを和解わかいさせることで、双方そうほうが協力きょうりょくして国くに造づくりを進すすめる態勢たいせいを築きずきたい考かんがえです。

しかし、停戦ていせんや直接ちょくせつ交渉こうしょうの見通みとおしは立たっていません。トランプ大統領だいとうりょうとしては、自みずからの再選さいせんがかかる来年らいねんの大統領だいとうりょう選挙せんきょも見据みすえて和平わへい交渉こうしょうを進展しんてんさせ、アメリカ軍ぐんの撤退てったいに向むけた道筋みちすじを示しめしたい思惑おもわくがあると見みられますが、アフガニスタン国内こくないに４よん万まん人にんから８はち万まん人にんいると見みられるタリバンの中なかには、和平わへい交渉こうしょうに反発はんぱつする強硬きょうこう派はもいて、道みちのりは険けわしい状況じょうきょうです。