高齢こうれい者しゃのてんかん発症はっしょう増加ぞうか 医師いし会かいが無料むりょう検診けんしん 東京とうきょう 大田おおた区く

しかし、けいれんを伴ともなわず、物忘ものわすれや言語げんご障害しょうがいなど目立めだたない症状しょうじょうが多おおく、認知にんち症しょうと間違まちがわれるなどして、病気びょうきが見過みすごされやすいと指摘してきされています。

病気びょうきを発見はっけんし治療ちりょう薬やくを服用ふくようすれば多おおくの場合ばあい、症状しょうじょうが改善かいぜんするため、大田おおた区くの３みっつの医師いし会かいはことし７月しちがつから、高齢こうれい者しゃを対象たいしょうにした無料むりょうの認知にんち症しょう検診けんしんにてんかんのチェック項目こうもくを加くわえました。

「動作どうさが止とまることがある」、「何なにをしていたか覚おぼえていないことがある」など、てんかんの患者かんじゃによく見みられる症状しょうじょうが起おきていないか確認かくにんしています。

てんかんの疑うたがいがある場合ばあいには、医療いりょう機関きかんで詳くわしい検査けんさを受うけるように勧すすめます。

医師いし会かいによりますと、こうした取り組とりくみは全国ぜんこくでも珍めずらしいということです。

蒲田かまた医師いし会かいの高瀬たかせ義昌よしまさ理事りじは「隠かくれているてんかんの患者かんじゃを見つけ出みつけだし、うまく治療ちりょうにのせて行いきたい」と話はなしていました。

また、静岡しずおか県けん熱海あたみ市しにある国際こくさい医療いりょう福祉ふくし大学だいがく熱海あたみ病院びょういんでも、今月こんげつから人間ドックにんげんどっくにてんかんを見過みすごさないための脳波のうはなどの検査けんさを新あらたに加くわえることにしています。

交通こうつう事故じこにつながるケースも

高齢こうれい者しゃのてんかんが見過みすごされることで、交通こうつう事故じこにつながるケースがあることもわかってきました。

香川かがわ県けん高松たかまつ市しに住すむ光本みつもと和代かずよさん（71）は４よん年ねん前まえ、買い物かいもの帰がえりに車くるまを運転うんてんしていて道路どうろを横断おうだんする歩行ほこう者しゃに衝突しょうとつし、大だいけがをさせました。光本みつもとさんは事故じこを起おこしたことに気付きづかずそのまま走り去はしりさり、ひき逃ひきにげなどの疑うたがいで逮捕たいほされました。

その後そのごの検査けんさで、てんかんを発症はっしょうしていたことがわかり、裁判さいばんでは「意識いしき障害しょうがいが生しょうじていたため、事故じこを認識にんしきしていたとは認みとめられない」として無罪むざいになりました。光本みつもとさんは事故じこを起おこす数すう年ねん前まえから時々ときどきぼーぼ-っとしたり、口くちの中なかに違和感いわかんを感かんじたりすることがあり、複数ふくすうの病院びょういんを受診じゅしんしましたが、いずれの病院びょういんでも「異常いじょうなし」と診断しんだんされていました。

光本みつもとさんはてんかんの治療ちりょう薬やくを服用ふくようし始はじめると、症状しょうじょうが改善かいぜんしたということです。

光本みつもとさんは「いくつもの病院びょういんを訪たずねたが異常いじょうなしと言いわれるばかりで、不安ふあんな思おもいでいたやさきに事故じこを起おこしてしまった。ほかにも自分じぶんと同おなじように病気びょうきが見過みすごされている人ひとがいると思おもわれるが、事故じこは自分じぶんだけでなく、全然ぜんぜん関係かんけいない人ひとまで巻き込まきこんでしまうので、早期そうきに発見はっけんして治療ちりょうを受うけ事故じこを防ふせいでほしい」と訴うったえていました。

