子こどもの死亡しぼう経緯けいいを検証けんしょう「CDR」進すすむ 虐待ぎゃくたいや事故じこの再発さいはつ防止ぼうしへ

このうち、群馬ぐんま県けんでは12日にち、前橋まえばし市しで初はつ会合かいごうが開ひらかれ、病院びょういんや警察けいさつ、自治体じちたいなどからおよそ20人にんが出席しゅっせきしました。

会合かいごうでは、去年きょねん4月つきからことし9月つきまでに群馬ぐんま県内けんないで死亡しぼうした18歳さい以下いかの子こどものうち、把握はあくできた48人にんのケースについて意見いけんが交かわされました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうによりますと、去年きょねん1年間ねんかんに死亡しぼうした18歳さい以下いかの子こどもはおよそ3800人にんで、窒息ちっそくや溺おぼれて亡なくなるなど「不慮ふりょの事故じこ」の割合わりあいが大人おとなよりも多おおくなっているということです。

群馬ぐんま県けんでは、「不慮ふりょの事故じこ」や死因しいんがはっきりとわからないケースを中心ちゅうしんに死亡しぼうに至いたった経緯けいいを詳くわしく検証けんしょうし、今年度こんねんど中ちゅうに再発さいはつ防止ぼうしにつながる提言ていげんをまとめたいとしています。

中心ちゅうしんになって事業じぎょうを進すすめている前橋まえばし赤十字せきじゅうじ病院びょういんの溝口みぞぐち史ふみ剛つよし医師いしは、「事故じこや虐待ぎゃくたいによる子こどもの死しは、どこかの段階だんかいで支援しえんや対策たいさくがあれば防ふせげる可能かのう性せいが高たかい。ひとつひとつの事例じれいを丁寧ていねいに検証けんしょうし、再発さいはつ防止ぼうしにつなげる仕組しくみを整ととのえたい」と話はなしています。

「CDR＝チャイルド・デス・レビュー」とは

「チャイルド・デス・レビュー＝CDR」は、子こどもが死亡しぼうするまでのいきさつを調しらべて再発さいはつ防止ぼうしに生いかすための制度せいどです。

CDRでは、医療いりょう機関きかんや警察けいさつ、児童じどう相談そうだん所しょや自治体じちたいなどが連携れんけいし、子こどもが死亡しぼうした時ときの状況じょうきょうに加くわえて、家庭かてい環境かんきょうや生活せいかつ状況じょうきょう、それに病歴びょうれきなど、生いきていた時ときの詳くわしい情報じょうほうを共有きょうゆうします。

そのうえで、どの時点じてんで、どのような支援しえんや対策たいさくがあれば子こどもの死亡しぼうを防ふせぐことができたのかを検証けんしょうし、再発さいはつ防止ぼうしに向むけた提言ていげんをまとめます。

日本にっぽんでは、子こどもが病気びょうき以外いがいの理由りゆうで死亡しぼうした場合ばあい、虐待ぎゃくたいであれば厚生こうせい労働ろうどう省しょう、学校がっこうでの事故じこであれば文部もんぶ科学かがく省しょうと、ケースに応おうじて各かく省庁しょうちょうが調査ちょうさを行おこなっています。

しかし、すべての子こどもの死亡しぼう例れいを調しらべる仕組しくみは無なく、十分じゅうぶんな検証けんしょうがされないケースや、虐待ぎゃくたい死しの見逃みのがしなどが問題もんだい視しされてきました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは、「18歳さい以下いかの子こどもの死亡しぼう例れいすべてを省庁しょうちょうを横断おうだんして調しらべることで、より有効ゆうこうな再発さいはつ防止ぼうし策さくを講こうじられると考かんがえている」としています。

日本にっぽんでの取り組とりくみ状況じょうきょうは

CDRは、およそ40年ねん前まえからアメリカで始はじまり、日本にっぽんでも4年ねん前まえから厚生こうせい労働ろうどう省しょうの研究けんきゅう班はんが制度せいど化かに向むけた取り組とりくみを進すすめてきました。

ただ、日本にっぽんでは子こどもの死しにまつわる情報じょうほうは秘匿ひとく性せいが高たかく、遺族いぞくの感情かんじょうへの配慮はいりょなどもあり、関係かんけい機関きかんで情報じょうほうを共有きょうゆうすることの難むずかしさが大おおきな課題かだいとなっていました。

こうした中なか、去年きょねん12月つきに施行しこうされた「成育せいいく基本きほん法ほう」の中なかでは、国くにが子こどもの死因しいんに関にかんする情報じょうほうを集あつめて活用かつようするための体制たいせい整備せいびを進すすめていくことなどが盛り込もりこまれました。

これにもとづいて、厚生こうせい労働ろうどう省しょうは、今年度こんねんど、群馬ぐんまと山梨やまなし、三重みえ、京都きょうと、滋賀しが、香川かがわ、それに高知こうちの7つの府県ふけんで、体制たいせいづくりに向むけたモデル事業じぎょうを行おこなっています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうでは、この事業じぎょうを通をとおして課題かだいを洗い出あらいだし、2022年度ねんどをめどに遺族いぞくに配慮はいりょした情報じょうほうの収集しゅうしゅうや共有きょうゆうの在り方ありかたを検討けんとうし、子こどもが死亡しぼうするまでの経緯けいいを検証けんしょうできる体制たいせいづくりを進すすめていきたいとしています。

