日本新聞: 太陽光発電施設の立地を分析 1100か所余に土砂災害リスク

太陽光たいようこう発電はつでんの急速きゅうそくな普及ふきゅうが進すすむ中なか、ここ数すう年ねん、斜面しゃめんに設置せっちされた施設しせつで土砂どしゃ災害さいがいが相次あいついでいます。専門せんもん家かのデータをもとに全国ぜんこくの中規模ちゅうきぼ以上いじょうの太陽光たいようこう発電はつでん施設しせつの立地りっちを分析ぶんせきしたところ、災害さいがいリスクのある「土砂どしゃ災害さいがい危険きけん箇所かしょ」と一部いちぶでも重かさなっていた施設しせつは全国ぜんこくで1100か所かしょ余あまりにのぼることがわかりました。専門せんもん家かは「災害さいがいの危険きけん性せいを評価ひょうかする仕組しくみやリスクのある場所ばしょでの設置せっちを抑制よくせいする必要ひつようがある」と指摘してきしています。

斜面しゃめんに設置せっちされた太陽光たいようこう発電はつでん施設しせつではここ数すう年ねん、土砂どしゃ災害さいがいが相次あいついでいて、経済けいざい産業さんぎょう省しょうによりますと、3年ねん前まえの西日本にしにほん豪雨ごううで合あわせて11件けん確認かくにんされ、神戸こうべ市しでは一時いちじ、山陽さんよう新幹線しんかんせんが止とまるなどの影響えいきょうが出でました。

NHKは国立こくりつ環境かんきょう研究所けんきゅうじょが航空こうくう写真しゃしんなどから割り出わりだした、発電はつでん出力しゅつりょく500キロワット以上いじょうの中規模ちゅうきぼ施設しせつの位置いちデータと土砂どしゃ災害さいがいリスクの地図ちずデータとを重ね合かさねあわせて分析ぶんせきしました。

その結果けっか、対象たいしょうとなった9809か所かしょのうち、土砂どしゃ災害さいがいが起おきて住宅じゅうたくや公共こうきょう施設しせつなどに被害ひがいを与あたえるおそれのある「土砂どしゃ災害さいがい危険きけん箇所かしょ」と一部いちぶでも重かさなっていたのは全体ぜんたいの1割わりを超こえる、少すくなくとも1186か所かしょにのぼることがわかりました。

種類しゅるい別べつにみますと

▽「土石流どせきりゅう危険きけん渓流けいりゅう」に724か所かしょ

▽「急きゅう傾斜けいしゃ地ち崩壊ほうかい危険きけん箇所かしょ」に463か所かしょ

▽「地じすべり危険きけん箇所かしょ」に77か所かしょとなっています。

（重複じゅうふくあり）

また、避難ひなんなどの対策たいさくが必要ひつような「土砂どしゃ災害さいがい警戒けいかい区域くいき」と一部いちぶでも重かさなっていた施設しせつも843か所かしょあり、このうち249か所かしょは特とくに危険きけん性せいの高たかい「土砂どしゃ災害さいがい特別とくべつ警戒けいかい区域くいき」と重かさなっていました。

国くにの法律ほうりつでは一部いちぶの例外れいがいを除のぞき災害さいがいリスクのある場所ばしょでの設置せっちを規制きせいする法律ほうりつはなく、実質じっしつ的てきな規制きせいは自治体じちたいに委ゆだねられているのが現状げんじょうです。

「地方ちほう自治じち研究けんきゅう機構きこう」によりますと、設置せっちの規制きせいに関にかんする条例じょうれいを制定せいていする自治体じちたいが増ふえていて、ことし7月つき時点じてんで4つの県けんと148市町村しちょうそんにのぼっています。

土木どぼく工学こうがくが専門せんもんで山梨やまなし大学だいがく大学院だいがくいん土木どぼく環境かんきょう工学こうがく科かの鈴木すずき猛たけし康かん教授きょうじゅは「現状げんじょうはどこにリスクがあるかも把握はあくできておらず、住民じゅうみんの知しらないところで災害さいがいリスクが高たかまっている場所ばしょも実際じっさいにある。国くにはリスクを把握はあくして評価ひょうかする仕組しくみのほか、危険きけんな場所ばしょには設置せっちを抑制よくせいするなど安全あんぜんに関にかんする規制きせいを早急そうきゅうに整ととのえていく必要ひつようがある」としています。

施設しせつ建設けんせつ中ちゅう 2度どにわたり土砂どしゃ災害さいがい発生はっせいの町まちも

太陽光たいようこう発電はつでん施設しせつの建設けんせつ中ちゅう、2度どにわたって土砂どしゃ災害さいがいが起おきた町まちもあります。

埼玉さいたま県けん越生おごせ町まちではおととし3月つきと10月つき、太陽光たいようこう発電はつでん施設しせつの建設けんせつ現場げんばで2度どにわたり土砂どしゃ災害さいがいが発生はっせいしました。

1度目どめは巨大きょだいな石いしが落下らっかし、町まち道どうがふさがれました。

町まちによりますとその後そのご、安全あんぜん対策たいさくを業者ぎょうしゃに求もとめたものの十分じゅうぶん行おこなわれないまま工事こうじは再開さいかいされ、7か月かげつ後ごに崖がけ崩くずれが起おきたということです。

人的じんてきな被害ひがいはなかったものの、生活せいかつ道路どうろにもなっている町まち道どうが1週間しゅうかん通行止つうこうどめとなり、住民じゅうみん生活せいかつにも大おおきな影響えいきょうが出でたということです。

