来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、東京都は、ボランティア体験を希望する中学生と高校生を募集していますが、実際は具体的な人数が学校ごとに割りふられ、学校によっては半ば強制的に参加を求められていることがわかりました。専門家は「ボランティアに大事なのは、自発性だ」と批判しています。東京オリンピック・パラリンピックの期間中は、「大会ボランティア」や、「都市ボランティア」として、合わせて10万人を超えるボランティアが活動します。
こうした中、東京都は町なかで観光案内などをするボランティア体験として、都内の中学2年生から高校3年生を、およそ6000人募集する計画を立てています。
これについて都の教育委員会は、あくまで任意の参加と説明していますが、実際は中学校の場合、5人の生徒と引率する教員1人が割りふられていて、学校によっては半ば強制的に参加を求められていたことが関係者への取材でわかりました。
取材に応じた教員は「校内の教員集会で、『必ず決められた生徒数を出すように』と、校長からいわれた。参加者からは『強制だと、ボランティアの趣旨に反するのではないか』と反対の声が上がったが、最終的に決められた人数を出すことになった。これではボランティアではなくて動員ではないか」と証言しました。
都教育委員会は「集まった人数に関しては精査中なので明らかにできないが、一部を除く、ほとんどの学校から参加生徒の応募をいただいている。現場には、強制的なものではないと再三にわたって説明している」としています。
ボランティアの実態に詳しい東京大学大学院教育研究科の仁平典宏准教授は「ボランティアで大切なのは自発性や主体性で、ボランティア教育の名の下、それらが保証されずに行うのは奉仕活動だ。各校5人とか、割り当てるというのが、そもそもの順番が違う。上から強制という形でやるとか、創意工夫がない形でやらされると、やらされた受動的な経験となってしまう。子どもたちの自主性をベースとして、側面支援するのが、本来の教育の在り方だ」と話しています。