日本新聞: アメリカザリガニとアカミミガメきょうから販売など禁止に

外来がいらい種しゅのアメリカザリガニとアカミミガメが1日にちから「条件じょうけん付づけ特定とくてい外来がいらい生物せいぶつ」に指定していされ販売はんばいなどが禁止きんしされます。

アメリカザリガニと、「ミドリガメ」とも呼よばれるアカミミガメは、当初とうしょ、餌えさ用ようやペット用ようとして輸入ゆにゅうされていましたが、繁殖はんしょく力りょくが強つよいため全国ぜんこく各地かくちに分布ぶんぷして固有こゆうの生態せいたい系けいに悪あく影響えいきょうを与あたえています。

そのため生態せいたい系けいを保護ほごする「改正かいせい外来がいらい生物せいぶつ法ほう」に基もとづき、アメリカザリガニとアカミミガメを「条件じょうけん付づけ特定とくてい外来がいらい生物せいぶつ」に指定していする政令せいれいが1日にちから施行しこうされました。

指定していによって、輸入ゆにゅうや販売はんばい、販売はんばい目的もくてきでの飼育しいく、それに購入こうにゅうができなくなるほか、多数たすうの人ひとに配くばることや飼かっていたものを川かわに捨すてるなど野外やがいへの放出ほうしゅつが禁止きんしされ、違反いはんした場合ばあいは最大さいだいで3年ねん以下いかの懲役ちょうえきまたは300万まん円えん以下いかの罰金ばっきんが科かされます。

一方いっぽうで、新あらたな購入こうにゅうはできませんが、現在げんざいペットとして飼育しいくしているものは引き続ひきつづき飼かうことができるほか、川かわや池いけで捕獲ほかくしたり少数しょうすうの人ひとに無償むしょうで譲り渡ゆずりわたしたりすることは可能かのうです。

環境省かんきょうしょうによりますと特とくにアカミミガメは寿命じゅみょうが40年ねん程度ていどと長ながいため、飼かい続つづけることが難むずかしいなどの相談そうだんが寄よせられているということで、環境省かんきょうしょうでは電話でんわ相談そうだんに応おうじています。電話でんわは0570-013ー110です。

規制きせいによって何なにが変かわるの？

子こどものころ、家いえでは池いけで取とったアカミミガメを飼かっていたし、小学校しょうがっこうの教室きょうしつでは川かわで釣つったアメリカザリガニをみんなで世話せわしていました。

そんな身近みぢかな存在そんざいのアメリカザリガニとアカミミガメ。

環境省かんきょうしょうによりますと、アメリカザリガニを飼かっているのはおよそ65万まん世帯せたい、アカミミガメはおよそ110万まん世帯せたいにものぼります。

しかし、固有こゆうの生態せいたい系けいを壊こわす原因げんいんにもなることから法律ほうりつにより規制きせいされることになりました。

規制きせいによって何なにが変かわるの？こんな場合ばあいはどうしたらいいの？環境省かんきょうしょうの担当たんとう者しゃに詳くわしく聞ききました。

“固有こゆうの生態せいたい系けいを脅おびやかす存在そんざいに”

そもそもなぜ、アメリカザリガニとアカミミガメは規制きせいされるのでしょうか。

アメリカザリガニは昭和しょうわ初期しょきに食用しょくようのウシガエルの餌えさとして、またアカミミガメは、1950年代ねんだいにペット用ようとして海外かいがいから輸入ゆにゅうされていました。ところが、繁殖はんしょく力りょくが非常ひじょうに強つよい上うえ、魚さかなや水中すいちゅうの昆虫こんちゅうの餌えさとなる水草みずくさを食たべたりかみ切きったりして、固有こゆうの生態せいたい系けいを脅おびやかす存在そんざいとなってしまったのです。

環境省かんきょうしょうによりますと、こちらの写真しゃしんは水草みずくさが豊ゆたかだった池いけにアメリカザリガニが繁殖はんしょくし、6年ねん後ごの同おなじ場所ばしょですが、水草みずくさが消滅しょうめつして水みずが茶色ちゃいろに濁にごってしまった様子ようすです。

この池いけでは生態せいたい系けいの変化へんかにより日本にっぽん固有こゆう種しゅの貴重きちょうな水生すいせい昆虫こんちゅう「シャープゲンゴロウモドキ」が姿すがたを消けしたということです。

