コロナで空そらの旅たびは様変さまがわりへ 不安ふあん和やわらげるカギは“感染かんせん対策たいさく”

イギリスの航空こうくう情報じょうほう会社かいしゃ「ＯＡお-えいＧじ-」によりますと、世界せかいの航空こうくう会社かいしゃが運航うんこうする定期ていき便びんの座席ざせき数すうは、ことし3月つき後半こうはんから急激きゅうげきに減少げんしょうし、今月こんげつ初はじめには、前まえの年としの同おなじ時期じきと比くらべ、4分ぶんの1以下いかにまで落ち込おちこみました。

各国かっこくで経済けいざい活動かつどう再開さいかいの動うごきが相次あいついだことを受うけ、その後そのご少すこしずつ持ち直もちなおしていて、航空こうくう各社かくしゃによる運航うんこう再開さいかいの動うごきはさらに進すすむ見通みとおしです。

このうちドイツのルフトハンザ航空こうくうは来月らいげつ15日にち以降いこう、ヨーロッパを中心ちゅうしんとする50以上いじょうの路線ろせんで運航うんこうを再開さいかいするほか、中東ちゅうとうのカタール航空こうくうは来月らいげつ末まつまでに、さらにおよそ30の路線ろせんで再開さいかいする計画けいかくです。また香港ほんこんに拠点きょてんを置おくキャセイパシフィック航空こうくうは来月らいげつ21日にち以降いこう、大阪おおさかやサンフランシスコなどへの運航うんこうを再開さいかいするとしています。

しかし、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせんの終息しゅうそくがなお見通みとおせない中なか、利用りよう客きゃくを感染かんせん拡大かくだい前まえの水準すいじゅんに取り戻とりもどすのは容易よういではないとみられていて、航空こうくう各社かくしゃは客きゃくの不安ふあんをいかに和やわらげるかがカギになるとしています。

このため客きゃくどうしが密接みっせつになりがちな機内きないでの感染かんせんを防ふせぐため、搭乗とうじょう前まえの健康けんこうチェックや搭乗とうじょうする際さいのマスクの着用ちゃくようを求もとめたり、乗務じょうむ員いんに防護ぼうご服ふくを着用ちゃくようさせたりするなど、さまざまな対策たいさくを進すすめていて、空そらの旅たびは大おおきく様変さまがわりすることになりそうです。

航空こうくう政策せいさくに詳くわしい桜美林おうびりん大学だいがくの戸崎とざき肇はじめ教授きょうじゅは「利用りよう客きゃくは、これからはウイルス対策たいさくがきちんとしている航空こうくう会社かいしゃを選択せんたくすることになるだろう」と話はなし、航空こうくう会社かいしゃのブランド価値かちは感染かんせん対策たいさくの取り組とりくみによっても左右さゆうされるようになるという見方みかたを示しめしています。

機内きないの感染かんせん対策たいさく

どうすれば利用りよう客きゃくの不安ふあんを和やわらげることができるのか。乗客じょうきゃくどうしの距離きょりを十分じゅうぶんに確保かくほするのが難むずかしい機内きないでの感染かんせん対策たいさくが大おおきな課題かだいになります。

航空こうくう各社かくしゃでは乗客じょうきゃくにマスクの着用ちゃくようを義務ぎむづける動うごきが広ひろがっているほか、3列席れっせきの中央ちゅうおうの座席ざせきを利用りようしないようにしているところもあります。

こうした中なか、これまでとは違ちがう座席ざせき作づくりに乗り出のりだしたメーカーがあります。イタリアの「アビオインテリアズ」が開発かいはつ中ちゅうの座席ざせきは、飛沫しぶきが広ひろがるのを防ふせごうと、3列席れっせきのそれぞれのシートが透明とうめいなプラスチック製せいの板いたで仕切しきられています。

特徴とくちょうは、3列席れっせきの中央ちゅうおうの席せきだけ、左右さゆうに座すわる客きゃくとは反対はんたいの向むきに座すわるようになっていることです。どの席せきに座すわっても、前後ぜんご左右さゆうのほかの客きゃくからできるかぎり隔離かくりされた状態じょうたいに近ちかづける工夫くふうをしたということです。