こうしたてんかんによる高齢こうれい者しゃの事故じこについて調査ちょうさしている医師いしがいます。

仙台せんだい市しにある広ひろ南みなみ病院びょういんの大沼おおぬま歩あゆみ医師いしは、過去かこに診察しんさつした50歳さい以上いじょうの患者かんじゃのうち、車くるまを運転うんてんしている81人にんについて詳くわしく分析ぶんせきしました。

その結果けっか、およそ４よん割わりにあたる33人にんがてんかんの治療ちりょうを受うける前まえに、運転うんてん中ちゅうに発作ほっさを起おこしていたことがわかりました。そして、そのうちの半数はんすうの16人にんは前まえの車くるまに追突ついとつしたり、路肩ろかたに衝突しょうとつするなどの事故じこを起おこしていたということです。

大沼おおぬま医師いしはこうした事故じこも、てんかんを見過みすごさず、適切てきせつに治療ちりょうをしていれば防ふせげたと考かんがえています。

大沼おおぬま医師いしは「高齢こうれいのてんかん患者かんじゃは、治療ちりょう薬やくが効ききやすく発作ほっさが抑おさえられるので、医療いりょう機関きかんが早期そうきに発見はっけんし治療ちりょうを進すすめることが大切たいせつだ。自覚じかく症状しょうじょうがない場合ばあいも多おおいので周囲しゅういの人ひとの気き付つきも重要じゅうようだ」と話はなしていました。

認知にんち症しょうと間違まちがわれ治療ちりょうが遅おくれた高齢こうれい者しゃも

てんかんを発病はつびょうした高齢こうれい者しゃの中なかには、一時いちじ、認知にんち症しょうと診断しんだんされて治療ちりょうが遅おくれた人ひともいます。

札幌さっぽろ市しに住すむ羽山はやま潔きよしさん（85）は70歳さいを超こえてから突然とつぜん、倒れ込たおれこんだり、物忘ものわすれをしたりするようになりました。

羽山はやまさんの当時とうじの手帳てちょうやノートには「数すう分間ふんかんと思おもわれる記憶きおく喪失そうしつが年としに数すう回かいある」、「カラオケサークルの新年しんねん会かいで歌うたっている最中さいちゅうに一瞬いっしゅん意識いしきを失うしなった」などと記しるされています。

羽山はやまさんは一時いちじ、認知にんち症しょうと診断しんだんされ２に年ねん近ちかく治療ちりょう薬やくをのみ続つづけましたが、症状しょうじょうは改善かいぜんしませんでした。

その後そのご、別べつの病院びょういんで脳波のうはの検査けんさを受うけ、てんかんを発病はつびょうしていることがわかり、治療ちりょう薬やくを服用ふくようすると症状しょうじょうがよくなったといいます。

羽山はやまさんは「当時とうじは突然とつぜん意識いしきを失うしなうのが不安ふあんで、趣味しゅみのカラオケや社交しゃこうダンスも中断ちゅうだんして外出がいしゅつを控ひかえていましたが、今いまは発作ほっさもなく、趣味しゅみも再開さいかいし、安心あんしんして生活せいかつしています」と話はなしていました。

羽山はやまさんを診察しんさつし、高齢こうれい者しゃのてんかんに詳くわしい旭川あさひかわ医科いか大学だいがくの千葉ちば茂しげる教授きょうじゅによりますと、高齢こうれいになってから発症はっしょうするてんかんの発作ほっさは、物忘ものわすれをしたり、ぼーぼ-っとしたりすることが多おおく、家族かぞくから認知にんち症しょうと疑うたがわれたり、医療いりょう機関きかんで誤診ごしんされるケースがあるということです。

千葉ちば教授きょうじゅは国内こくないにいる高齢こうれい者しゃのてんかん患者かんじゃは50万まん人にんを超こえると推計すいけいしていて、「誰だれでもかかりうる身近みぢかな病気びょうきであり、早期そうきに診断しんだんして的確てきかくな治療ちりょうにつなげることが大切たいせつだ」と話はなしています。