日本新闻: “一人で苦しまないで” 子どもの自殺過去最多の去年を上回る

新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうが長期ちょうき化かする中なか、ことし7月つきまでに自殺じさつした小中こなか学生がくせいや高校生こうこうせいは270人にんと、年間ねんかんで過去かこ最多さいたとなった去年きょねんの同おなじ時期じきを上回うわまわっています。

例年れいねん、夏休なつやすみ明あけのこの時期じきは、自殺じさつが増ふえる傾向けいこうにあることから、支援しえんの現場げんばでは危機きき感かんを強つよめています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうの統計とうけいによりますと、ことし1月つきから先月せんげつまでに自殺じさつした児童じどう生徒せいとの数かずは暫定ざんてい値ちで270人にんとなっていて、年間ねんかんで過去かこ最多さいたの499人にんとなった去年きょねんの同おなじ時期じきを29人にん上回うわまわっています。

このうち、小学生しょうがくせいは7人にん、中学生ちゅうがくせいは75人にん、高校生こうこうせいは188人にんでした。

去年きょねんの子こどもの自殺じさつが過去かこ最多さいたとなったことをめぐり、対応たいおう策さくを検討けんとうした文部もんぶ科学かがく省しょうの専門せんもん家か会議かいぎは、コロナ禍かの影響えいきょうとして、休校きゅうこうで在宅ざいたく時間じかんが長ながくなり、家庭かていに居場所いばしょを感かんじられない子こどもが、息苦いきぐるしい思おもいをした可能かのう性せいは否いなめないと指摘してきしているほか、学校がっこうでの活動かつどうを通をとおして目標もくひょうや達成たっせい感かんを得える機会きかいが失うしなわれたことや、悩なやみを相談そうだんすることも難むずかしくなったことが背景はいけいにあると分析ぶんせきしています。

さらに、例年れいねん、夏休なつやすみ明あけのこの時期じきは、子こどもの自殺じさつが増ふえる傾向けいこうにあることから、支援しえん団体だんたいや学校がっこう現場げんばでは危機きき感かんを強つよめていて、コロナ禍かの影響えいきょうで厳きびしい状況じょうきょうが続つづく子こどもたちの居場所いばしょやつながりを作つくったり、SOSを出だしやすくなる教育きょういくを進すすめたりして、命いのちを支ささえる取り組とりくみを進すすめています。

「生いきづらい。死しにたい」悲痛ひつうな叫さけび相談そうだん増加ぞうか

コロナ禍かが長期ちょうき化かする中なかで、中学生ちゅうがくせいや高校生こうこうせいなどの支援しえんを続つづける現場げんばには、生いきづらさを抱かかえた子こどもや若者わかものから多おおくの相談そうだんが寄よせられています。

NPO法人ほうじん「若者わかものメンタルサポート協会きょうかい」では、ボランティアスタッフ40人にん余あまりが、24時間じかん365日にちの態勢たいせいで、全国ぜんこくの10代だいからSNSで寄よせられる相談そうだんに対応たいおうしています。

先月せんげつの相談そうだん件数けんすうは3万まん件けん余あまりと、コロナ禍かで増ふえていた去年きょねんの同おなじ時期じきよりも6000件けん近ちかく多おおくなり、今月こんげつに入はいってからは、さらに増ふえているということです。

最近さいきんの特徴とくちょうとしては、コロナ禍かが長期ちょうき化かする中なかで、これまで問題もんだいを抱かかえていなかった子こどもが、生活せいかつや家庭かてい環境かんきょうの変化へんかで生いきづらさを感かんじて相談そうだんを寄よせるケースが多おおくなっているほか、疲労ひろうや先さきの見みえない不安ふあんがストレスとして蓄積ちくせきされ「死しにたい」と訴うったえる子こどもの数かずも、増加ぞうかしているということです。

実際じっさいに寄よせられた相談そうだんでは「コロナのせいで家族かぞく関係かんけいが最悪さいあくになった。居場所いばしょが完全かんぜんになくなった」とか「生いきづらい。死しにたい」など、子こどもたちの悲痛ひつうな叫さけびがつづられていました。

団体だんたいでは、こうした子こどもたちを孤立こりつさせないよう週しゅうに3日にち、夜よるの2時間じかん「オンライン居場所いばしょ」と名付なづけた取り組とりくみを行おこなっています。

オンライン上じょうに専門せんもんのスタッフが常駐じょうちゅうし、参加さんかした子こどもたちが互たがいに顔かおをみながら会話かいわできる場ばで、日頃ひごろの出来事できごとやコロナ禍かで感かんじる疲つかれや負担ふたんを互たがいに伝つたえあっていました。