このメーカーは現在げんざい、取り引とりひきがある航空こうくう会社かいしゃに試作しさく品ひんを送おくって意見いけんを求もとめていて、効果こうかや安全あんぜん性せいを検証けんしょうし商品しょうひん化かを目指めざすことにしています。

アビオインテリアズのパオロ・ドラゴＣＥＯ＝最高さいこう経営けいえい責任せきにん者しゃは「例たとえば日本にっぽんからイタリアまでのフライトは10時間じかん以上いじょうかかります。その間そのかん、トイレに行いったり食事しょくじや飲み物のみものをとったりするので、ずっとマスクをしたままでいることはできません。座席ざせきを仕切しきることで、感染かんせんリスクを減へらす手段しゅだんになるのではないでしょうか」と話はなしています。

客室きゃくしつ乗務じょうむ員いんを守まもるため

機内きないで接客せっきゃくサービスに当あたる客室きゃくしつ乗務じょうむ員いんを感染かんせんから守まもることも航空こうくう会社かいしゃにとって重要じゅうような課題かだいです。

フィリピン航空こうくうは、特別とくべつに注文ちゅうもんした防護ぼうご服ふくとフェイスシールドを客室きゃくしつ乗務じょうむ員いんに着用ちゃくようさせることを決きめました。防護ぼうご服ふくには白しろや水色みずいろなどの3種類しゅるいがあり、肩かたの辺あたりに、会社かいしゃのロゴに使つかわれている赤あか、青あおそれに黄色きいろの3色しょくを施ほどこしたデザインが特徴とくちょう的てきです。

この会社かいしゃはこれまで、国際線こくさいせん、国内線こくないせんともに定期ていき便びんの運航うんこうを休止きゅうししてきましたが、6月つき1日にちから順次じゅんじ再開さいかいする計画けいかくで、客室きゃくしつ乗務じょうむ員いんには防護ぼうご服ふくとフェイスシールドに加くわえ、マスクや手袋てぶくろの着用ちゃくようも徹底てっていするとしています。

フィリピン航空こうくうの広報こうほう担当たんとうのシエロ・ヴィラルナさんは「防護ぼうご服ふくを採用さいようしたことで、お客様おきゃくさまに当社とうしゃのフライトが安全あんぜんで快適かいてきだと思おもってもらえると思おもいます。安全あんぜん性せいは運航うんこうの要ようであり、利用りよう者しゃの信頼しんらいを得えるうえでセールスポイントになっています」と話はなしています。

空港くうこうの感染かんせん対策たいさくに新しん技術ぎじゅつ

空港くうこうでの感染かんせん対策たいさくに、新あたらしい技術ぎじゅつを活用かつようしようという動うごきも出でています。

ＵＡＥゆ-えいい-＝アラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽうのエティハド航空こうくうは、乗客じょうきゃくが画面がめんに手てを触ふれることなく搭乗とうじょう手続てつづきを行おこなえる、新あたらしい機械きかいの導入どうにゅうを目指めざしています。座席ざせきの変更へんこうを希望きぼうする場合ばあいは、客きゃくが頭あたまを動うごかして画面がめんのカーソルを移動いどうさせ、手続てつづきをとることができるとしています。

最大さいだいの特徴とくちょうは、航空こうくう会社かいしゃが客きゃくの体温たいおんや心拍しんぱく数すうに異常いじょうがないかを接触せっしょくせずに確認かくにんできることです。客きゃくに体調たいちょう不良ふりょうが見みつかれば、担当たんとうのスタッフがビデオ通話つうわで客きゃくから直接ちょくせつ話ばなしを聞きけるしくみになっています。

一方いっぽう、同おなじ中東ちゅうとうのカタールの国際こくさい空港くうこうでは、サーモグラフィーを搭載とうさいしたヘルメットを導入どうにゅうしました。担当たんとう者しゃが着用ちゃくようし、乗客じょうきゃくや空港くうこうで働はたらくスタッフに発熱はつねつのある人ひとがいないか、離はなれたところからでもチェックできるということです。