また、アカミミガメもペットとして飼かわれていたものが捨すてられたり逃げ出にげだしたりして池いけなどで繁殖はんしょくし、在来ざいらいのカメと餌えさや居場所いばしょをめぐって競合きょうごうし、生態せいたい系けいに影響えいきょうを及およぼす事例じれいが報告ほうこくされています。

こうしたことから固有こゆうの生態せいたい系けいを守まもるため去年きょねん成立せいりつした「改正かいせい外来がいらい生物せいぶつ法ほう」に基もとづき、規制きせいすることになりました。

“野外やがいへの放出ほうしゅつが禁止きんしに”

では規制きせいによって、なにが変かわるのでしょうか。

2023年ねん6月つき1日にちからアメリカザリガニとアカミミガメは「条件じょうけん付づけ特定とくてい外来がいらい生物せいぶつ」に指定していされます。販売はんばいや購入こうにゅう、多おおくの人ひとに配くばる頒布はんぷ、販売はんばいや頒布はんぷを目的もくてきとした飼育しいく、そして、川かわや池いけに捨すてるといった野外やがいへの放出ほうしゅつが禁止きんしされます。

一方いっぽうで、引き続ひきつづきペットとして飼育しいくすることや、川かわや池いけで捕獲ほかくすること、それに、飼かっているものを少数しょうすうの人ひとに無償むしょうで譲り渡ゆずりわたすことは問題もんだいありません。

ただ、一度いちど捕獲ほかくするなどして家いえに持ち帰もちかえったら、再ふたたび川かわや池いけに戻もどすことはできません。特とくにアカミミガメの寿命じゅみょうは40年ねん程度ていどとされています。

最後さいごまで責任せきにんを持もって飼かえるのかを考かんがえてから、持ち帰もちかえることが必要ひつようです。

“ザリガニ釣づりはこれまでどおり”

川かわや池いけでザリガニ釣づりをすることはできますか。

捕獲ほかくはできるので、ザリガニ釣づりはこれまでどおりできます。釣つったその場ばで逃にがす「キャッチアンドリリース」もできます。

ただし、釣つった場所ばしょとは別べつの場所ばしょにリリースすることはその場所ばしょの生態せいたい系けいを壊こわすことにもつながりかねないのでしてはいけません。

アメリカザリガニを取とって、釣つりの餌えさにしてもいいですか。

アメリカザリガニを捕獲ほかくしたその場所ばしょで、釣つりの「生き餌いきえ」として使つかうことはできますが、捕獲ほかくした場所ばしょから移動いどうして別べつの場所ばしょで「生き餌いきえ」として利用りようすることはできません。釣り針つりばりから外はずれて逃にげてしまった場合ばあいに、その場所ばしょの生態せいたい系けいに影響えいきょうを与あたえるおそれがあるためです。

また、「生き餌いきえ」として利用りようするために一いち度ど家かに持ち帰もちかえったものを別べつの場所ばしょでの釣つりに利用りようすることは、「野外やがいへの放出ほうしゅつ」にあたり禁止きんしです。

学校がっこうで飼育しいくすることはできますか。

教育きょういく目的もくてきでの飼育しいくは許可きょかや届け出とどけでなどの必要ひつようはなく、できます。ただ、環境省かんきょうしょうが定さだめる飼かい方かたの基準きじゅんを満みたさなければなりません。

飼かい方かたの基準きじゅんでは水槽すいそうで飼かう場合ばあいはふた付つきの水槽すいそうにおもしを乗のせることや、池いけで飼かう場合ばあいは水面すいめんから陸りくまでの距離きょりを十分じゅうぶん確保かくほして、池いけから上あがれないようにするなど脱走だっそうを防止ぼうしする必要ひつようがあるとされています。

一方いっぽう、家庭かていで飼かう場合ばあいは、そうした飼かい方かたの基準きじゅんはありませんが、故意こいではないにしても水槽すいそうや池いけなどから逃げ出にげだしてしまった場合ばあいは「野外やがいへの放出ほうしゅつ」にあたるので、飼かい方かたの基準きじゅんを参考さんこうにして、適切てきせつな管理かんりで脱走だっそうの防止ぼうしに努つとめてください。

相談そうだんダイヤルを設置せっち

いま飼かっているアメリカザリガニやアカミミガメを飼育しいくできなくなったらどうしたらいいですか。

川かわや池いけに捨すてることは「野外やがいへの放出ほうしゅつ」にあたり禁止きんしされています。最後さいごまで責任せきにんを持もって飼かうことが必要ひつようですが、どうしても飼かえない場合ばあいは、代かわりに飼かってくれる人ひとを探さがし、無償むしょうで譲り渡ゆずりわたしてください。