理事りじ長ちょうの岡田おかだ沙織さおりさんは「コロナになって初はじめて死しにたいと思おもうようになった子こどもも増ふえているし、潜在せんざい的てきにそう思おもっていた子こが、より深ふかく死しにたいという思おもいを抱いだくケースもある。コロナ禍かで逃げ場にげば所しょもなくなり追い詰おいつめられている子こどもが多おおい。画面がめん上じょうでも、夜よるのつらくなる時間じかん帯たいに集あつまれる場所ばしょがあることが、こんなにも子こどもの励はげみや支ささえになるのかと手応てごたえを感かんじており、つながれる安心あんしん感かんが重要じゅうようだ」と話はなしていました。

居場所いばしょの確保かくほが命いのちを支ささえる

コロナ禍かが長期ちょうき化かする中なか、家庭かていの事情じじょうなどで食事しょくじや居場所いばしょを確保かくほできない子こどもたちのため、感染かんせん対策たいさくを講こうじて受け入うけいれの場ばを維持いじしている団体だんたいもあります。

東京とうきょう調布ちょうふ市しのNPO法人ほうじん「青少年せいしょうねんの居場所いばしょKiitos」は、家庭かていにいづらい10代だいや20代だいの若者わかものを支援しえんしようと、11年ねん前まえから居場所いばしょを提供ていきょうする取り組とりくみを続つづけています。

60人にんを超こえるボランティアの協力きょうりょくで運営うんえいされ、手作てづくりの昼食ちゅうしょくと夕食ゆうしょくを無償むしょうで提供ていきょうしています。

中なかには、学校がっこうや部活ぶかつ、バイト帰がえりに毎日まいにち立ち寄たちよる利用りよう者しゃもいるということで、仲間なかまと思い思おもいおもいの時間じかんを過すごしたり、スタッフに家いえではできない進路しんろの相談そうだんをしたりする姿すがたが見みられました。

一方いっぽう、感染かんせんが拡大かくだいする中なかで居場所いばしょを開設かいせつし続つづけることについて、はじめて緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんが出だされた去年きょねんの4月つきごろは、ボランティアからも批判ひはんの声こえがあがったということですが、家庭かていの事情じじょうで家いえで食事しょくじをとれない子こどもや、安心あんしんして過すごせる場ばがない子こどもも多おおいため、感染かんせん対策たいさくを徹底てっていしながら受け入うけいれを続つづけています。

高校こうこう3年生ねんせいの女子じょし生徒せいとは「家いえでは、ごはんが出でないけど、ここに来くると夜よる遅おそくに帰かえってきても手作てづくりのごはんを食たべられるし、会話かいわができる相手あいてがいるので全然ぜんぜん違ちがいます。閉しまってしまうと困こまります」と話はなしていました。

NPO法人ほうじんの白旗しらはた眞まこと生なま代表だいひょうは「もともと居場所いばしょがない子こどもたちがここに来きているので、閉しめることはできません。感染かんせん対策たいさくに気きをつけながら活動かつどうを、これまでと同様どうように継続けいぞくしていくことが、子こどもたちの命いのちを支ささえるうえで大切たいせつだと考かんがえています」と話はなしていました。

“表情ひょうじょうに気きを配くばり声こえかけを” 学校がっこう現場げんばで模索もさく

感染かんせん拡大かくだいの長期ちょうき化かにより、例年れいねんと異ことなる夏休なつやすみとなった中なか、学校がっこう現場げんばでは、子こどもに異変いへんがあればいち早いちはやくキャッチしようと模索もさくが続つづけられています。

東京とうきょう足立あだち区くの渕ふち江中えなか学校がっこうでは、コロナ禍かで夏休なつやすみ中ちゅうの部活ぶかつが原則げんそく中止ちゅうしとなるなど、例年れいねん以上いじょうに長期ちょうき間かん、生徒せいとの様子ようすが見みえにくくなっていることから、夏休なつやすみ終盤しゅうばんの26日にち、独自どくじに登校とうこう日びを設もうけました。

朝あさの会議かいぎで伊東いとう一いち校長こうちょうが「生徒せいとの状況じょうきょう把握はあくが第だい1なので、表情ひょうじょうなどの確認かくにんのほか、欠席けっせきしている生徒せいとには連絡れんらくして、不安ふあんを取り除とりのぞく声こえかけを行おこなってほしい」と呼よびかけました。

教員きょういんたちは各かくクラスで、生徒せいとの出欠しゅっけつをとったり提出ていしゅつ物ぶつの回収かいしゅうをしたりしながら、声こえのトーンや表情ひょうじょうに気きを配くばり、欠席けっせきした生徒せいとには電話でんわをかけて、変かわったことや心配しんぱいなことがないか確認かくにんしていました。

伊東いとう校長こうちょうは「今いまの感染かんせん状況じょうきょうで生徒せいとを集あつめることに迷まよいもありましたが、対面たいめんでしかわからない生徒せいとの様子ようすを把握はあくすることが大切たいせつだと考かんがえ、登校とうこうしてもらいました。コロナ禍かでコミュニケーションがとりづらくなっている中なか、教員きょういんもアンテナを高たかく張はって、生徒せいとの変化へんかをキャッチしていきたい」と話はなしていました。

