ハンセン病はんせんびょう 国くにに患者かんじゃ家族かぞくへの賠償ばいしょう命令めいれい 熊本くまもと地裁ちさい

裁判さいばんでは、患者かんじゃに対にたいする隔離かくり政策せいさくがその家族かぞくにも損害そんがいを与あたえたと言いえるかどうかなどが争あらそわれました。

28日にちの判決はんけつで熊本くまもと地方ちほう裁判所さいばんしょの遠藤えんどう浩太郎こうたろう裁判さいばん長ちょうは、遅おそくとも昭和しょうわ35年ねんには隔離かくり政策せいさくは必要ひつようなかったとして、

▽厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんが隔離かくり政策せいさくを廃止はいしする義務ぎむに違反いはんしていたことや、

▽国会こっかいが平成へいせい８はち年ねんまでに隔離かくり政策せいさくを定さだめた法律ほうりつを廃止はいししなかったことは、違法いほうだと指摘してきしました。

そのうえで「家族かぞくは憲法けんぽうで保障ほしょうされた権利けんりを侵害しんがいされた」として、国くにに対にたいして総額そうがく３さん億おく7000万まん円えん余あまりを支払しはらうよう命めいじました。

ハンセン病はんせんびょうの元もと患者かんじゃ本人ほんにんについては、平成へいせい13年ねんに隔離かくり政策せいさくは憲法けんぽう違反いはんだとして国くにに賠償ばいしょうを命めいじた判決はんけつが確定かくていしていますが、家族かぞくが受うけた損害そんがいについても国くにの責任せきにんを認みとめる判断はんだんは初はじめてです。

弁護士べんごし「勝かったとわかった瞬間しゅんかん 涙なみだが込み上こみあげ」

午後ごご２に時じすぎ、裁判所さいばんしょから出でてきた弁護士べんごしが「勝訴しょうそ」と書かかれた紙かみを掲かかげると、集あつまった支援しえん者しゃからは拍手はくしゅや歓声かんせいが上あがりました。

支援しえん者しゃを前まえに島しま翔しょう吾われ弁護士べんごしは「『勝かった』と分わかった瞬間しゅんかん、涙なみだが込み上こみあげてきた。次つぎは控訴こうそ断念だんねんを求もとめて引き続ひきつづき戦たたかっていきたい」と述のべました。

傍聴ぼうちょう席せき 抽選ちゅうせんの倍率ばいりつは16.2倍ばい

熊本くまもと地方ちほう裁判所さいばんしょには傍聴ぼうちょうを希望きぼうする人ひとが大勢たいせい訪おとずれ、午後ごご１いち時じから整理せいり券けんが配くばられました。

裁判所さいばんしょによりますと、26の傍聴ぼうちょう席せきに対にたいして423人にんが並ならんだということで、抽選ちゅうせんの倍率ばいりつは16.2倍ばいだったということです。

このほか、車くるまイスの利用りよう者しゃ用ようの２に席せきの傍聴ぼうちょう席せきに対にたいして５ご人にんが並ならんだということです。

原告げんこく 赤塚あかつかさん「当たり前あたりまえの家族かぞくの関係かんけい壊こわされた」

原告げんこくの一いち人にん、鹿児島かごしま県けんの奄美あまみ大島おおしまに住すむ赤塚あかつか興一こういちさん（81）は国くにの隔離かくり政策せいさくによって当たり前あたりまえの家族かぞくの関係かんけいが壊こわされたと訴うったえています。

赤塚あかつかさんの父親ちちおや、新蔵しんくらさんは昭和しょうわ22年ねんに島しまにある療養りょうよう所しょに強制きょうせい収容しゅうようされました。

それ以降いこう、周まわりの友達ともだちが離はなれていったことで大好だいすきな父親ちちおやへの思おもいが揺ゆらぐようになったといいます。

世間せけんからの偏見へんけんを受うけ続つづけるうちにだんだんと父親ちちおやを遠とおざけるようになり、自分じぶんの結婚式けっこんしきにすら呼よびませんでした。

また、孫まごと会あうのを楽たのしみに療養りょうよう所しょから自宅じたくに帰省きせいしてきた新しん蔵くらさんに対にたいし、周まわりの目めを気きにするあまり「早はやく療養りょうよう所しょに帰かえれ」とつらくあたったといいます。

