このうち長柄町の河川敷の近くでは、88歳の男性が車で避難中に亡くなりましたが、この現場は、町が作成したハザードマップで浸水想定域に含まれていないことが町への取材で分かりました。
当時、現場の一帯は1メートル50センチほどの深さまで浸水していました。
長柄町によりますと、ハザードマップは平成21年度に作成してから改訂されていないということで、今回の大雨が当時の想定を超えたとして、ハザードマップの在り方や避難ルートを周知する方法などを見直すことにしています。
また、千葉市緑区誉田町の2人が死亡した土砂崩れでは、現場が土砂災害警戒区域に指定されておらず、当時、避難勧告なども出されていませんでした。
これについて、災害時の避難に詳しい東京大学の関谷直也准教授は「ハザードマップはリスクがある地域を示したもので、決してそれ以外の場所が安全だというわけではない。ハザードマップをもとに、ふだんからどのような場所にリスクがあるのか認識し、身を守るための行動を考えてほしい」と話しています。
長柄町 岩瀬さん長男「ふだんと違う道で」
千葉県長柄町で、ハザードマップの浸水想定域の区域外で亡くなった岩瀬長寿さん(88)の長男、広光さん(56)によりますと、岩瀬さんは町内の高台に住む次男の家に避難しようとしていたということです。
岩瀬さんは、ふだん次男の家に行く際に使っていた道が、今回は土砂崩れで通れなかったため違う道を通っていて道路の水に、はまったとみられるということです。
広光さんは「避難するとき弟と電話をしていて、ひざくらいまで水が来ていると話していたそうです。ふだんは別の道を使いますが、土砂崩れで通行止めになっていて、この道に来てしまった」と話していました。
また「最後に会ったのは亡くなる3日前でした。父に対して『100歳まで生きて表彰してもらいなよ』と話をしていました。突然のことで信じられません」と話していました。
長柄町 岩瀬さん次男「本当に悔しい」
岩瀬長寿さん(88)の次男、板倉正明さん(55)によりますと、岩瀬さんは、正明さんの家に避難する途中で車が浸水し亡くなったということです。
正明さんは、岩瀬さんから車が浸水しているという連絡を受け、助けに向かいましたが、正明さん自身も浸水に阻まれ、現場にたどりつくことができなかったということです。
正明さんは「父から、水が家まで迫っているという電話がきて、集合住宅の2階に逃げたほうがいいと伝えましたが、高台の私の家に避難したいということで、私の家に車で向かっていました。その途中『車が動かなくなって、座席まで水が入ってきた』と電話があったので、慌てて息子たちと助けに向かいました。しかし、助けに向かう途中で、私たちの車も道路の冠水で身動きがとれなくなりました。その後、車を降りて助けに行こうとしましたが、水位が上がったため身動きがとれず父のところまで、たどりつけませんでした。父からは『首のところまで水が来てしまった』という電話があり、それが最後のことばでした。助けられなくてごめんねという気持ちでいっぱいで、本当に悔しいです」と涙ながらに話していました。