ことしの4月ごろから働き始めている予定でしたが、入国制限で来日できない状態が続いています。
介護職を志望する人は慢性的に少なく、この施設ではこれまでも中国やスリランカなどから外国人材の受け入れを進めてきました。
3人の入国時期が見通せないことや、感染対策でほかの部署から人員を入れることもはばかられるため、今いる職員の残業が増えるなど負担感が増しているということです。
また、待機期間が長引くと採用を辞退されてしまうのではないかという不安もあり、施設の担当者がインドネシアにいる内定者と定期的にオンラインで面談を行っています。
この日の面談では内定者の男性が「こんなに長く待つことになるとは思っていませんでした。インドネシアでほかの仕事を探すのも難しく、金銭的にもぎりぎりになってきました」と話していました。
社会福祉法人かつみ会の伊藤重来常務理事は「このまま入国できなかったらどうしたらいいんだろうと不安です。外国人材に大きな期待をしているので、一刻も早く来てもらい一緒に働いていただきたいと強く願っています」と話していました。
外国人の人材紹介や研修事業などを行っている都内の企業では、中国からの留学生に介護の仕事を紹介する取り組みを行っています。 20日訪れた東京 港区の日本語学校では、専門学校や大学への進学を希望する生徒がほとんどでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店でのアルバイト収入が減るなど生活が苦しくなり就職を目指す学生も出てきているということです。 しかし、「特定技能」の介護職を目指そうという人は多くはないといいます。 業務負担が重い割に給与が低いといった介護現場の課題が影響しているということです。 このため、介護職に就いたとしても新型コロナの感染が収まれば、元々希望していた職種に戻ってしまうことも懸念されます。 そこで、この企業では新型コロナの後を見据えて将来の介護人材の育成にも力を入れています。 特定技能の制度が導入されたおととし10月からオンラインで海外に教材を配信し、特定技能の資格取得に必要な日本語や介護の知識を学んでもらっています。 7月までにベトナム、ミャンマー、インドネシア、フィリピンの4か国で合わせておよそ2000人が受講したということです。 この事業の統括責任者を務める小西悠太さんは「いろいろな国で人材不足が起きているので、日本の優位性が少しずつ下がり、日本で働きたいという人が目減りしている感覚があります。さらに、ほかの業種とも外国人材の取り合いになっているので、介護職のメリットや魅力を伝えていくことが必要だと思っています」と話していました。
介護をめぐる現状や問題に詳しい淑徳大学の結城康博教授は、「人口減少社会のなかで外国の方の協力を得ない限り必要な人員を確保するのが難しいということが明らかになった。このままでは、人材がいないために介護サービスを使いたくても使えない介護難民が続出することが予測される」と指摘しました。 その上で、「今後、入国できるようになったとしても特定技能制度を使って介護の仕事に就く外国人はあまり増えないのではないか。日本人に人気がない仕事は外国人にも選ばれないということを認識する必要がある。働いてもらうからには仕事だけでなく日本での生活を全面的にバックアップすることも必要で、コロナ後も見据えた日本社会の受け入れ体制が問われている」と話していました。
従事できる仕事は「介護」のほか「建設」や「宿泊」「農業」など14の業種があります。 外国人が介護現場で働く制度はほかにEPA=経済連携協定による入国などがあり、EPAによる入国では現地の大学や専門の学校の卒業が求められますが、「特定技能」の場合▼日常会話程度の日本語試験と▼介護に使う日本語試験、▼一定程度の介護ができるかどうかを確認する技能試験に合格すれば在留資格を得ることができます。 また、EPAによる入国などとは異なり▼家族の帯同は認められず、▼5年間働いたあとは原則として帰国することが想定されています。 ただし、「介護福祉士」の国家資格を取得すれば別の在留資格で働き続けることができます。
紹介する会社 国内にいる外国人材を担い手に
専門家「仕事だけでなく生活を全面的に支援を」
特定技能「介護」とは