また、足立あだち区くでは、子こどもたち自身じしんにも、つらい気持きもちや悩なやみを発信はっしんできる力ちからを身みにつけてもらおうと、7年ねん前まえから区く全体ぜんたいで「SOSの出だし方かたに関にかんする教育きょういく」に取り組とりくんでいます。

この教育きょういくでは「消きえたい」という気持きもちを抱かかえたり、自分じぶんに自信じしんが持もてなかったりと、心こころが苦くるしくつらい時ときに、ストレスを和やわらげる対処たいしょ方法ほうほうとして、深呼吸しんこきゅうをする、いらない紙かみを破やぶる、大声おおごえで叫さけんだり歌うたったりする、気持きもちを文章ぶんしょうに表あらわすなどと具体ぐたい的てきに紹介しょうかいしています。

そして「勇気ゆうきを出だして信頼しんらいできる人ひとに自分じぶんの悩なやみを話はなすことは、恥はずかしいことではない」というメッセージを継続けいぞくして伝つたえているといいます。

取り組とりくみを重かさねる中なか、ことし区内くないの小しょう中学生ちゅうがくせいに行いったアンケート調査ちょうさでは「相談そうだんできる人ひとがいる」と回答かいとうした子こどもが98％に上のぼっているということです。

足立あだち区く教育きょういく委員いいん会かい教育きょういく指導しどう課かの八尋やひろ崇たかし課長かちょうは「教員きょういんを含ふくめ、周囲しゅういの大人おとなが変化へんかを見みていかなければならないが、大人おとなが察知さっちして手てを差し伸さしのべられるケースばかりではないので、子こどもたちからも話はなしができる環境かんきょうを作つくっていかなければいけないと感かんじています」と話はなしていました。

専門せんもん家か「周囲しゅういの大人おとなたち寄り添よりそう力ちからを高たかめる必要ひつよう」

子こどもの自殺じさつに詳くわしい国立こくりつ精神せいしん・神経しんけい医療いりょう研究けんきゅうセンターの松本まつもと俊彦としひこ部長ぶちょうは、児童じどう生徒せいとの自殺じさつが増加ぞうかしている現状げんじょうについて「子こどもの生活せいかつに、さまざまな制限せいげんが加くわわり逃げ場にげばがなくなる中なかで、もともとしんどかった子こどもたちの存在そんざいがより鮮明せんめいに現あらわれてきていて、それが統計とうけいにも反映はんえいされている。影響えいきょうが長期ちょうき化かする中なかで、大人おとな以上いじょうに先さきの見みえなさで霧きりが濃こくなっている状態じょうたいで、将来しょうらいを思い描おもいえがくのに必要ひつような情報じょうほうが少すくなくなっていることも不安ふあんを高たかめている」と指摘してきしています。

そのうえで「しんどい子こどもたちがSOSを出だせる最後さいごの砦とりでとして、友達ともだちの存在そんざいがあるが、コロナ禍かで友達ともだちとのつながりが分断ぶんだんされ、薄うすくなっていることも、関係かんけいしている可能かのう性せいがある」として、感染かんせん拡大かくだいが長期ちょうき化かする現状げんじょうへの懸念けねんを示しめしました。

松本まつもとさんは、周囲しゅういの大人おとなたちに求もとめられる対応たいおうとして、子こどもの様子ようすに異変いへんを感かんじた時ときには積極せっきょく的てきに声こえをかけ、話はなしを聞きく用意よういがあることを伝つたえるとともに、子こどもから悩なやみ事ごとを打ち明うちあけられた時ときや「死しにたい」とSOSを出だされた時ときに、否定ひていせずに受け止うけとめ、寄り添よりそうことができる力ちからを高たかめる必要ひつようがあると指摘してきしています。

感染かんせん拡大かくだいが続つづく中なかで、子こどもの自殺じさつが増ふえる傾向けいこうにある夏休なつやすみ明あけの時期じきを迎むかえることから「家庭かていも学校がっこうも、つらいという子こどもたちがたくさんいる。学校がっこうでも家庭かていでもない第だい3の場所ばしょを持もっているか持もっていないかが、その子この生いきづらさを変かえていくと思おもう。感染かんせん拡大かくだい防止ぼうしは重要じゅうようだが、子こどもの心こころを生いきながらえさせるために、多様たような居場所いばしょづくりを工夫くふうしていく必要ひつようがある。子こどもたちの相談そうだん場所ばしょや社会しゃかい資源しげんについても、いろいろな形かたちで情報じょうほう発信はっしんし、子こどもの目めに入はいるようにしておくことが大事だいじだ」と指摘してきしています。