警視庁によりますと、今月16日の早朝、渋谷区幡ヶ谷のバス停でベンチに座っていた64歳の女性の頭を殴って死亡させたとして傷害致死の疑いが持たれています。
女性は路上生活をしていて、寝ていたところをいきなり襲われたとみられ、警視庁は防犯カメラに写っていた不審な男の行方を捜査していましたが、21日午前3時ごろ、吉田容疑者が近くの交番に出頭し、「私がやりました」などと話したということです。
警視庁によりますと調べに対して「痛い思いをさせればバス停からいなくなると思って殴った。まさか死んでしまうとは思わなかった」などと供述しているということです。
吉田容疑者は事件現場から800メートルほど離れたところに住んでいて、ふだんから深夜に周辺を散歩していたということです。
警視庁が当時の状況をさらに調べています。
現場では手を合わせる人の姿も
21日昼すぎに現場のバス停を訪れた50代の男性は、花束を手向け、静かに手を合わせていました。
男性は「ニュースで事件のことを知り、被害者の女性の冥福を祈りたいという気持ちで訪れました。路上生活をしていたと聞いたので、飲食に困っていたのではないかと思い、きょうはパンと温かいお茶も持ってきました。悪いことは何もしていないはずなのに、このような被害に遭ってしまいとてもかわいそうです。容疑者が逮捕されたということなので、しっかり罪を償ってほしいし、女性のように路上で生活している人たちにも寄り添える社会であってほしいと願っています」と話していました。
近くの住民「容疑者は“窓から見える世界がすべて”と話す」
吉田容疑者と同じマンションに住み、子どもの頃から知っているという70代の夫婦は「容疑者はいったんは就職したものの、その後、仕事をやめ、実家の酒店で空き瓶の回収などの作業を手伝っていました。最近はあまり見かけなくなりましたが、会えば挨拶などをしてくれる穏やかな男性という印象なので、逮捕されたと聞いて驚いています」と話していました。
また、近所に住む30代の夫婦は「おととし、容疑者から『ベランダにあるテレビのアンテナが邪魔なのでどうにかしてほしい』と言われたことがあります。そのとき、『自分はあまり外に出ないので、ベランダの窓から見える世界がすべてなんです』と話していたのが印象的でした。また、いつもチェック柄の服を着ていて、テレビで見た防犯カメラに写った男の姿によく似ていたので、逮捕されたと知った時はやはり、と思いました」と話していました。
近くの飲食店主「女性は8月くらいからバス停に」
現場近くで飲食店を経営する40代の男性は「ことしの8月くらいからバス停に座る女性の姿を見かけるようになりました。深夜の営業が終わり、午前2時ごろに店の片付けをしていると女性がバス停にやってきて、始発のバスが来る前にどこかへいなくなっていました。座っている時、いつも下を向いていたのが印象に残っています。通りがかった人に『こんなところで寝たら寒いし、風邪引くよ』と声をかけられていたこともありましたが、女性はほぼ毎日、バス停に来ていました」と話していました。