いわき市の中心部から北におよそ3キロ離れた平下平窪地区では台風19号の影響で近くを流れる夏井川が氾濫し、4人が死亡しました。
いわき市によりますと、この地区は昭和61年と平成元年にも地区の一部が浸水する被害が出ていて、市が作成したハザードマップでは大雨が降った際、地区の広い範囲が2メートル以上浸水すると想定されていました。
国土交通省によりますと、今回の大雨で、下平窪地区のおよそ3キロ下流の観測点では、今月12日の午前中から増水を続け、夜遅くから翌13日未明にかけて氾濫危険水位を上回りました。
下平窪地区の住民によりますと、12日の夜には膝下ほどの高さまで浸水していたということで、その後も水位は上昇し、建物の1階部分がつかったため屋根の上に避難する人も相次いだということです。
いわき市によりますと、亡くなった4人はいずれも80代以上の高齢者で全員が溺死でした。
市は12日の午前10時には市内全域に避難準備の情報を出し高齢者など体の不自由な人たちに早めの避難を呼びかけていました。
しかし、この地区には、情報を一斉に伝える防災行政無線がありませんでした。市によりますと、防災行政無線は津波に備え沿岸部しか整備されていないということです。
市は、避難を呼びかける情報を出した段階で、登録していた人の携帯電話に届く防災メールや登録していなくても対象の地域にいる人に届くエリアメールで避難を呼びかけたとしています。
しかし、地区の住民の中には、メールの内容が自分たちの地区に該当するか分かりにくいといった声が聞かれたほか、携帯電話を持っていなかった高齢者もいました。
市が消防団に要請して直接避難するよう呼びかけたのはおよそ半日たって危険が差し迫り避難指示を出したあとでした。
いわき市は今回の情報の伝え方に課題があったとしたうえで今後、周知のしかたを検討することにしていて、いわゆる災害弱者をどう守るか改めて課題となっています。