シベリア抑留よくりゅう ロシアで発見はっけんの日本人にっぽんじん文書ぶんしょ 初はつ開示かいじ

シベリアに抑留よくりゅうされた日本人にっぽんじんに関にかんする資料しりょうは、モスクワにある国立こくりつ軍事ぐんじ古こ文書ぶんしょ館かんで保管ほかんされていて、日本にっぽん政府せいふは、収容しゅうよう所しょでの死亡しぼう記録きろくなどの資料しりょうについて1991年ねんから提供ていきょうを求もとめ、抑留よくりゅう中ちゅうに死亡しぼうした人ひとを特定とくていする調査ちょうさを続つづけています。

依然いぜんとして１いち万まん5000人にんとされる死亡しぼう者しゃが特定とくていされていないことから、先月せんげつも厚生こうせい労働ろうどう省しょうの調査ちょうさ団だんが、軍事ぐんじ古こ文書ぶんしょ館かんを訪おとずれ、新あらたに見みつかった170点てんほどの資料しりょうを調査ちょうさしました。

軍事ぐんじ古こ文書ぶんしょ館かんによりますと、今回こんかいの資料しりょうの中なかには抑留よくりゅうされていた日本人にっぽんじんが、収容しゅうよう所しょでの生活せいかつや心情しんじょうをつづった文章ぶんしょうや絵画かいがなどが含ふくまれていたということです。

こうした資料しりょうがＮＨＫえぬえいちけいにも開示かいじされ、このうち極東きょくとうのハバロフスクの収容しゅうよう所しょの日本人にっぽんじんたちが1947年ねんに編集へんしゅうした「捕虜ほりょ生活せいかつ記録きろく」には、みずから金網かなあみを張はって設営せつえいした収容しゅうよう所しょの中なかに入はいる屈辱くつじょく感かんや、数すう日にち前まえまで元気げんきだった仲間なかまが厳きびしい寒さむさと強制きょうせい労働ろうどうで死亡しぼうし、凍こおった遺体いたいを目撃もくげきした絶望ぜつぼう感かんなどが克明こくめいにつづられています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは、こうした記録きろくが開示かいじされたのは調査ちょうさが始はじまって以来いらい初はじめてで、「貴重きちょうだ」としていて、資料しりょうの写うつしを入手にゅうしゅしたうえで希望きぼうする遺族いぞくなどが見みつかれば提供ていきょうするとしています。

シベリア抑留よくりゅうとは

第だい２に次じ世界せかい大戦たいせんの終結しゅうけつ直後ちょくご、ソビエト軍ぐんは、旧きゅう満州まんしゅう、今いまの中国ちゅうごく東北とうほく部ぶや、かつての樺太からふと・サハリンなどで60万まん人にんとも言いわれる元もと日本にっぽん兵へいや民間みんかんの日本人にっぽんじんを拘束こうそくしました。

その多おおくはシベリアや中央アジアちゅうおうあじあなどソビエト各地かくちや、モンゴルに送おくられ、ロシア語ごで「ラーゲリ」と呼よばれる収容しゅうよう所しょに抑留よくりゅうされました。

抑留よくりゅうされた日本人にっぽんじんは、厳きびしい寒さむさの中なか、鉄道てつどうや建物たてものの建設けんせつや炭鉱たんこうの開拓かいたくなど、過酷かこくな労働ろうどうを強しいられ、飢うえや病気びょうきなどによりおよそ５ご万まん5000人にんが亡なくなったとされています。

開示かいじされた資料しりょうの内容ないようは

開示かいじされた資料しりょうのうち「在ざいソ旧きゅう日本にっぽん軍ぐん捕虜ほりょ生活せいかつ記録きろく」は、極東きょくとうハバロフスクの第だい十じゅう六ろく日本にっぽん軍ぐん捕虜ほりょ収容しゅうよう所しょの日本人にっぽんじんたちが、1947年ねんに編集へんしゅうしたものです。収容しゅうよう所しょでの生活せいかつの様子ようすや心情しんじょうなどについて、短みじかい文章ぶんしょうを寄よせる形かたちで収おさめられています。

「敗戦はいせん」というタイトルの文章ぶんしょうには「特攻隊とっこうたいとなり斬き込こみ隊たいとなって散ちって行いった戦友せんゆうは草葉くさばの蔭かげで泣ないているだろう戦友せんゆうよ どうすればよいのだ我わが等とうは？」と書かかれています。日本にっぽんが敗戦はいせん国こくとなってソビエトに抑留よくりゅうされた無念むねんの気持きもちを戦友せんゆうに訴うったえたものとみられます。

