右手に教科書を持っていたためとっさに対応しきれず、廊下についた左手の手首を骨折しました。
恒川さんは運動が得意でふだんから外で遊んだりダンス教室にも通ったりしていますが、歩いていて転び、骨折したのは初めてでした。
恒川さんが通う小学校では昨年度「下校中につまずいて転倒し、うでを骨折した」とか「持っていた傘に足をひっかけて転び顔面を強打して鼻を骨折した」などといった報告が相次ぎ、骨折やその疑いがある児童が17人と前の年度に比べて2倍以上になりました。
大津さんは「コロナ禍で感染予防のために行動制限が多くなったことも原因の一つかもしれません」と話しています。
ところが最近、基礎疾患がないのに運動の基本的な動作ができない子どもたちが増え、中には転んで大けがをするケースも報告されています。 医師らは加齢や病気などが原因の大人のロコモと区別して、「子どもロコモ」と呼んでいます。
さらに「運動機能が改善されないまま大人になってしまうと、将来的にロコモとなる可能性もある」と話しています。 ただ、ストレッチや体操などの適切な運動を続けるほか体の姿勢を見直すなどすると、予防や改善が見込まれるということです。
このうち小学生から高校生は820人で、体の動かしやすさの変化について、「階段がのぼりづらくなった」と回答したのが、 ▽高校生が13%、 ▽中学生が11%、 ▽小学生が8%で、 子ども全体では10%にのぼりました。 また、 「早く歩けなくなった」と回答したのは ▽小学生と中学生、高校生でいずれも9%、 「つまずきやすくなった」のは ▽高校生が8%、 ▽中学生と小学生が5%でした。 学会によりますと、これらの項目は、1つでも当てはまれば、足腰などの運動機能が低下し、介護が必要なリスクが高まるという「ロコモティブシンドローム」の初期兆候とされていて、通常、30代以上で注意が必要になるとされています。 このほか調査では「体力がなくなった」と回答したのは、 ▽高校生が55%、 ▽中学生が44%に達し、 80代までの全世代の平均の39%を上回りました。 アンケートを行った日本臨床整形外科学会の二階堂元重医師は「大人のロコモティブシンドロームの初期兆候がこれだけの子どもたちに表れたのは驚きだ。休校でクラブ活動やスポーツ行事が休止となり運動の機会が減った一方、スマートフォンやゲームをする時間が増えた影響があるのではないか」と話していました。
次に以下のチェック項目を観察します。
▽しゃがみ込むときに途中で止まったり後ろに転んだりする ▽両手を上げたときに手の先から肩にかけて垂直にならない ▽立って体を前にかがめた際にひざを伸ばしたまま手の指を床につけることができない これらの項目に1つでも該当する場合、「子どもロコモ」が疑われるということです。
ことし2月、体育の授業で跳び箱をした際に小指の付け根を骨折し、林医師のクリニックを訪れた小学2年生の男の子がいました。
林医師は「姿勢をよくして、1日に数分でもいいので肩甲骨と股関節を動かす体操を続ければけがをしにくくなり、子どもロコモの予防や改善にもつながります」と話しています。
新型コロナウイルスの感染拡大で室内で遊ぶ子どもたちが増え、体を動かす機会が減ってしまったという保護者らの声がきっかけでした。
3年生の女子児童は「素早く動くところが難しかったけれど、楽しかったです」と話していました。
春日教授によりますと、ダンスに盛り込まれたしゃがみ込む動作や片足でバランスをとる動きのほか肩甲骨を使いながら腕を伸ばす振り付けは、ロコモの予防にも効果があるということです。 さらに、ダンスの効果はロコモの予防にとどまらず、県内の幼稚園や保育園では子どもたちの25メートル走のタイムの伸び率が、同じ年齢の子どもたちより高くなったということです。 春日教授は「小さい頃によく運動した世代は年をとっても苦にならないが、若い時に動かないと高齢者になっても動きづらいということが大規模な調査で分かっている。子どものうちから動くのを当たり前にして、運動をできる体をしっかりと養っていくことが大切だと思う」と話していました。
鹿児島県奄美群島の伊仙町では今年度からすべての小中学校で、子どもロコモの予防のための取り組みを始めました。 このうち、糸木名小学校では年に3回、全校児童を対象に姿勢や運動機能のチェックを行うことにしていて、先月には全児童19人のうちおよそ3分の1の児童に子どもロコモが疑われたということです。 このため朝の会や体育の授業などで腕を伸ばして前屈したりしゃがみ込んだりする運動を取り入れ、改善に取り組んでいます。 養護教諭の坂元梨恵さんは「結果はすぐに出ないかもしれませんが、将来の子どもたちの健康に少しでも役立つよう取り組んでいきます」と話しています。
「子どもロコモ」って?
子どもに広がるロコモの“兆候”
「子どもロコモ」チェックどうすれば?
子どもロコモ”魔法のダンス”で対策
対策は各地でも