日本新闻: 英語民間試験下村氏「東大に活用するよう指導を」党内会議で

今月こんげつ導入どうにゅうが延期えんきされた英語えいごの民間みんかん試験しけんについて、東京とうきょう大学だいがくは去年きょねん４月しがつ、それまでの慎重しんちょうな姿勢しせいを転換てんかんし、活用かつようへとかじを切きりました。今回こんかい、ＮＨＫえぬえいちけいは、その直前ちょくぜんに開ひらかれた自民党じみんとうの会議かいぎの音声おんせいデータを入手にゅうしゅしました。そこでは大臣だいじん経験けいけん者しゃが、東京とうきょう大学だいがくに民間みんかん試験しけんを活用かつようするよう、文部もんぶ科学かがく省しょうに指導しどうを求もとめる発言はつげんなどをしていたことが分わかりました。これについて、東京とうきょう大学だいがくは外部がいぶからの影響えいきょうはなかったとしています。大学だいがく入学にゅうがく共通きょうつうテストの英語えいごの民間みんかん試験しけんについて、文部もんぶ科学かがく省しょうは今月こんげつ、導入どうにゅうの延期えんきを決きめましたが、その決定けってい過程かていなどが不透明ふとうめいだと批判ひはんされています。

ＮＨＫえぬえいちけいは、去年きょねん４月しがつ13日にちに開ひらかれた自民党じみんとうの教育きょういく再生さいせい実行じっこう本部ほんぶの音声おんせいデータを入手にゅうしゅしました。

この会合かいごうには、自民党じみんとうの国会こっかい議員ぎいんに加くわえて、文部もんぶ科学かがく省しょうの幹部かんぶや、大学だいがくの関係かんけい者しゃなども呼よばれ、英語えいごの民間みんかん試験しけんをテーマに意見いけんが交かわされました。

当時とうじ、文部もんぶ科学かがく省しょうは、民間みんかん試験しけんを大学だいがく入学にゅうがく共通きょうつうテストに導入どうにゅうすると公表こうひょうしていましたが、多おおくの大学だいがくはそれを活用かつようするか、態度たいどを表明ひょうめいせず、東京とうきょう大学だいがくが去年きょねん３月さんがつに、現時点げんじてんでは入試にゅうしに活用かつようすることは拙速せっそくだと会見かいけんで表明ひょうめいしたことが注目ちゅうもくを集あつめました。

会合かいごうでは、主査しゅさを務つとめた遠藤えんどう利明としあき元もとオリンピック・パラリンピック担当たんとう大臣だいじんが、東京とうきょう大学だいがくの五ご神かみ真ま学長がくちょうらが訪たずねてきて、会見かいけんの内容ないようを説明せつめいしたと報告ほうこくしています。

さらに、下村しもむら博文ひろぶみ元もと文部もんぶ科学かがく大臣だいじんが、東京とうきょう大学だいがくの名前なまえを挙あげて、「間違まちがったメッセージを国民こくみんや他た大学だいがくに対にたいして、与あたえている。文部もんぶ科学かがく省しょうは、よく東大とうだいに指導しどうしていただきたい」などと発言はつげんしていました。

東京とうきょう大学だいがくは会合かいごうの２に週間しゅうかん後ごに、民間みんかん試験しけんの活用かつようを検討けんとうすると方針ほうしんを転換てんかんしました。大学だいがく入試にゅうしの方法ほうほうや内容ないようは、憲法けんぽうが保障ほしょうする学問がくもんの自由じゆうに基もとづいて、大学だいがくの権限けんげんで、決きめることになっています。

取材しゅざいに対にたいして、東京とうきょう大学だいがくは、「文部もんぶ科学かがく省しょうや政治せいじ家かからの指導しどうや問い合といあわせはありません」と回答かいとうしました。

民間みんかん試験しけん導入どうにゅう判断はんだん揺ゆれた東大とうだい

文部もんぶ科学かがく省しょうは、2020年度ねんどにスタートする大学だいがく入学にゅうがく共通きょうつうテストの大おおきな柱はしらとして、2017年ねん７月しちがつに英語えいごの民間みんかん試験しけん導入どうにゅうを決きめました。しかし、大学だいがく側がわがどこまで活用かつようするかは未知数みちすうでした。

大学だいがくがどのような入試にゅうしを行おこなうかは国公立こっこうりつ、私立しりつを問とわずに、憲法けんぽうが保障ほしょうする学問がくもんの自由じゆうにより大学だいがくが決きめることになっているためです。