この場所ばしょは住宅じゅうたくなどに被害ひがいが及およぶおそれがある「土砂どしゃ災害さいがい危険きけん箇所かしょ」に指定していされていましたが、当時とうじ、土砂どしゃ災害さいがいリスクを理由りゆうにこの場所ばしょでの建設けんせつそのものを禁止きんしする法律ほうりつや条例じょうれいなどはありませんでした。

施設しせつのすぐ近ちかくに住すむ女性じょせいは「台風たいふうの時ときに崩くずれてしまわないか本当ほんとうに心配しんぱいになります。せめて今いまの施設しせつを安全あんぜんなものにしてほしい」と話はなしていました。

崖がけ崩くずれの発生はっせいを受うけて町まちは事業じぎょう者しゃに対策たいさくを求もとめる行政ぎょうせい指導しどうを繰り返くりかえし行おこないました。

事業じぎょう者しゃは排水はいすい路ろの整備せいびなどの対策たいさく工事こうじを5月つき末まつまでに行おこなうと住民じゅうみんに説明せつめいしたものの工事こうじは終おわっていません。

一方いっぽう、発電はつでんは2月つき下旬げじゅんから始はじまっているということです。

事業じぎょう者しゃはNHKの取材しゅざいに対にたいし「工事こうじを依頼いらいした会社かいしゃが倒産とうさんし対策たいさく工事こうじが先さき延のばしになっている。住民じゅうみんの皆様みなさまには誠実せいじつに対応たいおうしていきたい」としています。

今回こんかいの災害さいがいを受うけ、越生おごせ町まちは崖がけ崩くずれや土石流どせきりゅうなどが起おきるおそれがある災害さいがいリスクの高たかい地域ちいきを「抑制よくせい区域くいき」とするなど、太陽光たいようこう発電はつでんの設置せっちを規制きせいする条例じょうれいの制定せいていに向むけ検討けんとうを進すすめています。

越生おごせ町まちの新井あらい康之やすゆき町長ちょうちょうは「再生さいせい可能かのうエネルギーの推進すいしんの必要ひつよう性せいは認みとめるが、町まちとしては住民じゅうみんの生命せいめい・財産ざいさんが第だい一いちだ。国くにの法律ほうりつでは太陽光たいようこう発電はつでん施設しせつの安全あんぜんについて具体ぐたい的てきな規制きせいの在り方ありかたが示しめされておらず、町まちにできる対応たいおうには限界げんかいがある。リスクのある場所ばしょでの立地りっち規制きせいや危険きけんな施設しせつへの指導しどう強化きょうかなど、国くにには安全あんぜん対策たいさくの在り方ありかたについてさらなる検討けんとうを求もとめたい」と話はなしています。

国くに土砂どしゃ災害さいがいリスクのある地域ちいきを「促進そくしん区域くいき」から除外じょがい検討けんとう

太陽光たいようこう発電はつでん施設しせつをはじめとする再生さいせい可能かのうエネルギーの立地りっちをめぐって、国くにはことし5月つきに改正かいせいした地球ちきゅう温暖おんだん化か対策たいさく推進すいしん法ほうの中なかで、再生さいせい可能かのうエネルギーの円滑えんかつな導入どうにゅうにつなげるため全国ぜんこくの市区しく町村ちょうそんに「促進そくしん区域くいき」を指定していするよう求もとめています。

背景はいけいには建設けんせつなどをめぐって住民じゅうみんトラブルになっている例れいもあるためで、自然しぜん環境かんきょうの保全ほぜんなどに影響えいきょうのあるところは除のぞく方針ほうしんとしています。

しかし近年きんねん、太陽光たいようこう発電はつでん施設しせつなどでの災害さいがいや立地りっちに対にたいして不安ふあんの声こえが相次あいついでいることを受うけ、土砂どしゃ災害さいがいのリスクのある地域ちいきは「促進そくしん区域くいき」としない方向ほうこうで検討けんとうを進すすめることにしています。

ただ、土砂どしゃ災害さいがいリスクがあるとして「促進そくしん区域くいき」に指定していされなかったとしても、太陽光たいようこう発電はつでん施設しせつなどの建設けんせつが規制きせいされるわけでは無ないということです。

設置せっち規制きせいの条例じょうれい制定せいていする自治体じちたい相次あいつぐ

太陽光たいようこう発電はつでん施設しせつをめぐって災害さいがいやトラブルが起おきていることを受うけて、設置せっちを規制きせいするための条例じょうれいを制定せいていする自治体じちたいが相次あいついでいます。

地方ちほう行政ぎょうせいについて調査ちょうさや研究けんきゅうを行おこなっている「地方ちほう自治じち研究けんきゅう機構きこう」によりますと、太陽光たいようこう発電はつでん施設しせつの設置せっちを規制きせいする条例じょうれいは平成へいせい26年ねんごろから各地かくちの自治体じちたいで制定せいていされるようになり、今月こんげつ13日にち時点じてんで4つの県けんと148市町村しちょうそんにのぼっているということです。

このうち4分ぶんの3にあたる3つの県けんと110市町村しちょうそんは平成へいせい30年ねん以降いこうに条例じょうれいを制定せいていしていて、ここ数すう年ねんで急増きゅうぞうしているということです。

規制きせいの内容ないようは自治体じちたいによってさまざまですが、設置せっちを禁止きんししたり抑制よくせいしたりする区域くいきを設もうけるものや設置せっちの際さいに届け出とどけでや地元じもとの同意どういを義務ぎむづけるもの、それに自治体じちたいの命令めいれいに従したがわない事業じぎょう者しゃに罰金ばっきんや過料かりょうを求もとめるものなどがあります。