ソフトバンクの
元社員が
機密情報を
持ち出したとして
逮捕された
事件で、
情報を
受け取ったとみられる
在日ロシア
通商代表部の
代表代理は
警視庁からの
出頭要請に
応じず、10
日、
成田空港から
旅客機でモスクワに
向けて
出国しました。
警視庁は
代表代理が
元社員をそそのかし
情報を
受け取った
疑いが
あるとして、
今後、
書類送検する
方針です。
去年2月、
電話の
基地局など
通信設備に関する
機密情報を
不正に
持ち出したとして、ソフトバンクの
元統括部長、
荒木豊容疑者(48)が
先月、
不正競争防止法違反の
疑いで
警視庁に
逮捕されました。
これまでの調べで荒木元統括部長は在日ロシア通商代表部のアントン・カリニン代表代理(52)に情報を渡したと供述していますが、代表代理は外交官としての不逮捕特権があることから、警視庁は外務省を通じて出頭を要請していました。
こうした中、カリニン代表代理は午後1時すぎ、成田空港から旅客機でモスクワに向けて出国したということです。黒い帽子に黒い革のコートを着て、マスク姿で、関係者とみられる人物に囲まれて搭乗していました。
2人は飲食店での会食などを通じて関係を深めたとみられ、荒木元統括部長はカリニン代表代理の求めに応じて資料を提供するごとに「数万円を受け取っていた」と供述しているということです。
警視庁は、カリニン代表代理が荒木元統括部長をそそのかし、情報を受け取った疑いがあるとして、今後書類送検する方針です。
カリニン代表代理 平成29年に来日
在日ロシア通商代表部は貿易関連の業務を担うロシア大使館の組織で、アントン・カリニン代表代理(52)は代表に次ぐ立場の人物でした。
捜査関係者によりますと、「SVR」=対外情報庁に所属しているとみられ、3年前の平成29年に来日しました。
すでに帰国した元職員から荒木元統括部長の担当を引き継いだあとは飲食店などで接触を重ねて関係を深め、機密情報の提供をそそのかした疑いが持たれています。
代表代理は外交官としての不逮捕特権があることから、警視庁は先月25日、外務省を通じて出頭を要請しましたが、それに応じることなく出国しました。
荒木容疑者とは
通信大手ソフトバンクから機密情報を持ち出したとして逮捕された荒木豊容疑者(48)は当時、モバイルIT推進本部の無線プロセス統括部長の役職についていて、電話の基地局など通信設備を構築する業務プロセスを省力化する仕事を担当していたということです。
会社によりますと、今回はこの業務に関する作業手順書を不正に持ち出したということで、去年12月、懲戒解雇しました。
ロシアによる諜報事件の検挙 ソ連崩壊以降9件
警察当局によりますと、ロシアによる諜報事件の検挙は、ソ連が崩壊した平成3年以降9件あります。いずれもロシアの諜報機関である「GRU」=ロシア軍参謀本部情報総局や、「SVR」=対外情報庁に所属する人物が大使館や通商代表部の職員として活動する中で関与するケースがほとんどです。
平成12年には、海上自衛隊の幹部が内部資料を在日ロシア大使館の駐在武官に流していたとして自衛隊法違反の疑いで逮捕されました。駐在武官は「GRU」の所属で、複数回にわたって海上自衛隊の幹部に現金を渡していましたが、警視庁から出頭要請を受けた翌日に出国しました。
平成17年には、大手電機メーカー「東芝」の子会社の元社員が軍事転用が可能な半導体技術の機密情報を在日ロシア通商代表部の男に漏らし、現金100万円を受け取ったとして、背任の疑いで書類送検されました。通商代表部の男は「SVR」に所属する情報機関員とみられています。
捜査関係者によりますと、かつてはGRUが軍事的な情報を狙い、SVRが最先端の技術などの情報を狙う傾向にありましたが、最近では区分けがなくなってきているということです。