そんななか、全国ぜんこくの国立こくりつ大学だいがくで作つくる「国立こくりつ大学だいがく協会きょうかい」は、同おなじ年としの11月つき、この民間みんかん試験しけんを活用かつようすると公表こうひょうしました。

しかし、各かく大学だいがくは、民間みんかん試験しけんへの不安ふあんなどを理由りゆうにその活用かつよう方針ほうしんを明あきらかにせず、国立こくりつ大学だいがく、なかでも、東京とうきょう大学だいがくの判断はんだんに注目ちゅうもくが集あつまっていました。

こうしたなか、東京とうきょう大学だいがくは去年きょねん３月さんがつ、記者きしゃ会見かいけんで現時点げんじてんで入試にゅうしに用もちいるのは拙速せっそくだとして、民間みんかん試験しけんの活用かつように消極しょうきょく的てきな考かんがえを示しめしました。

しかし、翌月よくげつの４月しがつ27日にちになって、突如とつじょ、方針ほうしんを転換てんかんし、国立こくりつ大学だいがく協会きょうかいの指針ししんに沿そって、民間みんかん試験しけんの活用かつようを検討けんとうすると声明せいめいを出だしました。

そして、去年きょねん９月くがつ、最初さいしょの年としは、出願しゅつがん資格しかくとして活用かつようすることを公表こうひょうしていました。

東大とうだい元もと副ふく学長がくちょう「学問がくもんの自由じゆうへの政治せいじ介入かいにゅうには抵抗ていこう」

下村しもむら元もと文部もんぶ科学かがく大臣だいじんの発言はつげんについて、東京とうきょう大学だいがくの元もと副ふく学長がくちょうで、民間みんかん試験しけんを検討けんとうする作業さぎょう部会ぶかいで、座長ざちょうを務つとめた石井いしい洋二郎ようじろう名誉めいよ教授きょうじゅは、「非常ひじょうに残念ざんねんな発言はつげんだ。当時とうじは、多おおくの課題かだいが未み解決かいけつのまま民間みんかん試験しけんの活用かつように走り出はしりだすことに危惧きぐを覚おぼえていた。大学だいがくの方針ほうしん転換てんかんは誰だれもが疑問ぎもんを感かんじ、内部ないぶの関係かんけい者しゃもよくわからなかった。学問がくもんの自由じゆうに政治せいじが介入かいにゅうすることには抵抗ていこうがある」と指摘してきしてします。

一方いっぽうで、「大学だいがくにも、予算よさん的てきな懸念けねんから政府せいふと対立たいりつしないほうがいいという雰囲気ふんいきが浸透しんとうしてきている。大学だいがくは国民こくみんのものであり、国くににただ従したがっているだけでは矜持きんじを失うしなったと言いわれても仕方しかたない」と懸念けねんを示しめしています。

下村しもむら元もと文部もんぶ科学かがく相しょう「与党よとうとして当たり前あたりまえの話はなし」

自民党じみんとうの下村しもむら元もと文部もんぶ科学かがく大臣だいじんは、ＮＨＫえぬえいちけいの取材しゅざいに対にたいし、「『東京とうきょう大学だいがくは象徴しょうちょう的てきな大学だいがくなので、文部もんぶ科学かがく省しょうから導入どうにゅうしてもらえるよう働はたらきかけたらいいのではないか』というニュアンスのことを言いったと思おもう。いいものは使つかうべきだ。国立こくりつ大学だいがくの多おおくが『導入どうにゅうする』と言いっている中なかで、『導入どうにゅうしてもらえるよう働はたらきかけたらいいのではないか』と言いうのは、当たり前あたりまえの話はなしではないか」と述のべました。

その上うえで、「民間みんかん試験しけんの導入どうにゅうを進すすめるべきだという立場たちばにも関かかわらず、文部もんぶ科学かがく省しょうに任まかせて一切いっさい何なにも言いってはいけないという指摘してきがあるとすれば、逆ぎゃくに政治せいじ的てきな恣意しいを感かんじる。偏向へんこうだ。全すべて役人やくにんに任まかせて、役人やくにんの言いう通とおりにやればいいというのであれば、与党よとうの意味いみはなく、そもそも、議院ぎいん内閣ないかく制せいの意味いみもなくなる」と述のべました。

