東京・渋谷で50人に話を聞き、本音を探ってみました。
結果は、「つける」が32人、「つけない(つけたくない)」が16人、「決められない」が2人。
(「つける」と答えた人)
「周りの人が感染したらかわいそうだから」
「人づきあいとか、つけたほうがなんとなく楽にもなってきている」
(「つけない(つけたくない)」と答えた人)
「つけないほうがやっぱり快適」
「本音はつけたくない。相手の顔もよく分からない」
一方、決めづらいという声も。
(「決められない」人)
「みんなしているのでつけない訳にはいかないという気持ちがありつつ本音では、苦しいしメイクも落ちるしつけたくない」
学校現場を訪ねてみるとコロナ感染前には見られなかった光景に出会いました。 訪ねたのは東京・墨田区にある菊川小学校。
2年前、マスク姿で入学した1年生は今月、3年生に進級しています。 その子どもたちにマスク生活が続くことをどう思っているのか、聞いてみたところ…。 (3年生の児童) 「ずっとしているからマスクはもう慣れた」 「慣れているけど、やっぱり外した方が、話しやすいし人の口の動きもわかる」 飛まつ対策を進める中でもっとも大きな影響を受けた授業のひとつが音楽です。 この2年間、音楽の授業ではマスクを外して行うハーモニカなどの楽器の演奏はもちろん、みんなで歌うこともできませんでした。 しかし、新年度になって初めての授業で、ある変化がありました。 入学後初めて、授業で歌うことにしたのです。 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出ていなければ、マスクなどの対策をとったうえで歌ってよいという、新たな区の指針に基づき判断しました。 そして、子どもたちが歌ったのは「小さな世界」。
そして、マスクをしたまま壁や窓に向かって歌っていました。 (3年生の児童) 「初めてみんなで歌って、どきどきしたけど楽しかった」 「マスクをしたままだと歌いづらいけどまあ歌える」 「壁を見ながらだったけど、みんながどんな風に歌っているか見てみたかった」 教員も子どもたちの変化を感じながら本来の授業の形に近づけていく必要性も感じていました。
「子どもたちが楽しんでいる様子が伝わってきました。ただ、歌う機会が少なかったのであまり声が出ていなかった。みんなで歌い、演奏する経験が音楽にとってどれだけ大事かこの2年痛感しています。代わりに何ができるかいろいろな方法も考えてきたが今後は対策をとりながら少しずつでもこれまでのような機会をつくることが大切だと感じています」 校長は学校生活でマスクを完全に外すまでにはまだ時間がかかるのではないかと話します。
「それぞれ教員ができなくなったことの代わりに何ができるか模索して工夫しています。ただ、ウイルスを学校の中に入れない、家庭に持ち帰らせないことが大事なのでマスク着用を安易に緩和するのは難しいのではないでしょうか。状況ごとに細かく決められた指針どおり、必要な場面では着け、不必要な場面では外すということを続けていくのが重要だと思います」
発達に深刻な影響も及ぼしかねないと保育の現場から声があがっています。 「離乳食を食べさせるときに大人がそしゃくのまねをして覚えさせるが、マスクで口元が見せられずかまずに飲み込んだ」(保育士) 「口元を見てことばを覚える時期なのに見せられない」(保育士) 子どもの脳の発達などに詳しい京都大学大学院の明和政子教授は、マスクの着用が子どもに与える影響を軽視することはできないと話します。
「子どもたちの脳は大人のミニチュア版ではないことを理解する必要がある。就学前は、脳の発達に重要な時期で目の前にいる相手の豊かに動く表情を見て人間の心の状態を理解しまねをしながら学ぶ。就学したあともイメージや推論をする脳の別の場所で発達が起こる。相手の心を理解する力をつけるために相手の顔の表情を見ることが手がかりになる。目だけしか見えない生活が続く影響は軽視できない」 そのうえで、現在のマスク着用のルールはどうしても大人中心になりがちで子どもの将来への影響まで考える必要があると指摘します。 (明和教授) 「完成した脳を持っている大人目線での生活様式をそのまま子どもにあてはめることはすでに2年がたち、限界がきているのではないか。マスクが長期化することで将来的に子どもにどのような影響があるか、10年、20年先まではっきり分からないなかで、子どもに与えうるリスクも考える必要がある。場面に応じてマスクを着脱できるような新しい生活様式を考えることが求められている」
マスクの着用は、欧米各国では義務づけられていましたが、ことしに入って次々と緩和されてきています。 欧米ではマスクをつけずに生活していて、コロナが拡大する前と変わらない様子を目にするようになってきています。
欧米の状況をまとめてみました。