父親ちちおやの死しから11年ねんが経過けいかした平成へいせい13年ねん、元もと患者かんじゃに対にたいする国くにの隔離かくり政策せいさくの過あやまちを認みとめた裁判さいばんの判決はんけつが出でたことをきっかけに、赤塚あかつかさんは父親ちちおやへの接せっし方かたが間違まちがっていたと気付きづきました。

父親ちちおやへのしょく罪しょくざいと名誉めいよを回復かいふくするために顔かおと名前なまえを公表こうひょうして講演こうえん活動かつどうなどを始はじめましたが、その直後ちょくごから４よん人にんの子こどものうち３さん人にんが次々つぎつぎと離婚りこんしてしまい、患者かんじゃの家族かぞくだと公表こうひょうしたことが影響えいきょうしたのではないかと感かんじたといいます。

赤塚あかつかさんは判決はんけつ前まえ、「まだ家族かぞくに対にたいする差別さべつや偏見へんけんが根強ねづよく残のこっていると感かんじる。国くにの隔離かくり政策せいさくによって精神せいしん的てきに追い詰おいつめられ、当たり前あたりまえの家族かぞくの関係かんけいが壊こわされた。判決はんけつではそうした被害ひがいをもたらした国くにの責任せきにんを認みとめてもらいたい」と話はなしていました。

原告げんこく 原田はらださん「患者かんじゃだけでなく家族かぞくの人生じんせいも奪うばった」

原告げんこくの一いち人にん、岡山おかやま市しの原田はらだ信子のぶこさん（75）は、父親ちちおやが療養りょうよう所しょに強制きょうせい収容しゅうようされたことで、みずからも差別さべつや偏見へんけんを受うける生活せいかつを送おくり続つづけてきたと訴うったえています。

68年ねん前まえに保健所ほけんじょの職員しょくいんが大勢たいせい訪おとずれ、家いえの中なかが真っ白まっしろになるほど消毒しょうどくされた日ひを境さかいに、当時とうじ小学しょうがく２に年生ねんせいだった原田はらださんは学校がっこうで激はげしいいじめを受うけるようになりました。

下校げこう前まえの掃除そうじの時間じかんには、原田はらださんがバケツの水みずで雑巾ぞうきんを洗あらおうとすると、友達ともだちから「お前おまえが手てを入いれると病気びょうきがうつる」と言いわれ、雑巾ぞうきんをぶつけられたということです。

父親ちちおやの病気びょうきを知しられたことで母親ははおやも勤め先つとめさきを解雇かいこされ、残のこされた親子おやこ２に人にんの生活せいかつは困窮こんきゅうを極きわめて食事しょくじさえ満足まんぞくに取とれない日々ひびが続つづきました。

原田はらださんは「母親ははおやから何なん度ども『死しのう』と言いわれてとても怖こわくなり、嫌いやだと泣なきながら何なにも食たべずに眠ねむる毎日まいにちでした」と当時とうじを振り返ふりかえります。

原田はらださんは、少すこしでも生活せいかつを楽らくにしたいと中学ちゅうがく卒業そつぎょう後ごすぐに結婚けっこんしましたが、夫おっとからは酒さけを飲のむたびに『病気びょうきの父親ちちおやがいる娘むすめをもらってやった』と言いわれ、暴力ぼうりょくを振ふるわれ続つづけたといいます。

原田はらださんは判決はんけつ前まえ、「あれほど国くにが大おおきな強制きょうせい隔離かくりをしたからこそ、社会しゃかい全体ぜんたいから嫌きらわれる病気びょうきになったのだと思おもいます。これまでの人生じんせいで、心こころから “楽たのしい” と感かんじたことは一いち度どもありません。患者かんじゃだけでなく家族かぞくの人生じんせいも奪うばった国くにには謝あやまってもらいたい」と話はなしていました。

厚あつ労ろう省しょう「対応たいおうを検討けんとう」

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは「内容ないようを精査せいさ中ちゅうだが、今回こんかいの判決はんけつでは国くにの主張しゅちょうが一部いちぶ認みとめられなかったと認識にんしきしている。判決はんけつ内容ないようを精査せいさするとともに関係かんけい省庁しょうちょうと協議きょうぎしつつ対応たいおうを検討けんとうしていきたい」とコメントしています。