Ｆえふ35墜落ついらく 原因げんいんはパイロットの「空間くうかん識失調しっちょう」機体きたい姿勢しせいの誤認ごにんか

それによりますと、当時とうじ、一緒いっしょに訓練くんれんしていた同型どうけい機きに残のこされた記録きろくなどから事故じこ機きの航跡こうせきを分析ぶんせきした結果けっか、墜落ついらく直前ちょくぜんの30秒びょう余あまりの間まに9000メートル以上いじょうの高度こうどから、時速じそく1000キロ前後ぜんごの高速こうそくで一気いっきに急きゅう降下こうかしていたことがわかりました。

この間このかん、パイロットは急きゅう降下こうかから回復かいふくしようとせず、緊急きんきゅう脱出だっしゅつを行おこなった形跡けいせきも確認かくにんされなかったということです。

またパイロットはこの時とき、「訓練くんれんを中止ちゅうしする」とほかの機体きたいに伝つたえていましたが、異常いじょうを知しらせる交信こうしんはなかったことから、次つぎの訓練くんれんメニューに移うつるための合図あいずだったとみられるとしています。

こうした状況じょうきょうから、今回こんかいの事故じこはパイロットが機体きたいの姿勢しせいを正ただしく認識にんしきできない「空間くうかん識失調しっちょう」という状態じょうたいに陥おちいり、急きゅう降下こうかに気付きづかないまま墜落ついらくに至いたった可能かのう性せいが高たかいとしています。

一方いっぽう、機体きたいの不ふ具合ぐあいの可能かのう性せいは極きわめて低ひくいとしていて、航空こうくう自衛隊じえいたいは残のこる12機きのＦえふ35の飛行ひこう再開さいかいを検討けんとうしています。

防衛ぼうえい相しょう「訓練くんれんを徹底てっていする」

岩屋いわや防衛ぼうえい大臣だいじんは防衛ぼうえい省しょうで記者きしゃ団だんに対にたいし、「総合そうごう的てきな分析ぶんせきの結果けっか、機体きたいに異常いじょうが発生はっせいしていた可能かのう性せいは極きわめて低ひくく、操縦そうじゅう者しゃが空間くうかん識失調しっちょう、平衡へいこう感覚かんかくを失うしなった状態じょうたいに陥おちいっており、そのことを本人ほんにんが意識いしきしていなかった可能かのう性せいが高たかい」と述のべました。

そのうえで、「国民こくみんに多大ただいなご不安ふあんとご迷惑めいわくをかけたことを誠まことに申し訳もうしわけなく思おもっている。今後こんご、空間くうかん識失調しっちょうに陥おちいらないような訓練くんれんを徹底てっていし、機体きたいの特別とくべつ点検てんけんを行おこない、地元じもとに丁寧ていねいに説明せつめいをして理解りかいをいただくという作業さぎょうを終おえて　飛行ひこう再開さいかいの判断はんだんを行おこなう」と述のべました。

一方いっぽう、Ｆえふ35の今後こんごの配備はいびへの影響えいきょうについては「現時点げんじてんで見直みなおす考かんがえはない」と述のべました。

事故じこ調査ちょうさの詳細しょうさいは

今回こんかいの事故じこでは、パイロットが死亡しぼうし、飛行ひこうの状況じょうきょうを記録きろくしたフライトレコーダーも見みつかっていないため、航空こうくう自衛隊じえいたいは機体きたいどうしで情報じょうほうを共有きょうゆうする「データリンク」というシステムを使つかって、当時とうじ、一緒いっしょに訓練くんれんしていたほかの同型どうけい機きの記録きろくなどから事故じこ機きの航跡こうせきを再現さいげんしました。

それによりますと、墜落ついらくの30秒びょう余あまり前まえの午後ごご７なな時じ26分ふんごろ、事故じこ機きは管制かんせい官かんから、近ちかくを飛行ひこうするアメリカ軍機ぐんきとの距離きょりを保たもつため高度こうどを下さげるよう指示しじされました。

パイロットは「はい。了解りょうかい」と日本語にほんごで答こたえ、指示しじどおり高度こうどを下さげましたが、再現さいげんされた航跡こうせきでは、およそ20秒間びょうかんで高度こうどを4900メートルも下さげ、スピードは時速じそく900キロ以上いじょうになっていました。

続つづいて、管制かんせい官かんから左ひだり旋回せんかいを指示しじされた事故じこ機きは、指示しじどおり左ひだり旋回せんかいしたあと、訓練くんれんをいったん中止ちゅうしすることを意味いみする「ノック・イット・オフ」という英語えいごをほかの機体きたいに無線むせんで伝つたえました。航空こうくう自衛隊じえいたいによりますと、「ノック・イット・オフ」ということばは一連いちれんの訓練くんれんのうち１ひとつのメニューが終おわった時ときなど、通常つうじょう時じも使つかわれるということで、ほかの機体きたいのパイロットは「落ち着おちついた声こえだった」と話はなしているということです。

事故じこ機きはその後そのごも急きゅう降下こうかを続つづけますが、この交信こうしんのあと、さらにスピードが上あがって音速おんそくに近ちかい時速じそく1100キロ以上いじょうになりました。その結果けっか、15秒びょうほどの間まで高度こうどはさらに4400メートル下さがり、午後ごご７なな時じ26分ふん30秒びょうごろ、レーダーから機き影かげが消きえ、事故じこ機きは墜落ついらくしたとみられます。

事故じこ機きは、わずか30秒びょう余あまりの間まに9300メートルを急きゅう降下こうかしていたことになりますが、これはエンジンがほぼ最大さいだいの出力しゅつりょくでなければ不可能ふかのうなスピードだということです。

またこの間このかん、２に回かいの無線むせん交信こうしんのほかに異常いじょうを伝つたえる連絡れんらくはなく、パイロットが急きゅう降下こうかから回復かいふくさせる操作そうさや緊急きんきゅう脱出だっしゅつを行おこなった形跡けいせきはないということです。

このため、航空こうくう自衛隊じえいたいは事故じこ機きのパイロットが平衡へいこう感覚かんかくを失うしなって機体きたいの姿勢しせいを正ただしく認識にんしきできない「空間くうかん識失調しっちょう」という状態じょうたいに陥おちいり、急きゅう降下こうかに気付きづかないまま墜落ついらくに至いたった可能かのう性せいが高たかいとしました。

一方いっぽう、機体きたいの不ふ具合ぐあいの可能かのう性せいは極きわめて低ひくいとしていて、アメリカなどが開発かいはつした最さい新鋭しんえいのステルス戦闘せんとう機きで起おきた世界せかい初はつの墜落ついらくとしても注目ちゅうもくされた今回こんかいの事故じこは、パイロットの操縦そうじゅうが原因げんいんという見解けんかいでまとまりました。

ただ、事故じこ機きのパイロットは別べつの戦闘せんとう機きなどでおよそ3200時間じかんの飛行ひこう時間じかんを経験けいけんしているベテランで、操縦そうじゅう技術ぎじゅつは高たかいことから、最新さいしんの装備そうびが盛り込もりこまれたＦえふ35特有とくゆうの問題もんだいはなかったか、航空こうくう自衛隊じえいたいは引き続ひきつづき調しらべることにしています。