イギリスなどがパレスチナを国家こっか承認しょうにん 和平わへいへの機運きうん高たかまるか

ニューヨークでは今週こんしゅう、イスラエルとパレスチナの「2国家こっか共存きょうぞん」による和平わへいを推進すいしんする会議かいぎが開ひらかれる予定よていで、主要しゅよう国こくが国家こっか承認しょうにんに踏ふみ切きったことで、和平わへいへの機運きうんが高たかまるかどうかが注目ちゅうもくされます。

イギリスのスターマー首相しゅしょうは21日にじゅういちにち、ビデオ声明せいめいで、パレスチナを国家こっかとして承認しょうにんすると発表はっぴょうしました。

スターマー首相しゅしょうは、イスラム組織そしきハマスに対たいしてはテロ組織そしきだと非難ひなんする一方いっぽう、イスラエルはガザ地区ガザちくへの攻撃こうげきを停止ていしすべきだとして「2国家こっか共存きょうぞんの希望きぼうは薄うすれつつあるが、その光ひかりを消けしてはならない」と強調きょうちょうしました。

また、カナダとオーストラリア、そしてポルトガルもパレスチナを国家こっかとして承認しょうにんしました。

パレスチナの国家こっか承認しょうにんはおよそ150か国ひゃくごじゅっかこくが行おこなっていますが、G7＝主要しゅよう7か国ななかこくでは、イギリスとカナダが初はじめてです。

4か国かこくとしては、ガザ地区ガザちくでの停戦ていせんや期">長期ちょうき的てきな和平わへいに向むけた機運きうんを高たかめるとともに、イスラエルに圧力あつりょくをかけるねらいもあるとみられます。

ニューヨークの国連こくれん本部ほんぶでは22日にじゅうににち、フランスとサウジアラビアが主導しゅどうして、イスラエルとパレスチナとの「2国家こっか共存きょうぞん」による和平わへいを推進すいしんする会議かいぎが開ひらかれます。

イスラエルはパレスチナの国家こっか承認しょうにんに反発はんぱつしていますが、パレスチナ側がわによりますと、会議かいぎに合あわせて新あらたに承認しょうにんする国くにはイギリスなどを含ふくめておよそ10か国じゅっかこくにのぼる見通みとおしで和平わへいへの機運きうんが高たかまるかどうかが注目ちゅうもくされます。

アッバス議長ぎちょう「『2国家こっか解決かいけつ』実現じつげんに向むけた道みち切きり開ひらく」

イギリス、カナダ、オーストラリアがパレスチナを国家こっかとして承認しょうにんしたことについて、パレスチナ暫定ざんてい自治じち政府せいふのアッバス議長ぎちょうは21日にじゅういちにち、声明せいめいで「パレスチナの人々ひとびとの自決じけつ権けんや自由じゆう、独立どくりつを認みとめることは、パレスチナとイスラエルが国家こっかとして共存きょうぞんする『2国家こっか解決かいけつ』の実現じつげんに向むけた道みちを切きり開ひらく」として歓迎かんげいしました。

その一方いっぽうで、いま優先ゆうせんすることとして、ガザ地区ガザちくでの停戦ていせんや人道じんどう支援しえん物資ぶっしの搬入はんにゅう、イスラエル軍ぐんの完全かんぜんな撤退てったいのほか、ヨルダン川ヨルダンがわ西岸せいがんでのイスラエルによる入植にゅうしょく活動かつどうの終了しゅうりょうなどを挙あげました。

イスラエル首相しゅしょう「パレスチナ国家こっかが樹立じゅりつされることはない」

イギリス、カナダ、オーストラリアが、パレスチナを国家こっかとして承認しょうにんしたことについて、イスラエルのネタニヤフ首相しゅしょうは21日にじゅういちにち、ビデオ声明せいめいを発表はっぴょうし、「イスラム組織そしきハマスのテロ行為こういに大おおきな報酬ほうしゅうを与あたえている」と述のべて、強つよく反発はんぱつしました。

