“やむを得やむをえず施設しせつ内ない療養りょうようを” 通知つうちの波紋はもん

感染かんせんした入所にゅうしょ者しゃの中なかには症状しょうじょうが悪化あっかし入院にゅういんが必要ひつようになる人ひともいましたが、看護かんご師しと介護かいご士しだけで対応たいおうせざるをえませんでした。

入所にゅうしょ者しゃの89歳さいの男性だんせいは感染かんせん確認かくにんから4日にち後ごに容体ようだいが急変きゅうへん。

救急きゅうきゅう車しゃを呼よび、保健所ほけんじょにも入院にゅういんを依頼いらいしましたが、受け入うけいれ先さきは見みつかりませんでした。

当時とうじ対応たいおうした看護かんご師し

「かなり危険きけんな状態じょうたいになったので、救急きゅうきゅう車しゃを要請ようせいをしましたが、なかなか入院にゅういん先さきが決きまりませんでした。結局けっきょく2時間じかんがたっても見みつからず、そのまま施設しせつに戻もどってきたんです。当時とうじは職員しょくいんにも感染かんせんが広ひろがり、症状しょうじょうが治おさまったら隔離かくり期間きかん中ちゅうでも出勤しゅっきんしないと対応たいおうが追おいつかない状況じょうきょうでした」

その翌日よくじつ、男性だんせいは施設しせつ内ないで息いきを引き取ひきとりました。

施設しせつ長ちょうの蒋さんは、男性だんせいが亡なくなったことに無力むりょく感かんがあったといいます。

蒋和朗かずお施設しせつ長ちょう

「保健所ほけんじょに何なん度ども電話でんわをしたり、入所にゅうしょ者しゃに声こえをかけ続つづけることしかできませんでした。見守みまもることしかできないのは本当ほんとうにつらい。入院にゅういんが必要ひつような人ひとがちゃんと入院にゅういんできるような受け入うけいれ体制たいせいを整ととのえてほしいです」

大阪おおさか府ふは当時とうじ、入院にゅういんの対象たいしょうを原則げんそく65歳さい以上いじょうの高齢こうれい者しゃや中等ちゅうとう症しょうへの移行いこうが懸念けねんされる人ひとなどとしていました。

それが、このとき、施設しせつの入所にゅうしょ者しゃは入院にゅういんできない場合ばあいがあるという内容ないようを示しめしたのです。第だい6波は、府内ふないでは自宅じたく療養りょうよう者しゃなどが最大さいだいで13万まん5000人にんを超こえ、大阪おおさか府ふはその対応たいおうに迫せまられていました。

「地域ちいきで同時どうじに何なん十じゅうか所かしょもクラスターが起おきる中なかで、入院にゅういんを急いそぐべき人ひとかどうか、その都度つど考かんがえて対応たいおうする必要ひつようがありました。施設しせつの入所にゅうしょ者しゃは、限かぎられているとはいえ、医師いしの診療しんりょうや介護かいごなどを受うけられるところもあります。一方いっぽう、ひとり暮くらしの高齢こうれい者しゃが陽性ようせいになってしまい、誰だれも見守みまもってくれないというケースもありました。府内ふないで空あいているベッドの数かずは私わたしたちもリアルタイムで把握はあくできているので、入院にゅういんを申請しんせいをしても難むずかしい状況じょうきょうだということは私わたしたちにもわかります。さまざまな状況じょうきょうの患者かんじゃがいる中なかで、苦くるしい調整ちょうせいだったと思おもいます」

診療しんりょう所しょを併設へいせつし、医師いしの協力きょうりょくが得えやすい施設しせつであっても対応たいおうするのは困難こんなんでした。

守口もりぐち市しと別べつの施設しせつではことし2月末げつまつにクラスターが発生はっせい。利用りよう者しゃ29人にんが感染かんせんし、入院にゅういんできないまま2人にんが亡なくなりました。