文部もんぶ科学かがく省しょう「個別こべつ会議かいぎ受うけ東大とうだい指導しどうした事実じじつない」

文部もんぶ科学かがく省しょうは「国立こくりつ大学だいがく協会きょうかいを通をつうじて、すべての国立こくりつ大学だいがくに英語えいご４よん技能ぎのうの評価ひょうか実施じっしを働はたらきかけてきたが、個別こべつの会議かいぎを受うけて東京とうきょう大学だいがくを呼び出よびだしたり、指導しどうしたりした事実じじつはない」としています。

高等こうとう教育きょういく学会がっかい元もと会長かいちょう「大学だいがくが萎縮いしゅくする発言はつげんだ」

日本にっぽん高等こうとう教育きょういく学会がっかいの元もと会長かいちょうで筑波つくば大学だいがくの金子かねこ元久もとひさ特命とくめい教授きょうじゅは「かなりあからさまに言いっていることに驚おどろいた。国立こくりつ大学だいがくは国くにの財政ざいせい負担ふたんの上うえに成り立なりたっており、国民こくみんが求もとめる声こえにも、耳みみを傾かたむけなければいけないが、国会こっかい議員ぎいんが具体ぐたい的てきに指示しじするのはおかしい。大学だいがくや教育きょういくの現場げんばでは政治せいじ家かが強圧きょうあつ的てきな発言はつげんすることはあってはならない。大学だいがくが萎縮いしゅくする発言はつげんだ」と話はなしています。

行政ぎょうせい学がくの専門せんもん家か「『不当ふとうな要求ようきゅう』で大学だいがく自治じちを阻害そがい」

行政ぎょうせい学がくが専門せんもんの東京とうきょう大学だいがく先端せんたん科学かがく技術ぎじゅつ研究けんきゅうセンターの牧原まきはら出いずる　教授きょうじゅは、「政治せいじ家かがこうした発言はつげんをすること自体じたいは法的ほうてきに問とわれるものではない。しかし結果けっか的てきに、民間みんかん試験しけんに不備ふびがあり延期えんきになって混乱こんらんしたことを考慮こうりょすると、今回こんかいの発言はつげんは、ある種たねの『不当ふとうな要求ようきゅう』と言いえる。東京とうきょう大学だいがくの決定けっていが他た大学だいがくに与あたえる影響えいきょうを踏ふまえると、大学だいがくを萎縮いしゅくさせる発言はつげんだ。大学だいがくの自治じちを阻害そがいするもので問題もんだいだと思おもう」と指摘してきしています。

その上うえで、「文部もんぶ科学かがく省しょうにも責任せきにんはあるが、役所やくしょができないことを政治せいじが推し進おしすすめてきたことは問題もんだいだ。下村しもむら元もと文部もんぶ科学かがく大臣だいじんは当初とうしょから導入どうにゅうに関与かんよした立場たちばであり、混乱こんらんを招まねいた結果けっか責任せきにんは重おもいと思おもう」と話はなしています。

教育きょういく政策せいさくの専門せんもん家か「一線いっせんを越こえた発言はつげんだ」

教育きょういく政策せいさくに詳くわしい名古屋なごや大学だいがく大学院だいがくいんの中嶋なかじま哲彦てつひこ教授きょうじゅは「与党よとうにせよ野党やとうにせよ、政治せいじ家かが教育きょういく政策せいさくを文科ぶんか省しょうに伝つたえること自体じたいは許ゆるされないものではない。しかし、入試にゅうしは大学だいがくにとって教育きょういくの根幹こんかんに関かかわる命いのちともいえるものだ。教育きょういく基本きほん法ほうは、行政ぎょうせい機関きかんや政府せいふが大学だいがくに介入かいにゅうする、不当ふとうな支配しはいを禁きんじる規定きていがある。今回こんかいは与党よとうの会議かいぎで強つよい影響えいきょう力りょくを持もつ文科ぶんか大臣だいじん経験けいけん者しゃが文科ぶんか省しょうの担当たんとう者しゃを集あつめて、事実じじつ上じょうの指示しじをしているわけで大学だいがくに対にたいする介入かいにゅうと受け取うけとれる一線いっせんを越こえた発言はつげんだ。政治せいじ家かは行政ぎょうせい機関きかんに対にたいして強つよい影響えいきょう力りょくを持もっていると自覚じかくした上うえでの行動こうどうが求もとめられるし、大学だいがく側がわも、国民こくみん、とりわけ受験じゅけん生せいに対にたいして大学だいがく自治じちの担い手にないてとして行動こうどうしなければならない」と指摘してきしています。