面会した赤羽国土交通大臣は「心からお悔やみ申し上げます。高齢者の免許返納が進んでいる一方で、日々の生活や公共交通機関をどうするか、さまざまな課題があるので、ぜひご意見を聞かせていただきたい」と述べました。
「関東交通犯罪遺族の会」の代表、小沢樹里さんは「メンバー一人ひとりが、自分たちのような思いを、ほかの人にさせたくないという思いを胸に、これ以上、犠牲者を出さないため、どうしたらいいかまとめました」と述べ、要望書を手渡しました。
要望書では、地方での公共交通機関の拡充や高齢ドライバーを対象にした医師の診断を条件とする運転免許の導入、それに、すべての車にドライブレコーダー設置を義務づけることなどを求めています。国土交通省などは要望を受けて、今後、対応を検討することにしています。
今回の要望書の提出には高齢ドライバーによる2件の交通事故の遺族が参加しました。
このうち、ことし4月、東京・池袋で起きた事故ではアクセルとブレーキを踏み間違えたとされる乗用車が暴走し、松永真菜さん(31)と長女の莉子ちゃん(3)が死亡しました。乗用車を運転していたのは旧通産省の幹部だった飯塚幸三元職員(88)で、過失運転致死傷の疑いで今月、書類送検されました。
家族を亡くした松永さんの夫は、これまでも交通安全を呼びかける記者会見などを開いて、事故対策を訴えています。
また、平成27年の12月、さいたま市浦和区で起きた事故では、当時、高校1年生で15歳だった稲垣聖菜さんが80歳の高齢ドライバーの車にはねられて死亡しました。
この事故もアクセルとブレーキの踏み間違いが原因でした。母親の智恵美さんは、インターネット上で署名を集めるなどして、高齢ドライバーの事故をどうすれば防げるのかを社会に問いかける活動を続けています。
大臣への要望を終えた遺族らは記者会見を開きました。
この中で、池袋の事故で妻と幼い娘を亡くした松永さんは「池袋の事故以降、免許返納数が増えたという話をしましたが、返納だけでは問題のすべての解決には至らないと大臣にお伝えしました」と述べました。
そのうえで、「車が必要な地方こそ、公共交通機関の拡充をお願いしたいです。単純計算で1日当たりおよそ8人が交通事故で死亡していることに、やりきれない思いをもっています。できるかぎり早く対策をお願いしたいです」と話しました。
また、さいたま市の事故で高校生の娘を亡くした稲垣智恵美さんは「母親にとって分身のようなわが子の命を突然失った悲しみは、ことばにできません。娘の死をむだにしたくない思いで、高齢ドライバーによる重大な事故のない社会にしたいという思いを伝えました」と述べました。
具体的な取り組みとして、「限定免許の導入とともに『安全運転サポート車』の開発の加速化が進むことを期待しています。ただし、『サポカー』はあくまでも運転の支援であり、ドライバーは常に安全運転を心がける必要があることも、世間に浸透させてほしいです」と訴えました。