代かわりに飼かってくれる人ひとを探さがしても見みつからない場合ばあいはどうしたらいいですか。

代かわりに飼かってくれる人ひとがどうしても見みつからない場合ばあいは、残念ざんねんですが殺や処分しょぶんもやむをえません。殺や処分しょぶんする場合ばあいは、適切てきせつに処分しょぶんできる業者ぎょうしゃに依頼いらいするなどして、薬殺やくさつや冷凍れいとうなど、できる限かぎり苦痛くつうを与あたえない適切てきせつな方法ほうほうで行おこなってください。

そうしなくていいように、飼かい始はじめる前まえによく考かんがえて飼かうことが大切たいせつです。環境省かんきょうしょうでは相談そうだんダイヤルを設もうけて飼育しいくなどの相談そうだんに応おうじています。

番号ばんごうは0570-013-110です。

外来がいらい種しゅ対策たいさくに取り組とりくんできた現場げんばは

今回こんかいの規制きせいを、アメリカザリガニなど外来がいらい種しゅ対策たいさくに取り組とりくんできた現場げんばはどう捉とらえているのでしょうか。訪おとずれたのは東京とうきょう・八王子はちおうじ市しにある長池ながいけ公園こうえんです。

江戸えど時代じだいからある農業のうぎょうため池ためいけを活用かつようした公園こうえんで、豊ゆたかな自然しぜんが残のこされた、市民しみんの憩いこいの場所ばしょになっています。

60年ねんほど前まえの調査ちょうさでは、都内とないでも有数ゆうすうの水草みずくさの産地さんちで、さまざまな生き物いきものも生息せいそくしていました。

しかし、20年ねん程ほど前まえに公園こうえんとして整備せいびされた時ときには、すでにアメリカザリガニやアカミミガメ、ブラックバスなど、外来がいらい種しゅが数多かずおおく確認かくにんされ、豊ゆたかに繁茂はんもしていた水草みずくさもほとんど無なくなっていました。

そこで2019年ねんに、池いけの水みずを抜ぬいて干ほす「かいぼり」を実施じっし。

外来がいらい種しゅの駆除くじょも行おこなったところ、東京とうきょうでは絶滅ぜつめつとされていた「じゅんさい」や「ミズユキノシタ」などの水草みずくさが、およそ60年ねんぶりに再さい発見はっけんされました。

その後そのごも貴重きちょうな水草みずくさを守まもるため、池いけにザリガニを駆除くじょするワナを設置せっちして駆除くじょを続つづけています。

これがそのワナです。

上うえの部分ぶぶんから自動じどうでおびき寄おびきよせるエサをカゴの中なかにまきます。

エサに誘さそわれたザリガニは、穴あなから入はいり下かのカゴに収納しゅうのうされる仕掛しかけです。

訪おとずれたこの日ひも、仕掛しかけて3日にちで20匹ひき余あまりのザリガニが入はいっていました。

長池ながいけ公園こうえんの管理かんりを担当たんとうしているパークレンジャーの片山かたやま敦あつしさんは「駆除くじょを始はじめてから、ヨシノボリやマツモムシなどの生き物いきものが増ふえてきたように感かんじる」と話はなします。

しかし、復活ふっかつした水草みずくさも、ザリガニが入り込はいりこめる場所ばしょではすぐに切きられて無なくなってしまうといいます。

水草みずくさの周まわりを囲かこうなどして保護ほごしていますが、外来がいらい種しゅ対策たいさくに終おわりはないと顔かおを曇くもらせています。

片山かたやま敦あつしさん

「駆除くじょした物ものは冷凍れいとうし殺や処分しょぶんしているが心苦こころぐるしい思おもいがある。だが外来がいらい種しゅを野のに放はなった人間にんげんの責任せきにんが一番いちばん大おおきい。外来がいらい種しゅによって数かずを減へらしてしまった生き物いきものがまた復活ふっかつするキッカケを作つくることにもなるので、今回こんかいの指定していで、多おおくの人ひとにいろいろな在来ざいらいの生き物いきものに対にたいして影響えいきょうを与あたえているんだと知しってもらい、飼かっている生き物いきものを外そとに捨すてないなどを意識いしきしてもらえるとうれしい」