また、空港くうこう内ないでは自動じどう運転うんてんのロボットを巡回じゅんかいさせていて、人通ひとどおりの多おおいエリアなどを中心ちゅうしんに壁かべなどに紫外線しがいせんを当あてて消毒しょうどくを行おこなっています。

空港くうこう側がわは「新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいによってもたらされた変化へんかに対応たいおうしなければならない。最新さいしん技術ぎじゅつを活用かつようしたこれらの対策たいさくは、今後こんご求もとめられる高たかい安全あんぜん基準きじゅんを満みたすためのものだ」と説明せつめいしています。

“感染かんせん対策たいさく”が航空こうくう会社かいしゃのブランド価値かちに…

航空こうくう政策せいさくに詳くわしい桜美林おうびりん大学だいがくの戸崎とざき肇はじめ教授きょうじゅは「利用りよう客きゃくは、これからはウイルス対策たいさくがきちんとしている航空こうくう会社かいしゃを選択せんたくすることになるだろう。航空こうくう会社かいしゃのブランドには、安全あんぜん性せいやおもてなしだけでなく、ウイルス対策たいさくも加くわわった」と述のべ、航空こうくう会社かいしゃのブランド価値かちは、感染かんせん対策たいさくの取り組とりくみによっても左右さゆうされるようになるという見方みかたを示しめしています。

そのうえで、航空こうくう各社かくしゃの感染かんせん対策たいさくの現状げんじょうについて「国くにや地域ちいきによって、対策たいさくの基準きじゅんが異ことなる上うえ、航空こうくう各社かくしゃの経営けいえい体力たいりょくに応おうじて対策たいさくをとれる範囲はんいも異ことなってくる。各社かくしゃとも経験けいけんしたことのない事態じたいで、完全かんぜんな解決かいけつ策さくは見みえていない」と話はなしています。

旅客りょかく需要じゅよう戻もどるのに4年ねんか 厳きびしい経営けいえい続つづく

世界せかいの旅客りょかくの需要じゅようが大おおきく落ち込おちこんだことで、航空こうくう各社かくしゃは厳きびしい経営けいえいを強しいられています。

ドイツのルフトハンザ航空こうくうは今月こんげつ25日にち、政府せいふから日本にっぽん円えんで総額そうがく1兆ちょう円えん余あまりの公的こうてき支援しえんを受うけると発表はっぴょうしました。タイ国際こくさい航空こうくうや中南米ちゅうなんべい最大さいだいの、チリのラタム航空こうくうなど、大手おおての中なかでも経営けいえいに行き詰いきづまるところが出でてきています。

航空こうくう会社かいしゃの間までは各国かっこくで経済けいざい活動かつどう再開さいかいの動うごきが広ひろがっていることを受うけて、定期ていき便びんの運航うんこうを再開さいかいする動うごきが相次あいついでいますが、依然いぜんとして感染かんせん拡大かくだいが収おさまらない国くにや地域ちいきがあるうえ、感染かんせんをおさえこんで活動かつどう再開さいかいに踏み出ふみだしたところでも感染かんせんの第だい2波はへの警戒けいかいを緩ゆるめられない状況じょうきょうが続つづいており、旅客りょかく需要じゅようの早期そうき回復かいふくは見通みとおせない状況じょうきょうにあります。

こうしたことから、ＩＡＴＡあいえいてぃ-えい＝国際こくさい航空こうくう運送うんそう協会きょうかいは、国際線こくさいせんの旅客りょかく需要じゅようが去年きょねんの水準すいじゅんに戻もどるまでには4年ねんかかるという見通みとおしを示しめしていて、イギリスのブリティッシュ・エアウェイズが従業じゅうぎょう員いんを1万まん2000人にん減へらすと発表はっぴょうするなど、これまでの事業じぎょう規模きぼを維持いじするのは困難こんなんだとして、人員じんいんの削減さくげんに踏み切ふみきる動うごきも相次あいついでいます。