日本新聞: 旧統一教会に「質問権」を初行使解散命令に該当か調査へ

文部もんぶ科学かがく省しょうは22日にち、旧きゅう統一とういつ教会きょうかいに対にたいし、法人ほうじんの組織そしき運営うんえいや収支しゅうし、財産ざいさんに関にかんして12月つき9日にちまでに報告ほうこくを求もとめる書類しょるいを送おくり、宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほうに基もとづく「質問しつもん権けん」を行使こうししたと発表はっぴょうしました。

「質問しつもん権けん」の行使こうしは平成へいせい8年ねんにこの規定きていができて以来いらい、初はじめてです。

21日にちの宗教しゅうきょう法人ほうじん審議しんぎ会かいで旧きゅう統一とういつ教会きょうかいへの「質問しつもん権けん」の行使こうしについて「相当そうとう」だとする答申とうしんが出だされたことを受うけ、永岡ながおか文部もんぶ科学かがく大臣だいじんは22日にち、「旧きゅう統一とういつ教会きょうかいに本日ほんじつ、通知つうちを発出はっしゅつする」と述のべました。

その後そのご、担当たんとうの職員しょくいんが旧きゅう統一とういつ教会きょうかいに書類しょるいを発送はっそうし、宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほうに基もとづく「質問しつもん権けん」を行使こうししたと発表はっぴょうしました。

文部もんぶ科学かがく省しょうによりますと、旧きゅう統一とういつ教会きょうかいには組織そしき運営うんえいに関にかんする文書ぶんしょや収支しゅうし、財産ざいさんに関にかんする書類しょるい・帳簿ちょうぼを12月つき9日にちまでに提出ていしゅつするように求もとめたということです。

質問しつもん権けんとは

「質問しつもん権けん」は、宗教しゅうきょう法人ほうじんに法令ほうれい違反いはんなどが疑うたがわれる場合ばあい、運営うんえい実態じったいなどについて報告ほうこくを求もとめたり、質問しつもんしたりできるもので、オウム真理教おうむしんりきょうによる一連いちれんの事件じけんを受うけた法律ほうりつ改正かいせいで平成へいせい8年ねんに施行しこうされました。

「質問しつもん権けん」の行使こうしは、この規定きていができて以来いらい、初はじめてです。文部もんぶ科学かがく省しょうは、旧きゅう統一とういつ教会きょうかいや信者しんじゃの不法ふほう行為こういを認みとめた民事みんじ裁判さいばんの判決はんけつが22件けんあり、賠償ばいしょう額がくが少すくなくとも14億おく円えんになることなどを根拠こんきょに「質問しつもん権けん」の行使こうしに向むけた準備じゅんびを進すすめてきました。今後こんご、旧きゅう統一とういつ教会きょうかいの報告ほうこくなどを受うけ、「法令ほうれいに違反いはんし、著いちじるしく公共こうきょうの福祉ふくしを害がいすると明あきらかに認みとめられる行為こうい」など解散かいさん命令めいれいに該当がいとうしうる事実じじつ関係かんけいを把握はあくした場合ばあい、裁判所さいばんしょへの請求せいきゅうを検討けんとうすることにしています。

行使こうしの対象たいしょうは

宗教しゅうきょう法人ほうじんに所属しょぞくする人ひとが法令ほうれい違反いはんを繰り返くりかえしているケースや、被害ひがいが重大じゅうだいなケースなどがあげられています。

実際じっさいに「質問しつもん権けん」を行使こうしするかの判断はんだんは「客観きゃっかん的てきな根拠こんきょ」に基もとづくとしています。公的こうてき機関きかんの判断はんだんや公的こうてき機関きかんに具体ぐたい的てきな資料しりょうとともに寄よせられた情報じょうほうが根拠こんきょになるとしています。

質問しつもんの結果けっか、法令ほうれい違反いはんなどを確認かくにんし、「著いちじるしく公共こうきょうの福祉ふくしを害がいする」などと判断はんだんされた場合ばあいに、裁判所さいばんしょに解散かいさん命令めいれいを請求せいきゅうでき、裁判所さいばんしょは命令めいれいを出だすかどうか判断はんだんする。

なぜ基準きじゅんが必要ひつよう？ポイントを専門せんもん家かが説明せつめい

旧きゅう統一とういつ教会きょうかいの問題もんだいをめぐり、宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほうに基もとづく「質問しつもん権けん」を行使こうしする際さいの基準きじゅんが今月こんげつ8日にち、決きまりました。

なぜ基準きじゅんが必要ひつようなのか、そして今回こんかいのポイントはどこにあるのか、宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほうに詳くわしい近畿きんき大学だいがくの田近たぢか肇はじめ教授きょうじゅに取材しゅざいしました。