アメリカでは、2022年3月25日、ハワイ州が屋内でのマスクの着用義務を終了し、50州すべてでマスクの着用義務がなくなりました。 CDC=疾病対策センターも2月、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いている地域では、マスクの着用は原則・不要とする指針を示しています。 1日の感染者数は、1月に100万人を超える感染拡大が起きたあと急激に減少し、3月以降は2万人から3万人台となっています。 《イギリス》 イギリスでは2021年の年末から2022年の初めにかけて、一日当たりの感染者が20万人を超えたあと、減少に転じ、1月27日、ロンドンのあるイングランドで屋内の公共施設でのマスク着用の義務が撤廃されました。 イギリス国内の感染者数は今月上旬でも一日当たり3万人を超えていますが、マスク着用の義務は撤廃されたままです。 《フランス》 フランスは、2月末にワクチン接種証明の提示を義務づけている美術館や飲食店などでのマスクの着用義務を撤廃しました。 ただ、公共交通機関やワクチン接種証明の提示義務がない屋内の公共の場所などでは、引き続きマスクの着用が義務づけられています。
法律での義務化はされてきませんでしたが、街を行き交う人たちのほぼ全員がマスクをしています。 海外との違いについて、海外の感染症対策に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、「マスクをつける習慣の違い」があると指摘します。
「多くの人がコロナ流行の前からマスクをつけることに抵抗がなかった日本とは違い、ヨーロッパやアメリカではマスクをつける習慣がなく、対策上どうしてもマスクが必要になったときに着用を法律で義務化するしかなかった。その義務が撤廃されたタイミングで多くの人がマスクを外しているということだと思う。日本ではそもそも法的に着用が義務化されていた訳ではなく、政府や専門家の呼びかけに応じてみんなが自然にマスクをつけるようになってきた。こうした背景の違いがあるのではないか」
今の感染状況でマスクは外せるのでしょうか。
4月12日には秋田県や佐賀県で感染者数が過去最多になるなど、これまで大都市部に比べ感染が拡大していなかった地域を中心に増加しています。
「XE」はまだ国内で広がっていませんが、イギリスの保健当局の資料では「BA.2」より感染が広がるスピードが12.6%速いと試算されています。
このため、マスクの着用は感染を広げない対策として有効です。 濱田特任教授は、感染者数が多く、増加に転じている状況では「マスクを外してもよい」とするのは難しいとしています。 マスクを外せるようになる条件について、濱田特任教授は「感染がある程度収まってくる時期になれば、『段階的にこんな場面であればマスクが外せる』といった呼びかけができると思う。日本でも全国で1日の感染者が1万人を下回るなど、ある程度感染者数の落ち着きが見られたうえで、3回目のワクチンの接種率がヨーロッパ並みの人口の60%ほどにまでなればいくつかの場面でマスクを外すことも可能になってくるのではないか」としています。
イギリスなどでは、感染者数が減少して、重症化する人の数も比較的抑えられていることがマスク着用の義務の撤廃の背景にあるということです。
(濱田 特任教授) 「今の段階であっても屋外であまり人がいないような状況であれば、感染したり感染させたりするリスクは小さいため、マスクを外してもよく、散歩などの際は問題はない。逆に人の集まる場面では必要になってくるので切り替えを臨機応変に行うことが大事になる。『常にマスクをせねばならない』というところから頭を切り替えて外してもよい場面があることを理解してもらう必要がある」 さらに、厚生労働省の専門家会合のメンバーで国際医療福祉大学の和田耕治教授も屋外で周りの人と話をしないような場面ではマスクは必要ないといいます。 そのうえで、マスクを外してもよい場面を具体的に知ってもらうことが大事だとしています。
そして、今の感染状況の中で、特に密集・密閉・密接の「3密」の1つでもあるような場所では、感染しない、感染させないためにマスクの着用が重要だということは、少なくともしばらくの間は変わらなそうです。 マスクの受け止め方は大人と子ども、欧米と日本でも異なります。 そして、マスクを外すかどうかは、感染状況だけでなく、それぞれの文化や社会の中で社会生活と感染対策のバランスをどうとるかということと密接に関係しています。 今後、マスクを外せる時が来るのか?その答えは専門家や政治家に判断を委ねるだけでなく、私たち自身が今後、コロナと共生しながらどんな社会を求めていくのかにも関わっているのかもしれません。
子どもたちの生活にも変化
“子どもの将来への影響を考えて”
マスクを外す欧米
各国のマスク規制の状況は
日本ではほぼ全員マスク
今の感染状況で外せる?
マスクは有効、感染状況からは外しにくい
いまでもマスク外せる場面ある
社会生活と感染対策のバランス