また、「生うまれてはじめて自分じぶんで金網かなあみを張はり、その中なかに入はいるのだから大おおいに屈辱くつじょくを感かんじた」と収容しゅうよう所しょ生活せいかつが始はじまるのを前まえにした心情しんじょうをつづったものや、「ああ、俺おれの命いのちもこれで終おわりか、父とうさん母かあさん、そして妹いもうと弟おとうとよ、元気げんきでいつまでもいつまでも仲なかよく暮くらして下ください。俺おれは名なもなき山やまの中なかで死しんでゆくでしょう。みんなさようなら」と、先さきの見みえない収容しゅうよう所しょでの生活せいかつを絶望ぜつぼう視しする気持きもちも記しるされています。

ある日本人にっぽんじんは、数すう日にち前まえまで元気げんきだった仲間なかまが厳きびしい寒さむさと強制きょうせい労働ろうどうが続つづく中なかで死亡しぼうし、凍こおった遺体いたいを見みた経験けいけんをつづるなど、つねに死しと隣り合となりあわせだった過酷かこくな環境かんきょうが克明こくめいに記しるされています。

さらに「餓鬼がき道どう」というタイトルのページには「一いち日にち一いち日にちの給養きゅうように耐たえられず寄よると触さわると食い物くいものの話はなし」と書かかれています。

そして、ただでさえ少すくない食事しょくじが炊事すいじ当番とうばんや分隊ぶんたい長ちょうなどに取とられて、結局けっきょくまわってくる量りょうはほんのわずかになってしまい、「最大さいだいの不快ふかいだ」と記しるされています。

一方いっぽう、ロシア人じんの見張みはりにたばこをもらったエピソードもつづられ、「捕虜ほりょにあんな親切しんせつな人ひともいる」とロシア人じんとの交流こうりゅうの一幕ひとまくも記録きろくされています。

別べつの資料しりょうにはトラックに乗のせられて作業さぎょう現場げんばに向むかう様子ようすや、土地とちの造成ぞうせいを行おこなう日本人にっぽんじんたちの姿すがたを描えがいた絵えも掲載けいさいされています。

収容しゅうよう所しょの生活せいかつを撮影さつえいした写真しゃしんを集あつめたアルバムでは、食事しょくじや医師いしによる診察しんさつを受うけている様子ようすのほか、ソビエトの指導しどう者しゃスターリンの肖像しょうぞう画がを描えがく日本人にっぽんじんの姿すがたもとらえられていて、当時とうじ、ソビエトが収容しゅうよう所しょの日本人にっぽんじんに対にたいしてスターリンへの忠誠ちゅうせいを誓ちかわせ、社会しゃかい主義しゅぎを礼賛らいさんさせたプロパガンダとみられる写真しゃしんも残のこされています。

ロシアの資料しりょう館かん 資料しりょうの公開こうかいを検討けんとう

ロシアの国立こくりつ軍事ぐんじ古こ文書ぶんしょ館かんは、ソビエト時代じだいのおよそ740万まん点てんに上のぼる資料しりょうを集あつめた、軍事ぐんじ関連かんれんではロシア最大さいだいの資料しりょう館かんです。

保管ほかんされている資料しりょうの中なかには、第だい２に次じ世界せかい大戦たいせん後ごにシベリアに抑留よくりゅうされた日本人にっぽんじんや、ドイツ人じんなど、外国がいこく人じんに関にかんする膨大ぼうだいな資料しりょうも含ふくまれています。

ロシアは、日本にっぽんと1991年ねんに結むすんだ協定きょうていに基もとづいて機密きみつ指定していが解除かいじょされたタイミングなどに合あわせて資料しりょうを開示かいじし、写うつしを提供ていきょうしてきました。

開示かいじされてきた資料しりょうは、収容しゅうよう所しょの名簿めいぼや死亡しぼう記録きろくなどの資料しりょうが多おおく、これまでに死亡しぼうしたとみられる人ひとのうち、およそ３さん万まん8000人にんの特定とくていにつながりました。

軍事ぐんじ古こ文書ぶんしょ館かんのコロタエフ副ふく館長かんちょうは、日本人にっぽんじんが記しるした文章ぶんしょうなどが含ふくまれた資料しりょうを初はじめて開示かいじした理由りゆうについて、死亡しぼう者しゃの特定とくていを進すすめたい日本にっぽん側がわの要望ようぼうに応こたえるためだとしたうえで、「日本にっぽんと資料しりょう研究けんきゅうの分野ぶんやで協力きょうりょくできると思おもう」と述のべました。

コロタエフ副ふく館長かんちょうは、こうした資料しりょうについて「展覧てんらん会かいや出版しゅっぱん、それに最新さいしんのデジタル技術でじたるぎじゅつでインターネットを通をつうじて公表こうひょうすることも可能かのうだ」として、何なんらかの形かたちで公開こうかいすることを検討けんとうしていると明あきらかにしました。