なぜ基準きじゅんをつくることから始はじめたのでしょうか？

「質問しつもん権けん」が、これまで一いち度ども使つかわれたことがないからです。「質問しつもん権けん」という仕組しくみは、1995年ねんにオウム真理教おうむしんりきょうの地下鉄ちかてつサリン事件じけんが起おきたあとに新あたらしく定さだめられたものですが、それから27年ねんたった今たったいままで使つかわれてきませんでした。今回こんかい、旧きゅう統一とういつ教会きょうかいに対にたいして「質問しつもん権けん」を行使こうしした場合ばあい、これが初はじめての例れいになるため、「そもそも質問しつもん権けんはどういう場合ばあいに行使こうしすることができるのか」ということについて、考え方かんがえかたを整理せいりすることになったのだと思おもいます。

決きまった基準きじゅんで、注目ちゅうもくするポイントは？

判断はんだんの根拠こんきょについてです。宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほうが定さだめている解散かいさん事由じゆうに該当がいとうする疑うたがいがあるかどうかを判断はんだんする根拠こんきょとして、専門せんもん家か会議かいぎは以下いかの場合ばあいを挙あげました。

(1)宗教しゅうきょう法人ほうじんに属ぞくする人ひとの法令ほうれい違反いはんや法人ほうじんの法的ほうてき責任せきにんを認みとめる公的こうてき機関きかんの判断はんだん

(2)公的こうてき機関きかんに寄よせられた情報じょうほうで、具体ぐたい的てきな資料しりょうや根拠こんきょがあるもの

(1)にある「法的ほうてき責任せきにん」はおそらく、民法みんぽうの不法ふほう行為こういを念頭ねんとうに置おいていると思おもいます。

(2)は、宗教しゅうきょう法人ほうじんの違法いほう行為こういが刑事けいじや民事みんじの裁判さいばんになる前まえの段階だんかいでも、質問しつもん権けんを行使こうしすることができるということを意味いみしています。

今回こんかいの基準きじゅんで、質問しつもん権けんを行使こうしすることのできる範囲はんいが、従来じゅうらいと比くらべて格段かくだんに広ひろくなったといえます。

解散かいさん命令めいれいの請求せいきゅうをしやすくなったということですか？

質問しつもん権けんを行使こうしするハードルは下さがったかもしれません。しかし質問しつもん権けんと解散かいさん命令めいれいの請求せいきゅうについては分わけて考かんがえる必要ひつようがあります。解散かいさん命令めいれいの請求せいきゅうにあたっては、「法令ほうれいに違反いはんして、著いちじるしく公共こうきょうの福祉ふくしを害がいすると明あきらかに認みとめられる行為こういをしたこと」など、要件ようけんを満みたしていると証明しょうめいする必要ひつようがあります。それらの証明しょうめいをするまでの、入り口いりくちのハードルが下さがったからといって、最後さいごの部分ぶぶんのハードルは変かわっていないと思おもいます。

今後こんごの焦点しょうてんは？

この基準きじゅんをもとに、どのような運用うんようがされるかということです。宗教しゅうきょう法人ほうじんが適正てきせいに運営うんえいされるように調査ちょうさすることが大事だいじな一方いっぽうで、行政ぎょうせい機関きかんがむやみに権限けんげんを行使こうしして信教しんきょうの自由じゆうを損そこなうことがあってはならなりません。そのバランスが重要じゅうようです。新あらたな基準きじゅんができたので、所轄しょかつする行政ぎょうせい機関きかんは政治せいじに左右さゆうされることなく、法律ほうりつ上じょうの問題もんだいとして判断はんだんをしていくべきだと思おもいます。

「質問しつもん権けん」の行使こうし今後こんご想定そうていされる動うごき

「質問しつもん権けん」の行使こうしで今後こんご想定そうていされる動うごきについてまとめました。

質問しつもんしたあとはどうなる？

文部もんぶ科学かがく省しょうは、解散かいさん命令めいれいに該当がいとうしうる事実じじつ関係かんけいを把握はあくした場合ばあい、調査ちょうさの途中とちゅうでも地方ちほう裁判所さいばんしょへの解散かいさん命令めいれいの請求せいきゅうを検討けんとうするとしています。請求せいきゅうがあった場合ばあい、地方ちほう裁判所さいばんしょは、文部もんぶ科学かがく省しょうや旧きゅう統一とういつ教会きょうかいから意見いけんを聞きいたうえで、解散かいさん命令めいれいを出だすかどうか判断はんだんします。文部もんぶ科学かがく省しょうや旧きゅう統一とういつ教会きょうかいは、裁判所さいばんしょの判断はんだんに不服ふふくがある場合ばあい、高等こうとう裁判所さいばんしょや最高さいこう裁判所さいばんしょに申し立もうしたてることができます。