そして、「ヨルダン川ヨルダンがわ西岸せいがんにパレスチナ国家こっかが樹立じゅりつされることはない」と強調きょうちょうしたうえで、各国かっこくがパレスチナを国家こっか承認しょうにんする動うごきにどう対応たいおうするかは近ちかく明あきらかにするとしています。

国家こっか承認しょうにん アメリカの立場たちばは

アメリカのトランプ政権せいけんは、いまパレスチナを国家こっかとして承認しょうにんしても、ガザ地区ガザちくでの戦闘せんとうの終結しゅうけつにつながらないなどとして、否定ひてい的てきな立場たちばをとっています。

U.S. Position on State Recognition The Trump administration in the United States holds a negative stance, stating that even if Palestine is recognized as a state now, it would not lead to an end to the fighting in the Gaza Strip.

ルビオ国務こくむ長官ちょうかんは各国かっこくの国家こっか承認しょうにんの動うごきについて「交渉こうしょうを妨さまたげ、ハマスを勢いきおいづかせるもので、賢明けんめいな行動こうどうではない」と述のべ非難ひなんしています。

Secretary of State Rubio criticized the moves by various countries to grant state recognition, stating, It hinders negotiations, emboldens Hamas, and is not a wise course of action.

また、日本にっぽん政府せいふが承認しょうにんを見送みおくる方針ほうしんを示しめしたことについて、アメリカ国務省こくむしょうのヒューストン副ふく報道ほうどう官かんはNHKの取材しゅざいに対たいして「日本にっぽんの判断はんだんこそ私わたしたちが望のぞむものだ。

Regarding the Japanese governments decision to withhold approval, U.S. State Department Deputy Spokesperson Houston told NHK, Japans decision is exactly what we hope for.

現時点げんじてんで『2国家こっか解決かいけつ』を検討けんとうしないという判断はんだんを私わたしたちは支持しじする」と評価ひょうかしています。

We appreciate the decision not to consider a two-state solution at this time.

トランプ政権せいけんは、現げん段階だんかいでは、パレスチナを誰だれがどう統治とうちするのかが見みえないという認識にんしきを示しめしていてパレスチナ暫定ざんてい自治じち政府せいふに対たいしても不信ふしん感かんを抱だいています。

The Trump administration has expressed the view that, at this stage, it is unclear who will govern Palestine and how, and it is also distrustful of the Palestinian Interim Self-Government Authority.

今回こんかい、トランプ政権せいけんは、アッバス議長ぎちょうを含ふくむパレスチナ暫定ざんてい自治じち政府せいふの当局とうきょく者しゃが国連こくれん総会そうかいにあわせてアメリカに入国にゅうこくするためのビザを発給はっきゅうしませんでした。

This time, the Trump administration did not issue visas for officials of the Palestinian Interim Self-Government, including Chairman Abbas, to enter the United States for the United Nations General Assembly.

理由りゆうとして、パレスチナ暫定ざんてい自治じち政府せいふがICC＝国際こくさい刑事けいじ裁判所さいばんしょなどを通とおじて、イスラエルとの対立たいりつを国際こくさい問題もんだい化かしているほか、教科書きょうかしょなどで暴力ぼうりょくを扇動せんどうしたり、たたえたりして、テロを支援しえんしているなどと主張しゅちょうしています。

As reasons, they argue that the Palestinian Authority is internationalizing its conflict with Israel through organizations like the ICC International Criminal Court, and that it is supporting terrorism by inciting or praising violence in textbooks and other materials.

1期いっき目めのトランプ政権せいけんで中東ちゅうとう政策せいさくを担当たんとうしていた国務省こくむしょうの元もと高官こうかんで、外交がいこう問題もんだい評議ひょうぎ会かいのエリオット・エイブラムス上級じょうきゅう研究けんきゅう員いんは、「トランプ政権せいけんはパレスチナ暫定ざんてい自治じち政府せいふの統治とうち能力のうりょくを非常ひじょうに否定ひてい的てきに見みている。

Elliott Abrams, a former senior State Department official in charge of Middle East policy during the first Trump administration and a senior fellow at the Council on Foreign Relations, said, “The Trump administration views the Palestinian Authority’s governing capabilities very negatively.”

