このうち、道路が陥没した場所から70メートルほど離れた住宅に住む近田眞代さん(75)は、来年の春、別の地域に引っ越すことを決めました。
近田さんはこの土地で結婚後から40年余り暮らしていて、15年前には家を建て直し、家族とともに暮らしてきました。
しかし、おととし、家の近くの道路が陥没しているのが見つかり、さらにその後の調査で、家のすぐそばの地中で空洞が見つかりました。
トンネル工事を行った東日本高速道路は、トンネルの真上部分にある一部の範囲の地盤が工事の影響で緩んでいるとして2年ほどかけて補修工事を行うため、この範囲にある住宅の一時的な移転や買い取りの交渉を進めています。
近田さんは当初、住み慣れた地域への愛着などから一時的に移転して戻ってこようと考えていました。
しかし、事業者が説明する期間で工事が終わるのか確信が持てず、終わりが見えない状況に疲れたとして、別の地域に引っ越すことを決めたといいます。
近田さんは、「住みやすく思い出もあるのでこのまま住んでいたいという気持ちは強いが、私たちには頑張ってずっとここにいる時間も精神力もない。この2年間でたくさんエネルギーを使い、道路の陥没の問題から離れて暮らしたいという気持ちになった」と話していました。
一方、近田さんは地域の人たちと一緒に、道路の陥没が見つかる前から継続して、事業者に対して、地下のトンネル工事の実施状況やリスクについて説明を求めてきました。
しかし、陥没などが見つかったあとに事業者が調査を行って明らかにした地盤の特性やそれに伴う工事のリスクなどについて、事前に十分な説明はなかったと指摘しています。
近田さんは、「下から突き上げるような振動などがあり、おかしいということは伝え続けてきたが結局、陥没が起きるまで対策はしてくれなかった。事業者は陥没が起こることを想定しておらず、リスクを伝える気持ちがなかったのではないかと感じる」と話していました。