北朝鮮では、10日が朝鮮労働党の創立75年に当たり、アメリカの研究グループは、衛星画像の分析から北朝鮮が軍事パレードの準備を進めているという見方を示していました。
北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは、10日午前9時からキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長や党をたたえる映画などを放送していますが、これまでのところ軍事パレードについて一切伝えていません。
一方、韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が10日未明、ピョンヤン中心部にあるキム・イルソン(金日成)広場で大規模な装備や人員を動員して、軍事パレードを実施したもようだと明らかにしました。
これについて、韓国の通信社、連合ニュースは、未明の軍事パレードは異例だとしたうえで、キム委員長がことし8月、党の創立記念日は特色あるものにするよう指示したことや、新型コロナウイルス対策が影響した可能性があるなどと伝えています。
北朝鮮は、過去の軍事パレードでアメリカ本土全域を攻撃できると主張するICBM=大陸間弾道ミサイル級のミサイルなどを登場させていて、韓国軍はアメリカ軍とともに分析を進めています。
北朝鮮「三重苦」で経済に大打撃
北朝鮮は、国連安全保障理事会の制裁措置に加えて、新型コロナウイルスの感染対策による国境封鎖、それに台風による水害で、経済が大きな打撃を受けていて、いわゆる「三重苦」に陥っていると言われています。
このうち感染対策については、中国やロシアとを結ぶ航空便や列車をおよそ8か月にわたって停止して人や物資の移動を厳しく制限していて、ことし1月から8月までの中国との貿易額は去年の同じ時期に比べておよそ70%減っています。
8月には、キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が出席して党の中央委員会総会を開き、「厳しい内外の情勢が続き、経済成長の目標には遠く及ばず、人民の生活は向上していない」としていて、制裁措置に加え、新型コロナウイルスの影響で経済が大きな打撃を受けていることを認めています。
また、ことし8月から先月にかけて3つの台風が北朝鮮に上陸し、各地で大きな被害が出たとしています。
これに対して北朝鮮指導部は、被災地で党の幹部を集めて政務局拡大会議を開いたほか、復旧のためにピョンヤンから1万2000人の派遣を指示するなど、異例の対応で強い危機感をうかがわせています。
米朝交渉 進展見られずもトランプ大統領との関係重視
米朝関係は3回の首脳会談を経たものの、非核化の具体的な措置を求めるトランプ政権に対し、体制の保証と制裁の解除を求める北朝鮮との間で溝は埋まらず、交渉に進展は見られていません。
去年10月には両国の実務者協議がスウェーデンで行われましたが、北朝鮮はアメリカの姿勢に変化がないとして、「協議は決裂した」と主張しました。
その後、去年の年末には、キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が「遠からず新たな戦略兵器を目撃することになる」と述べ、トランプ政権を強くけん制しました。
ことしに入ってから北朝鮮は、キム委員長の妹のキム・ヨジョン(金与正)氏の談話を通じて、トランプ政権への立場を表明してきました。
3月の談話では「両国の間で均衡が維持され、公平性が保障されてこそ、対話について考えることができる」として、対話の再開に慎重な姿勢を示しました。
また、7月には、首脳会談について、「アメリカの決定的な立場の変化がないかぎり無益だ」として、アメリカの姿勢の変化が必要だと強調しました。
一方で、両首脳は、ひんぱんに親書のやり取りをしていたことがアメリカの著名なジャーナリストが先月出版した書籍で明らかになっています。
今月も新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領にキム委員長が見舞いのメッセージを送り、協議に進展が見られない中でもトランプ大統領との関係を重視する北朝鮮の立場をうかがわせています。