子こどもを事故じこで亡なくした遺族いぞく「再発さいはつ防止ぼうしに」

子こどもを事故じこで亡なくした遺族いぞくからは事故じこの背景はいけいまで踏み込ふみこんだ調査ちょうさを行おこなうことで再発さいはつの防止ぼうしにつなげてほしいという声こえが相次あいついでいます。

神奈川かながわ県けん大和やまと市しの伊い※禮康弘やすひろさん（46）は9年ねん前まえの平成へいせい23年ねん7月つき、当時とうじ3歳さいだった長男ちょうなん、貴弘たかひろくんを通とおっていた幼稚園ようちえんでのプール事故じこで亡なくしました。この事故じこは、警察けいさつの捜査そうさのほか、消費しょうひ者しゃ庁ちょうの安全あんぜん調査ちょうさ委員いいん会かい、いわゆる消費しょうひ者しゃ事故調じこちょうも調査ちょうさに入はいりました。

伊い禮さんによりますと調査ちょうさの結果けっか、幼稚園ようちえんのプールで遊あそんでいた際さいに立ち会たちあっていた教諭きょうゆが目めを離はなした間まに溺おぼれたことがわかりました。

伊い禮さんは、当時とうじの状況じょうきょうについて「妻つまからメールがあって気付きづきました。病院びょういんに着ついたら貴弘たかひろは心臓しんぞうマッサージを受うけていて、そのときに先生せんせいから『正直しょうじきもう助たすかりません』と聞きき、何なにがどうなっているのかわからなかったです」と話はなしています。

自宅じたくには、いまもリビングに貴弘たかひろくんが笑顔えがおで両親りょうしんと一緒いっしょに写うつった写真しゃしんが飾かざられています。幼おさない子こどもたちに人気にんきの「アンパンマン」の乗り物のりものや電車でんしゃのおもちゃも置おかれていて、伊い禮さんは、「息子むすこが悲かなしがると思おもって捨すてられないです」と話はなしていました。

伊い禮さんは、事故じこのあと、ほかの遺族いぞくとともに「チャイルド・デス・レビュー＝CDR」の勉強べんきょう会かいに参加さんかするなど再発さいはつ防止ぼうしのためにも活動かつどうしています。制度せいどに期待きたいする一方いっぽう、自身じしんの経験けいけんなどをもとに現状げんじょうの課題かだいも感かんじています。

伊い禮さんは、「遺族いぞくに対にたいする警察けいさつなどの対応たいおうにはばらつきがありこれだと共有きょうゆうどころか今後こんごの対策たいさくには生いかされません。自分じぶんの場合ばあいだと、幼稚園ようちえんの実態じったいまでは納得なっとくができるまで詳くわしく調査ちょうさされなかった。教諭きょうゆの救急きゅうきゅう対応たいおうや日頃ひごろからの注意ちゅういのしかたなど何なにを背景はいけいに起おこったのかがわかればよかった」と話はなし、地域ちいきによって警察けいさつや行政ぎょうせい機関きかんなどの姿勢しせいに温度おんど差さを感かんじられることや事故じこの背景はいけいにまで踏み込ふみこんだ調査ちょうさができるのか懸念けねんしています。

そのうえで、「子こどもの事故じこが繰り返くりかえされるたびに悔くやしく思おもう。遺族いぞくは真実しんじつを知しることで少すこしずつその真実しんじつを受け入うけいれて前まえに進すすもうとする。そして再発さいはつ防止ぼうしにつながる。自分じぶんと妻つまが当時とうじ、経験けいけんしたことを誰だれも経験けいけんしてほしくない」と話はなしていました。

※「禮」は「示」が「ネ」。

研究けんきゅう班はんのメンバー「情報じょうほうの取り扱とりあつかい法ほう整備せいびも検討けんとう必要ひつよう」

「CDR」では、病院びょういんや警察けいさつなどの関係かんけい機関きかんが子こどもの死亡しぼうに関にかんする情報じょうほうを共有きょうゆうして検証けんしょうしますが、個人こじん情報じょうほうの保護ほごの観点かんてんからスムーズに進すすまないことが課題かだいとなっています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうによりますと、CDRのために子こどもの個人こじん情報じょうほうを提供ていきょうすることや集あつめることは法律ほうりつ上じょう、問題もんだいないとされていますが、それぞれの自治体じちたいの条例じょうれいや病院びょういんの規則きそくなどにおける制限せいげんや、遺族いぞく感情かんじょうへの配慮はいりょなどから、情報じょうほうの提供ていきょうをためらう関係かんけい機関きかんも多おおいということです。

国くにの研究けんきゅう班はんのメンバーで、群馬ぐんま県けんのモデル事業じぎょうを中心ちゅうしんになって進すすめている前橋まえばし赤十字せきじゅうじ病院びょういんの溝口みぞぐち史ふみ剛つよし医師いしは、「亡なくなったことをことさらに取り扱とりあつかいたくないという日本にっぽん特有とくゆうの死生しせい観かんもあり、子こどもの死亡しぼうに関にかんする情報じょうほうの秘匿ひとく性せいは高たかく集あつめづらい状況じょうきょうにある。モデル事業じぎょうを通をつうじて、未来みらいの子こどもの命いのちを守まもるためにCDRが必要ひつようだという認識にんしきを広ひろめていくと共とともに、今後こんご、情報じょうほうの取り扱とりあつかいについて法ほう整備せいびも検討けんとうしていく必要ひつようがあるだろう」と指摘してきしています。