高齢こうれい者しゃの外出がいしゅつに“電動でんどう車くるまいす” 有効ゆうこう性せい調しらべる実証じっしょう実験じっけん始はじまる

電動でんどう車くるまいすは、座すわったままレバーを操作そうさして動うごかすことができ、速度そくどは人ひとが歩あるく程度ていどで、障害しょうがいがある人ひとや介護かいごの必要ひつような人ひとなどに利用りようされています。

経済けいざい産業さんぎょう省しょうは、高齢こうれい者しゃの運転うんてん免許めんきょの返納へんのうが増ふえ新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで公共こうきょう交通こうつう機関きかんの利用りようを控ひかえる動うごきも強つよまる中なか、電動でんどう車くるまいすが高齢こうれい者しゃの移動いどう手段しゅだんとして有効ゆうこうかどうか調しらべる実証じっしょう実験じっけんを始はじめました。

実験じっけんは全国ぜんこく5か所かしょで行おこなわれ、このうち横浜よこはま市し栄さかえ区くの団地だんちでは、65歳さい以上いじょうの高齢こうれい者しゃ10人にんに電動でんどう車くるまいすを3週間しゅうかん貸し出かしだします。

車くるまいすにはGPSが備そなわっていて、移動いどうした距離きょりなど利用りよう実態じったいを記録きろくして分析ぶんせきするほか、乗のり心地ごこちなどについて聞き取ききとり調査ちょうさを行おこないます。

早速さっそく電動でんどう車くるまいすを利用りようした人ひとは、団地だんち内ないを移動いどうしたり近所きんじょに買い物かいものに出でかけたりしていて、「乗のり心地ごこちがよい」とか「気持きもちが明あかるくなった」などと感想かんそうを話はなしていました。

電動でんどう車くるまいすは、安全あんぜん性せいの向上こうじょうや保管ほかん場所ばしょの確保かくほなどの課題かだいも指摘してきされていて、経済けいざい産業さんぎょう省しょうは実験じっけんを通をつうじて有効ゆうこう性せいや安全あんぜん性せいを確認かくにんしたうえで、普及ふきゅうに向むけた取り組とりくみを進すすめ、高齢こうれい者しゃの外出がいしゅつの機会きかいの増加ぞうかにつなげたいとしています。

背景はいけいには“免許めんきょ返納へんのう”や“外出がいしゅつ自粛じしゅく”

電動でんどう車くるまいすが高齢こうれい者しゃの移動いどう手段しゅだんの1つとして期待きたいされる背景はいけいには、運転うんてん免許めんきょの返納へんのうや、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうによる外出がいしゅつ自粛じしゅくがあります。

警察庁けいさつちょうの運転うんてん免許めんきょ統計とうけいによりますと、免許めんきょを返納へんのうした65歳さい以上いじょうの人ひとの数かずは平成へいせい26年ねんには20万まん8000人にん余あまりでしたが、去年きょねんは60万まん1000人にん余あまりと、5年間ねんかんで3倍ばい近ちかくに急増きゅうぞうしています。

日本にっぽん自動車じどうしゃ工業こうぎょう会かいが返納へんのう後ごの移動いどう手段しゅだんについて複数ふくすう回答かいとうで調査ちょうさしたところ、

電車でんしゃが59％、

バスが74％、

タクシーが65％、

徒歩とほが66％、

自転車じてんしゃが47％でしたが、

電動でんどう車くるまいすは3％でした。

地方ちほうでは公共こうきょう交通こうつう機関きかんの利便りべん性せいが低ひくいところも多おおく、体力たいりょくに自信じしんがない人ひとは徒歩とほや自転車じてんしゃでの移動いどうに限界げんかいもありますが、電動でんどう車くるまいすは比較的ひかくてき負担ふたんが少すくないのに選えらばれていないのが実態じったいです。道路どうろの段差だんさへの対応たいおうや狭せまい道みちでの走行そうこうなどの安全あんぜん性せいや外出がいしゅつ先さきでの保管ほかん場所ばしょの確保かくほなど環境かんきょう整備せいびの面めんでの課題かだいもあり、広ひろく普及ふきゅうするには至いたっていません。

一方いっぽう、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで高齢こうれい者しゃの間までは、外出がいしゅつを控ひかえる動うごきが続つづいています。

高齢こうれい者しゃの外出がいしゅつ頻度ひんどに関にかんする民間みんかんの調査ちょうさでは、ふだんから歩あるきづらさを感かんじている高齢こうれい者しゃのうち、外出がいしゅつが週しゅうに1回かい以下いかの人ひとは1年ねん前まえは全体ぜんたいの12％でしたが、感染かんせん拡大かくだい後ごのことし8月つきには全体ぜんたいの32％に増ふえました。

一方いっぽう、ほぼ毎日まいにち外出がいしゅつすると答こたえた割合わりあいは、1年ねん前まえは全体ぜんたいの31％でしたが、ことし8月つきは16％にまで減へっています。

感染かんせんを防ふせぐため電車でんしゃやバス、タクシーなどの利用りようを控ひかえているという声こえも出でていて、1人にんで外出がいしゅつできて行動こうどう範囲はんいも広ひろい電動でんどう車くるまいすへの期待きたいが高たかまっているという指摘してきもあります。

実験じっけんに参加さんかした人ひとは

実験じっけんに参加さんかした高齢こうれい者しゃからは、手軽てがるに移動いどうできるとか外出がいしゅつして人ひとと話はなす機会きかいが増ふえるといった電動でんどう車くるまいすに期待きたいする声こえが聞きかれました。

横浜よこはま市し栄さかえ区くの山田やまだ博明ひろあきさん（89）は妻つまの陸子むつこさんと2人にんで暮くらしています。

山田やまださんは9年ねん前まえに運転うんてん免許めんきょを自主じしゅ返納へんのうし、郊外こうがいに出でる時ときはバスなどを利用りようしていましたが、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいで最近さいきんは公共こうきょう交通こうつう機関きかんの利用りようを控ひかえ、なるべく自宅じたくからも出でないようにしています。

この日ひ、山田やまださんは電動でんどう車くるまいすを初はじめて体験たいけんし、乗のり心地ごこちを確認かくにんしながら自宅じたくから300メートル離はなれたコンビニに向むかいました。そして近所きんじょの人ひととの会話かいわを楽たのしみながら買い物かいものをしました。

山田やまださんは「乗のってみると快適かいてきでした。自分じぶんの思おもいどおりに動うごくのが楽たのしく、初はじめて車くるまに乗のった時ときを思い出おもいだしました。このような時期じきに久ひさしぶりに人ひとと会あえて話はなせたので精神せいしん面めんでも非常ひじょうによかったです。外そとに出でる機会きかいも増ふえると思おもいます」と話はなしていました。