「感染かんせん者しゃ数すうが多おおすぎるため、特とく養ようなどの施設しせつ利用りよう者しゃは入院にゅういんできない」

施設しせつ内ないの診療しんりょう所しょには週しゅうに3日にちは医師いしがいて、日にち中ちゅうは看護かんご師しもいました。

保健所ほけんじょからは、感染かんせんした入所にゅうしょ者しゃの酸素さんその数値すうちが低下ていかした場合ばあいは酸素さんそ投与とうよを行おこなうよう連絡れんらくがありました。

必要ひつような機器ききをレンタルでそろえましたが、限かぎられた人員じんいんで24時間じかん、酸素さんその管理かんりなどを行おこなうのは難むずかしかったといいます。

「医師いしがいるので一般いっぱんの診療しんりょうはある程度あるていどできますが、重症じゅうしょう者しゃへの対応たいおうなど、専門せんもん的てきな治療ちりょうを行おこなうのは、介護かいごスタッフが主体しゅたいの福祉ふくし施設しせつでは難むずかしいと思おもいます。酸素さんその機器ききを扱あつかったことのないスタッフもいて、医師いしや看護かんご師しが24時間じかんいる医療いりょう機関きかんとの違ちがいは大おおきいと思おもいます」

大阪おおさか府ふの調査ちょうさによると、ことし2月つき24日にちの時点じてんで、施設しせつ内ないで療養りょうようしていた人ひとは全体ぜんたいの9割わりを占しめていました。

第だい6波は、高齢こうれい者しゃ施設しせつの関連かんれんで亡なくなった人ひとは94人にんとなっています。（2022年ねん11月つき時点じてん）

「施設しせつにいるすべての感染かんせん者しゃに入院にゅういんをしてもらうことは規模きぼ的てきに困難こんなんです。本当ほんとうに必要ひつような人ひとに入院にゅういんしてもらう運用うんようを行おこなっていたので、その中なかで、府ふのスタンスをお示しめししたということです。オミクロン株かぶの流行りゅうこう下かでは基礎きそ疾患しっかんがある人ひとや生活せいかつ支援しえんが必要ひつような人ひと、とりわけ70歳さい以上いじょうの高齢こうれい者しゃの感染かんせんの割合わりあいが多おおくを占しめることになりました。患者かんじゃの状況じょうきょうから、新型しんがたコロナの受け入うけいれ病床びょうしょうに移うつして治療ちりょうするよりも、施設しせつ内ないで生活せいかつ支援しえんを受うけていただきながら必要ひつような往診おうしんによる治療ちりょうを受うけていただくのが適切てきせつであろうという考かんがえのもとです」

そのうえで、対応たいおうが追おいつかなかった施設しせつがあったことを重おもく受け止うけとめ、課題かだい解決かいけつをはかりたいとしています。

大阪おおさか府ふ健康けんこう医療いりょう部ぶ 藤井ふじい睦子むつこ部長ぶちょう

「施設しせつへの往診おうしん体制たいせいを強化きょうかするなど、できるかぎりの支援しえん策さくを打うってきたつもりですが、個別こべつの施設しせつの対応たいおうで、『大変たいへん苦くるしかった。十分じゅうぶんに対応たいおうできなかった』という声こえがあるのは聞きいております。施設しせつの職員しょくいんにも負担ふたんがかかったと思おもいますし、亡なくなられた方ほうや感染かんせんされた一人ひとりひとりの経過けいかや家族かぞくの思おもいは重おもく受け止うけとめないといけないと思おもいます。今後こんごは、府ふとしてさらに地道じみちに徹底てっていした支援しえんを継続けいぞくさせていただくと申し上もうしあげるしかありません。少すこし総論そうろん的てきになりますが、高齢こうれい化か社会しゃかいでは医療いりょうと介護かいごは極きわめて強つよく連携れんけいする必要ひつようが本来ほんらいある分野ぶんやだと思おもいます。しかしコロナで施設しせつと医療いりょうの連携れんけいが十分じゅうぶんでないということを再さい認識にんしきしたということです。これはコロナ対応たいおうだけではなく、今後こんごの高齢こうれい社会しゃかいに向むけた大変たいへん重要じゅうような課題かだいだと考かんがえます」