ガザ地区ガザちくを統治とうちする能力のうりょくはないと考かんがえている。

I dont think they have the ability to govern the Gaza Strip.

国家こっか承認しょうにんの動うごきを政治せいじ的てきなパフォーマンスにすぎないとみて、トランプ政権せいけんは重要じゅうよう視ししないだろう」と分析ぶんせきしています。

They analyze that the Trump administration will not consider the move for national recognition important, seeing it as nothing more than a political performance.

そして「イスラム組織そしきハマスを壊滅かいめつさせその復活ふっかつを防ふせぐための措置そちを講こうじる必要ひつようがある。

And it is necessary to take measures to destroy the Islamic organization Hamas and prevent its resurgence.

パレスチナ国家こっかの重要じゅうような基準きじゅんの1つは、テロ組織そしきを育はぐくまないことであり、それがトランプ大統領だいとうりょうにとって重要じゅうようなのだと思おもう」と述のべました。

One of the important criteria for a Palestinian state is not fostering terrorist organizations, and I think that is important to President Trump.

「2国家こっか共存きょうぞん」とは

「2国家こっか共存きょうぞん」とはイスラエルと将来しょうらい的てきなパレスチナ国家こっかの平和へいわ的てきな共存きょうぞんを目指めざす、中東ちゅうとう和平わへい交渉こうしょうの解決かいけつ策さくのことです。

「2国家こっか解決かいけつ」とも言いいます。

大おおきなきっかけとなったのは1993年せんきゅうひゃくきゅうじゅうさんねんにイスラエルとパレスチナが結むすんだオスロ合意ごういです。

「オスロ合意ごうい」ではパレスチナ側がわが暫定ざんてい的てきな自治じちを始はじめることなどで双方そうほうが合意ごういし、国際こくさい社会しゃかいや国連こくれんも2国家こっか共存きょうぞんを目指めざして、交渉こうしょうを後押あとおししてきました。

ところが、最終さいしゅう合意ごうい間近まぢかとされた2000年にせんねんのキャンプデービッド会議かいぎは聖地せいちエルサレムの扱あつかいなどをめぐり決裂けつれつ。

その後ご、パレスチナではイスラエルに対たいする武装ぶそう闘争とうそうを掲かかげるイスラム組織そしきハマスが台頭たいとうしました。

イスラエル側がわでもパレスチナに対たいして強硬きょうこうな立場たちばを取とる右派うは政権せいけんが続つづき、将来しょうらい的てきなパレスチナ国家こっかの領土りょうどとされるヨルダン川ヨルダンがわ西岸せいがんではユダヤ人じん入植にゅうしょく地ちが拡大かくだいしました。

こうしたなか、交渉こうしょうは2014年にせんじゅうよねんを最後さいごに途絶とだえています。

2023年にせんにじゅうさんねん10月じゅうがつに始はじまったイスラエル軍ぐんとイスラム組織そしきハマスとの戦闘せんとうに終おわりが見みえないなか、国際こくさい社会しゃかいでは、2国家こっか共存きょうぞんによる和平わへいの実現じつげんを呼よびかける動うごきが強つよまっています。

今月こんげつ12日じゅうににちには国連こくれん総会そうかいで2国家こっか共存きょうぞんによる和平わへいを支持しじする決議けつぎ案あんが日本にっぽんを含ふくむ142か国ひゃくよんじゅうにかこくの賛成さんせい多数たすうで採択さいたくされました。

一方いっぽうで、イスラエルやアメリカなど10か国じゅっかこくがこの決議けつぎ案あんに反対はんたいしました。

イスラエルのネタニヤフ首相しゅしょうは、パレスチナ国家こっかの樹立じゅりつについて「平和へいわ的てきに共存きょうぞんするものではなくイスラエルを破壊はかいするテロの拠点きょてんになる」などと否定ひてい的てきな考かんがえを強調きょうちょうしています。