
すべての地域で断水が解消されるまでに12日かかりました。
そのひとり、静岡市清水区に住む吉田美優さん(31)。 夫と長男の春太郎くん(2)、それに、次男で当時生後2か月の虎臣くんと4人で暮らしています。
吉田さんが困ったのが、虎臣くんのお風呂でした。 暑さも残る時期、汗をかきやすい虎臣くんの肌は大丈夫なのか…。
飲料水などを電子レンジで温めてホットタオルにし、虎臣くんの体を拭いてその場をしのいでいました。 (吉田美優さん) 「ミルクとかお風呂とか洗濯とかすべてができず、初めてのことなので不安しかありませんでした。汗もすごくかくし、首回りとかおむつしているところが蒸れるので、子どもがかわいそうだなという思いでいっぱいでした」
清水区に隣接する葵区と駿河区の助産院で、もく浴ができるという内容が、インスタグラムやツイッターで拡散されていました。 断水から2日たった9月26日、わらをもすがる思いで助産院に電話したところ、すぐに対応してもらい、たまった洗濯物も一緒に持ってきてくださいと伝えられました。 その日のうちに助産院に向かって虎臣くんを風呂に入れてもらいました。3日ぶりの入浴でした。 お風呂上がりの虎臣くんは気持ちよさそうに助産院のリビングで眠っていました。
「大変ですね~」 シャワーを上がると、助産師の小長井祥子さんがこう言いながら紅茶とクッキーを持ってきてくれました。
何よりも小長井さんの気遣いがうれしかったといいます。
「小長井さんが包み込むような優しさで接してくれて、心がとても温かくなり、感謝の気持ちでいっぱいです。このあと、インスタグラムを見ていたら『今回被災者になった人は次の支援者になればいい』という言葉があって、とても心に刺さりました。次は自分が困っている人に手を差し伸べたいと思います」
静岡市助産師会の会長を務めています。
緊急の話し合いを行った結果、12か所の助産院で断水2日後の26日からもく浴のボランティアを行うことを決めたのです。
自分のフォロワーは200人程度。効果は限定的だと考えていました。
「シェアさせてください」 「ストーリーにて拡散させていただきます」 自分が投稿したインスタグラムにとどまらず、ツイッターなどにも情報が広がり、問い合わせの電話が頻繁にかかってくるようになりました。 12か所の助産院には10月2日までの1週間で、想定を大きく上回る104家族、290人が訪れました。
「どこまでニーズがあるかわからないけど、できることをしようということで発信してみたら、想像以上に困っている方が多くてびっくりしました。多くの人が被災地のことを思って情報を拡散してくれたことで、必要な親たちに情報が届くことになったので、本当に助かりました」
(聖路加国際大学大学院 片岡弥恵子教授) 「断水時に赤ちゃんや家族が抱えるニーズや思いをくみ取って即座に動いたという点で評価できる。おそらく今回の経験は助産師のあいだで全国に広がっていき、参考にされていくと思う。今回の教訓を今後の災害に生かしていき、日本どこでも助産師が活動できるように広げていく必要がある」
□オムツは7~10日分のストック必要 成長考え少し大きめのサイズも □おしりふきも備蓄を □ふだんに合わせて粉ミルクや液体ミルクの備蓄を 母乳の場合余裕あれば冷凍保存 □災害時の調乳手順も事前に確認 紙コップを使った授乳も □断水時はおしりや首など体の汚れたところを「部分洗浄」 泡せっけん、洗浄用ボトル、タオル、おむつ、防水シート、おしりふき、保湿剤が必要
この中では紙コップでの授乳方法や断水時の体の「部分洗浄」の方法も、動画で詳しく紹介されています。
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